第6話 母親の異変と彼の家庭環境

「愛理って男なら誰でも良いんだって?」

「えっ?」

「マジ好きだったんだけど、そういう話聞くと疑うっていうか…かなり引く。俺、そういう女の子って大嫌いだから」


「待って!たくみ。でも私、たくみと付き合うようになって全然してないし、たくみ以外興味ないんだよ! 信じてっ!」


「…ごめん…悪いけど、信じられないや。じゃあな」


「たくみっ!待って! 本当だから!」



引き止めては後を追う彼女の姿。

しかし、彼に振りほどかれ彼は去って行く。



偶然に遭遇してしまった。

男女の修羅場。


しかも知ってる人というのは、私はどうすべきか……


彼女は侑木君の妹。愛理ちゃん。


過去に侑木君と言い合っている所を見た事ある。


ベビーシッターの日に、話した事はあるけど……



「たくみの事…本気だったのに……」



すると、愛理ちゃんが私に気付く。




「…優梨…さん…恥ずかしい所……」


「自業自得だよ。どんだけ愛してほしくても、信じてほしくても普段の行いじゃ悪い方向になるんだって事、良ーく分かったでしょう?」



「………………」



「噂って怖いから」

「…私…変わったら…信じてもらえるかな?」


「信じてもらう、もらわないは相手次第じゃないかな? でも分かってくれる人が現れるよ。こっちからフってやったんだって……変わった自分見せて後悔させてやれば?」


「……優梨…さん……」


「でも、もし変わったら、また、よりが戻る事もあるかもしれないよ。私には未来なんて分からないから」




愛理ちゃんは涙を流した。


私は愛理ちゃんを優しく抱きしめてあげた。



「まだ、13歳なんだから出会いは、いーーっぱいあると思うけど…」

「……うん……」





ある日の事。



「ママ、最近、色気づいてない?」

「えっ!? やだ、何言ってるの?」

「嘘!」

「優梨…」

「まさか……侑木君の父親の影響?」

「違うわよ」


「……恋するなとは言わないけど……あそこの家だけは辞めて! 私と同級生の子がいるんだよ!」


「優梨、大丈夫よ」

「大丈夫な訳ないじゃん! ママのそんな姿見て信じろって言うのが無理だよ!」

「優梨……」

「良い大人だから体の関係あってもおかしくないし! 再婚とかなったら私絶対嫌だからねっ!」


「優梨っ!」



私は部屋を飛び出した。





何となく母親の異変には気付いていた。



おしゃれしたり


前に比べて化粧の雰囲気がどことなく

変わってきている事も……


外出も増え始めている事も……


女性は恋をすればキレイになる



そして付き合い始めて

男女の関係になっていくにつれて


日に日に肌艶が変わってくる


女性の変わっていく姿は


一目瞭然な気がする





私は近くの公園に向いベンチに腰をおろしていた。



しばらくして ――――




「希沙良?」



ビクッ

名前を呼ばれ振り向く私。



「…侑木君…?」

「どうしたんだ? こんな時間に公園に人影って、ある意味こえーんだけど」

「…ごめん…ちょっと親と喧嘩しちゃって」

「喧嘩?」

「うん…」


「お前ん家、片親だよな?」

「あー、うん……私が8歳の時、離婚して。離婚後すぐに父親は事故死して……」


「………………」


「で? 喧嘩の原因は?」

「えっ?」

「親と喧嘩したんだろう?」

「……それは……いや…最近、母親色気付いてるから……」

「えっ? 別に良いんじゃね? 女に目覚めたって事だろう?」


「良くないっ!」

「どうして?」

「相手があんたの父親かもしれないっていうのに!?」


「何かの間違いだろう?」

「パートで働いているとはいえ、侑木君家に行くようになって雰囲気変わってきてんだよ!」


「…親父がねー」

「良い大人だし体の関係あってもおかしくないし」


「まあ、良いんじゃねーの? 仮にそうだとしたら別に二人の事だし」

「再婚とかになったら?」

「再婚ねぇ~…考え過ぎじゃね?つーか、付き合うの反対なわけ?」


「……それは……」



侑木君は歩みより、私の隣に腰をおろした。



「確かに、俺の母親がなくなってから親父は変わったよ…」


「えっ?」


「俺が中学に入る前、母親がなくなって、父親がお手伝いさんを雇ってから変わった。気付けばお手伝いさんは入れ替り立ち替わりが激しくて……」



「………………」



「弟や妹がいるのは、その事が原因なんだよ」



≪つまり…侑木君が不良よりだったのは、もしかしてそれが原因?≫



「侑木君…つまり…それって侑木君の父親……いや…まさかね……」




ポンと頭をされた。



ドキッ

突然の不意の行動に胸が大きく跳ねた。



「俺も最初は、そう思ってたけど……どうやら逆みたいで……」


「逆!?」


「俺の父親は、なくなった母親を今でも愛している」



ドキン

切なく私の胸の奥が跳ねた。



「その事を知ったのは最近の事で。俺、今まで父親と向き合ってなかったから……体の関係をもつのは寂しいからじゃねぇかなって……父親は、むやみに手は出さない事を知ったから」


「………………」


「じゃあ……弟や妹がいるのは……」


「相手の一方的な想いからであって体の関係に至っていてるだけ。相手には負担かけさせない様に、子供は俺の父親が面倒みるって事で手を引いて貰う様にしてるんだと思う。これ以上この環境、壊したくないと思うけど? 」


「………………」


「再婚は一切考えていないと思う。お前の母親が仮に俺の父親とデキてるなら恋人同士で体の関係あってという、ただそれだけの事じゃねーかな?」


「………………」


「元々、お手伝いさんを雇ってたけど、ベビーシッターを雇う様にしたって事?」


「そういう事。お前の母親も、それを知った上で父親に恋して女性に目覚めたんじゃねーの?」


「………………」


「長い目で見てやれば?」




そこへ、侑木君の携帯が鳴り響く。



「もしも~し。ちょっと野暮用で、近くの公園に寄り道してた。あー分かった。もう帰る」



携帯を切る侑木君。



「じゃあ、俺帰るから、早く帰りな!」

「……うん……」


侑木君は帰って行った。





恋をするとかしないとか


人は沢山の出会いを求めてる




――― でも ―――



恋をしなくても生きていける




――― だけど ―――




時々人は人を求める


淋しかったり


誰かが必要で


傍にいて欲しい時がある



















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る