一見すると地味だけど職人芸。感想はそれに尽きます。
私も朝読書向けのホラーというのはどれ程の塩梅が適当なのか、頭を悩ませたものです。
ホラーなのだから、怖い方が良いに決まっています。ですが、学校で生徒が早朝に読むものである以上はグロテスクで過剰に陰鬱な描写を入れるのはあまり望ましくないでしょう。
この御方はその塩加減を完全に見切っている印象です。
適度に不気味。適度に残酷。
ちゃんと振り返って怪異の容姿を伝えてくれる優しさ。
科学的捜査はあやかしに有効なのか、犠牲者が出たのに大人たちは何もしなかったのか。そういった細かい点にも配慮が行き届いており、矛盾や疑問が出ないようキッチリ作り込んであります。
目新しいものや、驚愕のラストはこの作品にありません。
されどユーモラスな口調で紡がれるこの物語は「怪談」の在り様というものを弁えており、本質を外していないと感じました。演出の上手さと雰囲気で読ませるタイプのものです。まさに模範となるべき作品でしょう。