第24話祈りと祝福による花園

白金の蓮の花の紋章を掲げる非営利法人、通称「プラチナ・クラウン・ロータス」。

正式名称「真理統合学会」…仰々しい名前のこの団体は「現世での”現実的”な救済方法の探求」を求める世界規模の団体として認知されている。

そして組織の上層部にも熱烈な後援コミュニティがあることから支持層のネットワークは世界各地に広まっていると見て間違い無いだろう。

元は量子力学のパイオニアであった一人の研究者が「「人の願う力」がこの世界にどれほどの影響を及ぼせるのか」という実験の一環として作ったサークルから生まれたという説が一般的だ。

しかし実際には創立者である彼の熱狂的な持論を持ちうる事により”真実”に至ろうとするメンバーが彼の持論を教義化してコミュニティを肥大化させていったのは事実と認めざるを得ないところだ。

人々の理想と願望を取り込み続けて量子力学の範疇に収まらない影響力を持ったその「教義」は今もこの世の不都合を全て喰らいつくそうとしているかのごとく増殖し、その力を増大させ続ける。

そう、救済という言葉の意義さえ塗りつぶそうとする勢いで。


「…それで、茜さんが「観月会」で得た知識の残骸からサルベージした情報は以上なわけだけど、片山さんはこの事案をどう見ているの?」

「神奈でいいですよ万城目さん。しかしこれ関係の情報に触るのは大分危険なんです…認知しただけでその人の意識領域を侵食する代物で」

神奈は千里に対して解説を始めようとして言葉を止めた。この流れ、「学会」の教義についてかなり深く解説しなければならないな…いや高位の意識干渉系能力者である万城目さんになら大丈夫だろうけど、念のため骨子の詳しい解説と挙動についてから話した方がいいか?

「神奈ちゃん大丈夫?気分が優れないなら少しづつでもいいわ…貴女に倒れられたらこの件に踏み込める目算は皆無に等しくなる。その事をよく覚えていて…それがどういう事に繋がるかも含めてね。」

千里の言葉は勿論自分を気遣っての事だとわかっているが、それ以上にチーフエージェントとして現場の能力者達の命運を預けられている者としての重みも乗っている。額面通りの優しさは受け取ってはいけないところだ。

「ええ、それはわかっているつもりです。しかし私たちの情報取得そのものが彼らの「侵食」の手口なのです。それを踏まえた上でこれからの話を聞いてください…お願いします。」

神奈の神妙な面持ちに千里は最低限の首肯で応じる。

…意図が共有できたことを確認した神奈は意識武装を整え、未知とのファーストコンタクトを開始した。

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