第20話 相棒サラマンダー

「おーおー。さすがじゃの!火の精霊サラマンダーを捕まえたか!」

「これが…諸悪の根源だったのか…わしのサラマンダーじゃな…。」

ジュゼンネはそう言って俺の肩に乗っているサラマンダーを見て

目を細めた。

「えっ!ジュゼンネさんのサラマンダーだったのぉ~?でも、どっかの家っていってたのぃ~。」

「まぁ‥わしの家じゃな‥‥して?アスクレピオス様解毒剤は作れそうですか?」

「そうじゃな…まぁ出来るのぉ~!わしにかかればお茶の子さいさいじゃあ!」

「「えっ!」」

「じゃあ…始めからアスクレピオス様が来たら俺らはこんなに苦労せずに済んだんじゃ‥。」

「くそっ‥‥俺達を扱き使うだけ使いやがって…チッ!」

「ほんとうだよぉ~!僕達いらないじゃん!というか何でここに居るんだよぉ~!」

アスクレピオスを睨みながらアースとネメアは文句を言っている。

アスクレピオスは顎を撫でながらニヤニヤして俺達を見る。


「おーおーそんなに怒らんでもええんじゃろ?お前さん達から連絡を貰って急いで駆けつたんじゃぞ?解毒剤は、わししか作れんじゃろしな。」

「解毒剤は出来てないんですか?」

「大口を叩くだけで何もしてないんじゃん!」

「まぁー待て。ペルそのサラマンダーを貸してくれんかの?」

「へ?俺のサラマンダーとかではないんですけど…どうも、離れなくて…。」

「ほぉ~…懐いておるの‥さすがじゃな‥‥。」

「俺は何もしてないんですけど…」

「まぁーよい!ササッ!こっちに。」

アスクレピオスはある小屋に入って行って医療器具の様なものを並べだした。

ハサミ・棒みたいな器具‥‥

俺には全く分からないけれど…。

俺にしがみ付いているサラマンダーが震えて怖がっているのが分かった。


「あの~…アスクレピオス様?なにを?」

「おん?このサラマンダーからちょこっと力を貰うんじゃよ。」

「力?」

「そうじゃ。ここの奇病の原因は、サラマンダーの火と力とこの地の霊脈が反発して出来た瘴気が草木に染みこんだことによって出来たものだ。倒れた者たちは、このサラマンダーが潜んでいた洞窟の近くに行ったか、近くで薬草を採って食べたかのどちらかじゃ。お前さん達がもっときちんと話を聞いていたら直ぐに分かったんじゃがな…。」


うっ…。

俺達のせいなのか?

「俺達のせいにすんじゃねーぞ。俺らは俺らで出来る事をしたんだ。」

「そうだーそうだー!」

「ははっ‥。で?どうするんですか?」

「そうじゃな…このサラマンダーから火を貰って、その火を使って薬草を煮込む。煮込んだ薬草から不純物を取り除き精製する。最後にサラマンダーの血を混ぜれば完成じゃ。」

「血を混ぜる?」

「うげぇ~‥‥気持ち悪いぃ~…。」

「‥…。」

「お前さんら!そんな目でわしを見るな!薬にはよくあることじゃ!ミイラを磨り潰して薬にする事も多いんじゃぞ!まぁ!それもこれもわしの智慧が発明したものじゃがな!」

「うげぇ~最低。」

「最悪だな。」


血を抜く…。

そんな事をしてこのサラマンダーは大丈夫なんだろうか?

この小屋に入ってからこのサラマンダーはずっと震えているし…。

「そのサラマンダーわのぉ…わしの実験用のサラマンダーなんじゃ。火の精霊と他の精霊を掛け合わせて何か作れるかと思っての‥‥。この小屋はその時に使っていたんじゃ。」

「だから、怖がっているんですね…。」

「そぉなのぉ~?爬虫類って全部同じ顔に見えるから僕分かんなぁ~い。ネメア君は?」

「あぁ?俺が分かる訳ねーだろ。こんな小動物…メシだろ。」

「うわっ・‥ほんとにぃ?」

「ネメア‥‥。」

「やめろそんな目でみるな。俺達の世界じゃ力のある者が全てだ。」

「お前さんらそろそろいいか?サラマンダーをわしに渡してくれ。」

「えっ…あぁはい。」

アスクレピオスにサラマンダーを渡す。

猫よりも力が強く、つぶらな瞳が俺を見る。

キーキーとした声が小屋の中に響いて、なんだかこの手を放しちゃいけない気がしてならない。

‥‥‥‥。

‥‥‥‥。

「あの…アスクレピオス様…俺も一緒に立ち会ってもいいですか?」

「えぇ!ペル君!何言ってんのぉ?」

「震えてるから…きっと怖いんだと思う。せめて、一緒にいたらましかなって?」

「‥‥…よかろう。じゃあ、このまま血を抜くぞ!ほらよっと!。」

ピギュゥ―!


「うわっ!いきなり抜かなくても!」

「そんな大層なものじゃないから安心せぇ。ちょこっとだけじゃ…そら終わったぞ。」

「へ?もう終わったのぉ~?その器具は使わないのぉ~?」

「これはただ邪魔だっただけじゃ。」

「「「‥‥‥。」」」

………。

「ほんと紛らわしいぃじじぃだなぁ~!」

「ちっ…。」

「もっと、何かするのかと思いました。」

「このわしがそんな事をすると思うかの?」

「思うぅ!」

「する。」

「するんじゃないですか?」

「信用ないのぉ~。まぁ、よいここから先はわしとジュゼンネの番じゃな。お前さんらは、もう休んでよいぞ。」

あっ‥はい。分かりました。」

「それと…そのサラマンダー連れて行くがよい。」

「でも…ジュゼンネさんの…;。」

「よい…今回の事は、わしのせいでもある。一介の魔女如きが神の眷属に手をだしたんじゃこれはその罰があたったんじゃ…。それにそのサラマンダーはお主の懐いておるしな。」

「はっはい!」


俺達は2人の居る小屋から出て部屋に帰った。

なんだか長い暗い場所にいた様な気がする。

小屋からでた事でサラマンダーの震えは止まっていた。

俺の肩ですやすやと寝息を立て始めたサラマンダーを寝かせてやりたい。


「んふ~!ペル君に懐いちゃってるねぇ~。なんかペットみたいだねぇ~。僕の家にもクラゲちゃんがいるよぉ~。」

「お前のは非常食だろ。」

「ちっ違うよぉ!ペットだもん!色がいっぱいあって綺麗なんだからぁ~!」

「そうか?腹に溜まらなさそうなペットだな。」

「ペットじゃなぁーい!」

「同じだろ。」

‥‥。

ペット…。

違う気がする…。

ペットよりもっと‥‥違う。

そうだな…。

相棒?

いつか、こいつの相棒になれるような俺になれればいい。

アースとネメアみたいに。

いやっ…ちょっと違うか?


「これからよろしくな?相棒。」

キュルキュル‥。


「ペル君!早く!部屋に軽食を用意してくれてるんだってぇ!食べよぉ!」

「あぁ!」




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落ちた先は、神の世界でした。 猫屋敷いーりあ @c2h7b9i8

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