このみ ふるゑは

ひとごみに乗り遅れ途方に暮れているのは

いつも見ていた風景の中

手招きし 手を繋ごう

何処までも 切り離せない 遠くて近い タイドサイドのなかに

一度 経たはずの もう手が届かない

拙い衝動 誰よりも近しくしていたはずなのに

一人分増えただけ 影絵のなかに

取り返しの付かない残滓


闇よりも印象的なオブジェに纏わる

一度だけ許された慟哭

溜息の数だけ許されると思っているのか

釣瓶よりも早い黄昏の一刻に

鮮やかな緋の一色に目を奪われたまま

消えてしまえばよかった

たゆたいの街から逸れた木漏れ陽は

どんな日向よりも麻薬的で刹那の死だ


もたらされた 雨粒の 秤にかけられた

誰しもが絶望までは至れず失望のなか失意に埋もれ終わる

たった 一瞬の雷光のなか 空にまたたいたモノ

仮令え剣に変わり何時かその身に降りかかろうとも

人は人ゆえ ひとたるがゆえ

それに魅了され 已まない

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