第7話 お嬢様

ある日の休日。


「ねえ、車止めて下さる?」

「はい」


一台の車が停止。



「お嬢様、どうされたのですか?」

「彼女は……どちら様なのかしら?」

「えっ?」

「今、劉真君のお屋敷から女の人が出て来られた方がいらしたんですの」


「お友達なのでは?」

「お友達? 私よりも遥かに劣る方でしたわ」

「劉真様は、一般の方が通う高校に通われていますから」


「劉真君には私が相応しいんですのよ! 一般の方が出入りされてるなんて、私(わたくし)小田切 麗香(おだぎり れいか)が許しませんっ!日を改めて劉真君に、お聞き致しますわ! 一刻も早く食い止めなきゃ……車を出して!」


「はい、かしこまりました」




屋敷から出て来た人。

それは紛れもなく私だった。




そして ――――



「今日から、このクラスに転入生してきた、小田切 麗香さんだ」


「小田切 麗香です。宜しくお願い致します」



「美人」

「ヤベー」



周囲の男子生徒は騒々しくなる。





その日の放課後。



「劉真君」


「麗香さん、あなたみたいな方が何故一般の高校に転入されて来られたんですか? 明らかに場違いだと思いますが?」


「あなたに変な虫がつかないよう手配してもらったんですのよ」


「変な虫?」


「ええ、この前、偶然にお見かけ致しましたの。

あなたのお屋敷から出て来られる女性の方」


「誰の事ですか?」


「同じクラスの希沙良 優梨さんという方ですわ。調べさせて貰いました」


「あー、アイツ…彼女なら家で雇われているベビーシッターですが?」


「ベビーシッター?」


「ええ。彼女の母親も雇っています。家の家庭は子供が多いので子供達も彼女を気に入っていて、とてもなついていますし」


「だからって……同級生をベビーシッターなね雇うなんて…ベビーシッターなら私(わたくし)が、ご用意致しますよ。今すぐ辞めさせて下さらない?」


「それは父親に直接、お嬢様の方から、お話してもらって宜しいですか? 俺に辞めさせて欲しいという権利はありませんので。失礼します」


「あっ! ちょっとっ! 劉真君っ!」





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