11.

途方もない時間が流れて。

もう何もないと思ったのに。

彼がそこにいた。


なんだ。まだいたのか。

あれ、話すのってどうするのだっけ。

それより、どうして私は光の下にいるのだっけ――。


それよりも、強烈な違和感。

憔悴しきった表情。


彼は一人ぼっちだった。


あらゆることに戸惑っていると、彼が口をひらいた。

聞いたことのない、しゃがれた虚ろな声だった。



お願いだ。


家族が欲しい。



ああ。もう、久しぶりすぎて。言葉が出ない。

なんでそんな声してるんだと、笑いたいのに、涙が止まらない。

昔の私なら、朝飯前だったはずだ。彼をくしゃくしゃの笑顔にするなんて。


こういうとき、どうすればいいんだっけ?


そのあとのことは、よく覚えていない。

ただ、暗闇のほかに地獄があるなら、それだと思った。





私は彼の道具だったし、彼の道具でしかなかった。


彼の願いは、彼の家族を奪った人間の家族を、奪い返すことだった。

それが家族を手に入れることだと信じきっていた。


私は彼の望むままに、身体を振り回し続けた。

彼に従う以外の思考はとっくに欠如していたし、

何より暗闇で願ってしまった後ろめたさがあり、

そして未だに共にいられる喜びが勝っていた。


このまま時間が延々と続き、果ては見えないようだった。

何度血を被っても、錆びることはない。私に終わりはこない。

ただ、酷く、疲れた。

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