第15話 埋め合わせ

「優梨さん、今度私と付き合って下さい!」

「えっ? 私?」

「駄目ですか?」

「良いけど……私で良いの?」

「はい! 良いから言ってるんですよ」


「分かった」

「じゃあ 10時頃、家に来て下さい!」

「10時? 分かった」

「お願いします」



そして、私は蓮歌ちゃんと出掛ける約束したんだけど……





出掛ける当日 ――――




「優梨さーん。ごめんなさい! どうしても外せない急用が入っちゃって行けなくなったんです」


「えっ?」


「これを持って行ってもらって良いですか?」

「えっ!? 一人で? ていうか……これ映画のチケット……」

「そこで待ち合わせしてる人がいるんです。だからお願いします」



私は一先ず蓮歌ちゃんから預かったメモを頼りに一旦、喫茶店に行く。




すると、そこには ――――




ドキッ

意外な人物に胸が大きく跳ねた。



「うわっ! ゆ、侑木君!?」

「希沙良っ!?」

「何かの間違いだよね? あんた、お嬢様と待ち合わせしてんでしょう? つー事で失礼します!」

「あっ! おいっ! 希沙良っ! 待てっ!」



私は足早に店を出る。




「おかしいなぁ~」




私は蓮歌ちゃんに連絡しようとした、その時。



「かーのじょ。一人?」

「えっ?」



ナンパされた。




「遊びに行かない?」

「無理です! 私、待ち合わせしてる人がいるので失礼します!」



私は場所を変える為、移動した。



「今、別れたばかりなのに、もういねーし!」



俺はすぐに後を追ったが既に、希沙良の姿はなかった。



「つーか……蓮歌もハッキリ言ってくれれば、こんな事にならずに済んだのに。ただでさえ俺達喧嘩してんのと変わんねーのに……何もなけりゃ良いけど……」




侑木君とは、あの日以来、話す事がなくなった。

ベビーシッターの日は家にいないようにしてるか、顔を合わせないようにしていたのか侑木君と会う事が一切なかったのだ。



久しぶりに会って、この状況だ。



そして、これは蓮歌ちゃんが私達の為に考えた計画だった。



「二人逢えるよね?お母さん……二人の恋の女神になって……お願い……」




そして、私はふと一つのチラシに目が止まる。




『バレン……タイン』



「そうか……今日は……2月14日……」



私は辺りを見渡す。




普段見慣れた街




だけど……


今日は……


特別な日……





――― そう ―――





女の子が


男の子に


愛の告白をする日





『あなたが・・・

好きです・・・』





と…………







どんなカップルにも


幸せは訪れているのでしょうか……?





それとも




まだ





訪れていませんか……?





片想いの女の子に


恋の女神(ヴィーナス)は


味方になってくれてるのでしょうか?





私も……


その一人に……


なれますか………?











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