第146話 黒の王宮 王国奪還・・3

「やる事がいっぱいだ リュース公 セルト 


この黒の王国を完全に取り戻し


黒の王宮をはじめ 城下街の壊われた建物を復旧させ  

奴隷として売られている黒の貴族の子供や妻達を助けだす・・


巨人族に連れて行かれた者達は 救い出せないが・・」


アーシュランは言う


「それに加えて 戴冠式をされて 正式に黒の王とならねばなりません王子」

リュース公 


金の髪が風に揺れる 

リュース公リジャイアヌス

白の国の王族、貴族の血を受け継いだ彼の美貌 

その顔には血飛沫がつき そっと手で拭う


「ああ・・そうだなリュース公」アーシュラン


「ところでヴァン伯爵の家族や縁者はどんな処分を・・?」リュース公


「ヴァン伯爵は 前の黒の王妃アリアン様の実家でもある・・。」


「自害したもの以外は 命だけは助けてやろう・・」


「ずいぶん 寛大な措置ですね よろしいのですか?」


「黒の王妃アリアン様の為だ」


「あんなに アリアン様には 酷い目にあわされたのに・・?」


「俺は あの人が好きだった・・本当に美しい人だった

 俺が王の庶子でなかったら


その事実を知らぬ僅かな間だけでは あの人はとても優しかった」


出会って わずか数時間だけの間の出来事 

淡い恋心となるのに時間はかからなかった


タルベリイがその事実を黒の王妃知らせるまでは・・

そのわずかな時間だけは 美しいあの人は 微笑んでくれた

とても優しかった


アーシュランが優しく類まれなる美貌の黒の王妃アリアンに

心奪われるのには 十分な時間だった



そしてテインタル王女


人族の血を引く俺を慕ってくれた 美貌の黒の王妃アリアンによく似たあの王女

美しく可愛らしい笑顔を見せた少女 俺の異母兄妹 妹


「アーシュラン兄様が好きよ」

そう言ったテインタル王女のあの笑顔を思い出す



そして 父親である 前の竜の王(ドラゴンロード)黒の王

片方だけの金色の瞳で 見つめながら 

別れ際に「・・お前は生き残る」と言った王


子供の頃の・・ あの頃は信じなかった 


きっと白の宗主か巨人族か誰かに 処刑されて殺されると思っていたが


哀れな最後を遂げた 白の国からの人質・・エリンシア姫


一度だけの束の間の出会い

穏やかで優し気な風情の美しい姫


エイルによく似た顔立ち 美しいオッドアイの瞳


羽琴の姫君‥

アーシュ、アーシュランは大きく息を吐く



「アーシュラン様! お父様! セルト!」

其処に別の場所で戦っていたアルテイア姫がやって来たのだった。


「では 先程の件は どうぞ内密に」

娘のアル、アルテイシア姫がやって来るのを見ながらリュース公が小声で言う。

「ああ わかってる」黒の王であるアーシュ、アーシュラン


「セルトも・・」振り返ってセルトを見ながら今度はアーシュ、アーシュランは言う

「はい承知しました」セルトは固い表情で答えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る