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「ウォン、停止を命令されたら大人しく車を停めろ、降車を命じられたらこいつにも大人しく従え、後は・・・・・・」
そして俺はその後の段取りを手早く説明してやる。すべて聞き終えた運転手はその役者みたいな綺麗な顔に意地悪気な微笑みを浮かべて。
「承知しました少佐。久々にお手並み拝見させていただきます」
この男、俺が第一特別挺身群に居た頃の副官で今は俺の上司トガベ・ノ・セツラ少将閣下の私兵『零大隊』の隊長をやってるリ・ウォン少佐。
知らねぇ内に出世して、今じゃ俺と同じ数の星をぶら下げてやがる。俺と同じ世渡りの下手な野郎と思ってたが見当違いしてた様だ。
無論、コイツの角もニセモノ。
白い制服姿の警察官が道の真ん中に飛び出してきて、旗を振って車を停める。
背後に七人ばかしの小銃を構えた部下を従え、拳銃を片手に上官らしき男が運転席側の窓を叩く。
「降オリロ!」
大人しくご命令に従い四人全員が車から降りる。
両手を頭の後ろに組み一列に並ぶように命じられその様にしてやる。
今度は地面に膝を付けと仰せだ。偉そうにぬかしやがって、日ごろ女房辺りからガミガミ言われてんだろうな、俺たち相手に鬱憤晴らしか?
はいはい承知しましたよ、とばかりにゆっくりと膝を折り曲げる。ウォンもシスルも俺に習い緩慢な動作で警官の命令に従う。
片膝着いた頃、教授が「肩が凝りましたな」とばかりに首を一振り二振り、すると頭に着けた偽物の鹿角が一緒に地面に落ちた。
警官達が一斉に教授に視線を向ける。
待ってました!
俺は背中から
シスルはチョッキの裾を翻し棒手裏剣を腿や膝に叩き込む。
ウォンは素早く警官に駆け寄ると腰から『得物』を引き抜いて一人の腹に叩き込み、うつむかせたところで延髄に一撃を加え、隣に居た奴が小銃を向けるとその銃身を掴んで地面に向かせ、引き金を引く前にこめかみ目掛け叩きつける。
ウォンが悪ガキ時代から愛用してきた打撃武器。鉛の塊を先端に付けた板バネを分厚い獣の革でくるんだ奴。手練れが使うと一撃で相手を殺す事も昏倒させることも自由自在と聞いた。こういう時にはもってこいの武器だ。
これで文字通り、瞬く間に完全武装の警察官八人が完全に無力化された。
相手を検束するときは十分に距離を保ちましょうね。勉強になりましたか?民警の諸君。
芋虫みたいに唸りながら転がり回る六人と気持ちよさそうに伸びてる二人を跨いで、警察の車に乗り込んでサトウキビ畑に突っ込ませ、念のために
「さて、お待たせしました教授、空港へ向かいましょうか」
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