四季(前展)
フィンディル
四季(前展)
色めき始まり解け水流れ、土背負う虫が伸びをする、芽を出し葉を付け頬を染め、
ある風は片時まつげを見せ、ある風は薄く紅を差す、膨らみ萎みと膨らみ、綻び三
仰向けば空、陽だまりの蜜を垂らす、浸る草花香り立つ、黄と桃綯い交ぜ緑の雫、
分、めくれ七分、爆ぜて桜、木肌にほのかの襲、繚乱と舞いひらひら、微睡む猫、
葉と和す花の色の妙、桜雲が晴れ、遠く雲、差す日、空背に翔る羽の衣、しとりを
ぬかるみに筆先幾つ、髪挿しを外した青空、緑の艶気、街を縫う鳥の風、そよぐ草
匂わす積雲の帳、碧と灰の点滅、窓から覗く壺中の街、ぽつつぽつつ無音、天は狭
原が雨音を模す、草緑が二つ濃くなる、柔い雨粒空から、路に咲く無数の冠、子花
まり地は屈む、絡み付く濁り、壺口、円い太陽、輪を持つ太陽、降りそそぐ灯り、
の群れ、下草が露と頭を垂らせば、虹と太陽の雨後、開ける大空、雲をめくり晴
折り重なる風の蒼が、一吹きごとに赤くなる、丸みも帯びる、八十葉が頬笑み、ち
れへ、天より連なる光と夜、かかんと貫く昼と光、若い日照りに、日は畏れられる
らりちらりと日が瞬き、影は水面の姿、流水が手を伸ばし、行雲が泳ぐ、日差しに
ようになり、道よりたゆたう蕩けたあぶく、地を空を這う脈達が向き並ぶ、熟した
つやが出る頃には、日暮しが知らせを響かせ、空気も引き連れ日が落ちる、東から
太陽、赤が朱に移り、数える度に顔を変える夕映えの中でも、西日に皺が寄るよう
藍が滲み紫に混ざる、月を零し、染み出す光が隈を引く、淡く果てなく筆を重ね
になる、赤を朱に染め、黄に茶に紅に燃やす、次へ次へと山吹きぬけると、木々
る、薄雲も着ない夜の額、ひらひら落ち葉、ただ一度、氷雨、木枯らし、降りる
の刺繍は遥かへ続く、ひらひら舞う葉、一つが千なる、照り葉畳みは足音鳴らし、
霜、焦げた木の葉が土に呑まれる、硝子の膜が張り、そこここより衣擦れが聞こえ
風向き教えて渦見せる、粒の細かい風が吹き出すと、攫われた安寧、異邦の嵐、彷
るようになる、日は愛されるようになる、空から屑々、見える深々、葉も無い枝に
徨う温度に伸びた夢、眠りをぐずる森、時を置き去る、しんと夜、しんと朝、白篭
憩う雪、川面に触れて果てる雪、街並みは透き通り、埃が金属叩く音、共鳴の音、
りの火、それぞれの天蓋の下で待つ目覚め、痺れた水、凍った土、搦める視えな
日の下で光り青空の下で解れ、濡れた土、萎み膨らみと萎み、
い紐、肌の白い風が、髪を指で巻いた、少しばかりの色づき、
四季(前展) フィンディル @phindill
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