第9話 元恋人

それから一ヶ月過ぎ ―――11月



兼君は、あきら君と、他の友達とも仲良くなり友達として出入りするようになった。




ある日の学校帰り ―――



「ねえ、君、お金持ちの子供なんだって?」



偶々、通りがかった私は偶然に見掛ける。

二女である愛理ちゃんの姿。



見た様子、余り良い感じがしない雰囲気に思えたんだけど、私は反対側にいてすぐに動ける状況ではなかった。




「それにやる事やってるんだって?」

「えっ? ち、違……今はもうしてないです!」

「またまたーー」

「お金持ちなのにお金有り余ってんでしょう?」

「じゃあさ、Hしたらうちらにお金くれるってやつ?」



首を左右に振る愛理ちゃん。



「違いますっ!」

「じゃあ、何?」

「ただで出来るの?」

「じゃあ尚更逃す訳にはいかないなぁ~」

「もう辞めたんです! だからごめんなさいっ! 失礼しますっ!」



愛理ちゃんは、引き止められる。



「ちょっと待ちなよ~」

「良いじゃん!」

「やだ離して下さい!」




二人を押し飛ばし逃げる愛理ちゃんの姿。


私も見掛けた場所の近くまで来たものの愛理ちゃんの姿はない。



「何もなきゃ良いけど……」



すると ―――



「逃げ足の早い女だな!」

「本当に、もうしてないの!せっかくの努力無駄にしないで!」



言い合っている会話が聞こえた。



「愛理ちゃんっ!」


「……優梨さんっ!」



私の所に駆け寄る愛理ちゃん。




「大丈夫?」

「はい」

「あんた誰? 彼女の何? 似ても似つかない姉妹?」


「あーそれともそっち系?」

「姉妹であんな事やこんな事してんの?」

「あんたらの脳みそは、そういう事ばっか?」


「何!?」

「あんたらの、その頭ん中の脳みそ1回解剖してもらった方が良いんじゃない?」


「この女ムカつく!」

「年上だからって言いたい放題言いやがって! 頭っ来た!」




シュッと拳を振り回す。



「おいおい! 暴力かよ!」



つい突っ込んでしまった。



「女の子に暴力って最低っ!」

「うるせーんだよっ!」

「ムカつく! 二人纏めて……」



拳が振り下ろされる。



私は愛理ちゃんを庇うように愛理ちゃんの前に立ち塞がり目を閉じた。




次の瞬間 ――――



ドカッ ドサッ

地面に派手に転ぶような音が聞こえた。




「ってーー」

「何しやがる!」


「………………」




私はゆっくりと目を開ける。

すると、私達の前に人影があり、男の子達の胸倉を掴んでいる人影があった。



ドキン

そこには見覚えのある人影。



「……侑木……君……」

「お兄ちゃん……」

「なぁ、お前らさー、女の子に傷でも作って責任取れんのー?」



「………………」



バッ

二人は悔しそうにする。



「お、おい行くぞ!」

「あ、ああ」



二人は去って行った。





「全く! 大丈夫か?二人共」

「うん」

「お前は?」

「……えっ? あっ、うん……だ、大丈夫」

「だろうな。怪我しても不死身そうだしな」


「何? それっ! 聞き捨てならない台詞!」

「つーか、お前無茶しすぎなんだよ!」

「えっ!?」

「マジで殴られたらどうすんだよ!」


「それは……でも、その時はその時! 私はどうなっても良いよ。愛理ちゃんが無事ならそれで良いから」


「お前なぁ~」


「私は侑木家のベビーシッターだから! 体張って守らなきゃって気付けば体が無意識に動いてて……」


「………………」




そこへ ―――



「愛理」

「……たくみ……」

「こっちにお前に似た奴が入って行くの見掛けたから」

「そうか……」


「大丈夫か?」

「えっ? あ、うん……何とか逃れ……」




たくみ君という男の子は、愛理を迷う事なく私達の前で抱き寄せた。



「大胆な子供(ガキ)共だな」と、侑木君。



グイッと私は侑木君の腕を掴み連れ出す。



「何だよ」

「二人は、元恋人同士。空気よめっつーの!事情あって別れたけど」

「へぇー……つーか家族じゃないお前が何故俺より詳しいんだよ!」

「ベビーシッターだから」


「いや……ベビーシッターは関係なくね?」

「そんな事ないと思うよ? あっ!そんな事より転入生の人、侑木君の許嫁なんだって?」


「あー……」


「やっぱり、あんたみたいな環境は現実にそういうの存在するんだね? まあ、彼女は美人だし。でも私の知ってるあんたから全然想像出来ないんだけど?」

「どういう意味だよ!」

「そのまんま」


「えっ?」

「口悪いし、喧嘩するし、お坊っちゃまのイメージがない。学校とプライベートの性格違うし」


「………………」


「お坊っちゃまって何かこう賢くて、言葉遣いも丁寧な感じがするけど、あんたの場合、猫被ってるよね」


「でも、どっちも俺だから」

「そうだろうけど」


私達は色々と話をしながら帰るのだった。




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