第5話 休日のベビーシッター

母親のベビーシッターは、1週間に2日。


しかし、一人辞めてしまい1週間に4日に増えた。


私の父親はおらず母親一人で私を育ててくれているのだ。


昼はパート働きをしている母親には負担が大きい。


取り合えず週一の休みとして、土日は出来る限りパートに出る事を控えようと職場先に相談をしたみたいだけど ―――




「優梨、あなた子供達にとても良くしてくれたみたいで、今日、行ったら優梨お姉ちゃんは? って弘太君が聞いてきてね」



「弘太君が? 嬉しい♪」


「勿論、他の子供達もあなたの事とても気に入った様子だったわよ」


「そうなんだ! 凄いマジで嬉しいんだけど」



私は母親から子供達の感想を聞いた。





ある日の事。



「蓮歌、待てよっ!」

「離してよっ! 可愛いかったからって実は遊びだったなんて、ふざけないでっ!」



走り去る彼女の姿。




それから1ヶ月が過ぎ ――― 6月




「あの! 俺とお付き合いして下さい!」

「えっ?」



突然の告白。



「ゆっくりで良いので……」

「あ、あの……でも私……そんな」

「付き合って駄目なら別れを告げて貰っていいから」



私は取り合えず付き合ってみることにしてみた。





ある日の学校帰り ―――



「希沙良!」

「うわっ! ビックリした! な、何?」



侑木家の前を通り掛かったその時だった。


突然、声を掛けられ私の前に現れた侑木君の姿。



「ちょっとお願いがあるんだけど」

「お願い? 私に? 何?」

「休日、お前に来て欲しいんだ」

「えっ? 何処に?」

「俺ん所」


「えっ!?」


「お前の事、弟や妹達が気に入ってて、今度いつ来るの? って…しつこく聞いてくるから。母親から聞いてない?」


「うん。まだ何も。母親パート働きしてるし、ここ最近、顔合わせる事なくて」


「そうか。とにかく良かったらで良いから」


「それは良いけど……でも……私の事バレたら誤解されるかもしれないけど良いわけ?」


「どんな誤解だよ」


「いや、付き合ってるとか……元々、同じ中学だったし……変な噂とか……」


「言わせたい奴は言わせておけば? 俺は、ただアイツらが笑顔でいられるなら、それで良いんだ」




ドキン



≪へぇー……案外、弟、妹思いなんだ……≫



「頼む!」



両手を合わせて頼む侑木君の姿。



≪コイツの違う一面…ってやつだ……≫



「そうか。分かった。母親に聞いてみる」

「ああ、頼む!」




その日の夜。



「あ、そうそう、言わなきゃって思ってたんだけど、お願い出来る?」

「うん。分かった。じゃあ OK の返事してもらって良いから」




そして、私は休日限定のベビーシッターとして行く事になったんだけど ―――



ある日の事。



「優梨ちゃん。ごめん…他に好きな子が出来たんだ」


「そうか…分かった。ごめんね! ズルズルで」

「いや、俺こそごめん! 自分から告白しといて本当、悪い!」

「ううん」



私達は別れた。



ある日の学校帰りの事だった。




「ねえ、彼女いくつ?」

「えっ? 14です」

「じゃあ、多少の事は経験済みでしょう?」

「えっ!? いいえ、私は……」

「何言ってんの? 隠さない、隠さない。ちょっと来なよ!」


「いいえっ! 私、困……」

「良いじゃん!」



私は、その瞬間を偶然に見掛け歩み寄る。



グイッと私は彼女から男の人を離すように押し飛ばした。



ドサッと地面に転ぶ男の人。



「ってーー! 何すんだよ! 暴力女っ!」




グイッと相手の胸倉を掴む私。



「暴力女で悪かったなっ! このスケベ野郎っ! 女のケツばっかり追ってんじゃねぇっつーの!」


「うるせーな! 馬鹿女っ!」


「えー、馬鹿ですよ! 女のケツ追ってる暇あるならさー、その脳みそ勉強に使ったらどうなわけ?大体、馬鹿って言う奴が馬鹿なんだから、あんたらは馬鹿男って事だよ!」



男の人は去って行った。




「あの、すみません。ありがとうございます……2回目ですよね」

「えっ? あっ! そうだったんだ!」

「助かりました。本当にありがとうございます」



頭を下げる女の子。



「あー、良いの、良いの」

「あの……」

「ん? 何?」

「お兄ちゃんと同じ学校の方ですよね」

「えっ!? お兄ちゃん?」


「はい。侑木…劉真…」

「侑木ぃっ!? ええっ!? もしかしてお金持ちのボンボン野郎の妹ぉっ!? あっ…ゴメン」



クスクス笑う女の子。



「いいえ、良いんですよ。本当の事ですから。私、その兄の妹の蓮歌です」


「蓮歌ちゃん?」


「はい。優梨さんの事は下の弟や妹でお世話になってるし、私も優梨さんの事好きだし、お兄ちゃんと良く言い合っている所を見てると面白くて。だから大体の性格を知ってるつもりです」


と、微笑みながら蓮歌ちゃんは言った。



「恥ずかしい…ゴメンね! 口が悪くて」



私の言葉にクスクス笑う蓮歌ちゃん。



「いいえ。本音で接してくれた方が嬉しいです」

「えっ?」


「私、お兄ちゃんしかいないから、お姉さんが出来たみたいで凄く嬉しくて」


「そうなんだね。私はひとりっ子だから沢山の子供がいる侑木君家が羨ましいし凄く楽しくて、元々、子供が大好きだから♪」


「そうなんですね。また今度いらっしゃるんですよね?」

「うん、行くよ」

「弟や妹がいつも言ってるんですよ。お姉ちゃんが来る日に早くならないかなぁ~って」


「えっ? そうなんだ!嬉しいんだけど」

「待ち遠しいみたいですよ。それじゃ、私、塾があるので失礼します」

「うん、じゃあまたね」



私は軽く手を振ると笑顔で蓮歌ちゃんも手を振って軽く会釈して行った。




















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る