第17話 探偵ブラザース出動?

俺たちは、とりあえずジュゼンネさんを探すことに。

「どこにいるんだよぉ~ジュゼンネさぁ~んんん!アクエリアスがきたよぉ~。」

「おいっ…。デカい声で叫ぶな。」

「ネメア君は、知らないかも知れないけれど、迷子を捜す時は、大声出して名前呼ぶんだよぉ!フフンッ!」

「馬鹿か…。」

「なっ!馬鹿じゃないよぉ!僕が、一生懸命探そうとしてるのにぃ~。何も、してないネメア君に言われたくなぁ~い。」

「何もしてない訳じゃない。何も出来ないんだ。」

「ご自慢のお鼻が利かないんだもんねぇ~。ププッ!」

「あぁ?」


アースは、森を抜けると本来の明るさを取り戻したみたいだ。

元気なアースにつられて、ネメアも元気になってきたみたいだな…。

まぁ~‥つまり、いつもの口喧嘩だけど。

2人には、人探しが向いている様には見えない…。

おっ…俺がしっかりしないと!

そう思い、2人をほっておいて、近くの民家の扉を叩く。


トントンッ!トントンッ!


「すみません~。誰かいますか?」

「「あっ!」」


木で作られた、青い扉が中から開く。

ガチャッ。


「だれじゃ?」

中から出てきたのは、俺の胸くらいの身長の御婆さんだ。

ジュゼンネさんの様な、凄みはないけれども。

ベテランの魔女の風格を醸しだしていた。

なんだか、恰幅のいい体を押し出して、俺達を威嚇しているみたいだな…。

それに…眉間の皺が凄い‥‥。


「あっ。いきなりすみません。俺たち、ジュゼンネさんの知り合いで…。彼女が、どこに居るかわかりますか?」

「ジュゼンネ‥‥。ジュゼンネだったら、街の中心部におるよ。」

「そうですか。ありがとうございます。街の中心部って…。」

「道なりに行けばわかる。

「ありが「バタンッ」‥‥。」


いきなり過ぎたのか‥‥。

お礼を言う前に、扉を閉められてしまった。

「なぁにぃ~。すっごく嫌な感じ~。」

「まぁ‥。しょうがないよ。いきなりだし。それに、ジュゼンネさんが街の中心部に居るって教えてくれたしな。」

「ふぅ~ん。」

そうだ、キチンと質問に答えてくれるなんて、とても良い人だ。

俺は、叔母さん達の家に居た時は、何も言わず、外に放り出されるか、知らない場所に置き去りにされた事もある…。

それに、比べたらこの世界の人達は、凄く良い人ばかりだ。


「おいっ。このまま道なりに行けばいいんだろ。行くぞ。」

「あぁ。」

「うぇ~?ネメア君なんにもしてないのに、仕切るのぉ?」

「うるさい。お前らが、歩きださないからだろが。」

「僕達が、あの御婆さんから、情報を聞いて来たのにぃ~。」

「僕達?ペルがだろが。お前は、扉が開いた瞬間、俺の後ろに隠れただろうが。」

「‥‥てへぺろ。」

「なんだそれは…気持ちわり‥‥。」

「気持ち悪く何てないわぁ!この僕が、ウインクして、ベロを可愛く出してるんだぞぉ!可愛いでしょ!」

「はっ!この視線と同じくらい気持ち悪りぃ。」

「んん?視線?」

「アースは、感じないのか?家の中だけど…俺達を見てる。」

「んん~。感じるけどぉ~。気にすることでもないよぉ?だって、皆、美しい僕を見てるんだし!」


俺もネメアも、悪意はないけど見世物の様に見られるのは良い気がしない。

けれども、アースの言葉に俺もネメアも笑ってしまった。

「はははっ!そうだな。俺達じゃなくて、アースを見てるのかもな。」

「はっ!ほんと、馬鹿だなお前は・・・。」クシャクシャ。

「うわっ!髪の毛クシャクシャにしないでよぉ!!もうっ!ネメア君もクシャクシャになれっ!」

「届いてから言え。それに、もうクシャクシャだろが。」

「なっ!!んん~。はっ!ペル君、肩車して!」

「えっ。肩車?持ち上げられるかな?」

「おいっ。やらなくていい。」

アースのお陰で、嫌な気持ちがどこかに飛んで行った。


「あっ!ねーねー!人増えて来たよ!」

「そうだな。観光客かな。」

「どうだろ?分かんないけど…ドワーフにニンフそれに…女神達もちらほら‥‥仕事かなぁ~。」

「さぁな。観光地としては、人数制限がかかってるからな…。」

「えっ…人数制限…俺達大丈夫かな?」

「さぁ?」「知らん。」

‥‥俺もわからない。

「それにぃ~。僕達は、ジュゼンネさんに招かれた側だしぃ~。僕達の意思でここに居る訳じゃないしぃ~。全部、あのじじぃの仕業だからね!」

「あのじじぃが、元凶だからな。何か不味い事が、あればあいつが責任とるだろ。」

「そうだねぇ~。仮にも神様だからねぇ~。」

それでいいのか‥‥。


「あっ!あれって、観光案内所みたいだよぉ!」


大通りに出たらしく、人の流れが増えた。

アースの家の周りも、アスクレピオスの医療所の周りも人は居なかった。

俺が、この世界に落ちて、こんなに多くの人?を見たのは初めてだ。

それに、魔女の谷って言うからもっと閉鎖的な場所かと思ってたけど…。

観光案内所なんてものがあるんだな…。

「やっと、着いたか。」

「そうだな…。ペリオン山より近かったのに…なんだか疲れたな…。」

「そうだねぇ~。手紙渡したら、お風呂とご飯食べにいこうよぉ!」

「そんな金あんのか?」

「‥…じじぃのツケにしようかぁ!」

「「‥‥賛成。」」


観光案内所の中は、綺麗なタイル張りの壁とカラフルな花が沢山。

この谷に着いた時に感じた、親近感はどこにやら‥。


「受付で聞いてみようか…?」

「そうだねぇ~。でも、受付の人がジュゼンネさんを知らなかったらどうしよぉ~。」

「その必要はないぞ。」

「「えっ?」」

そこには、森で会ったジュゼンネさんが立っていた。

「ジュゼンネさん…どうしてここに。」

「なぁに。アスクレピオス様から、事前に連絡があっての。街の外れに落としたと聞いた。であれば、いずれこの場所に着くと思ってな。」

「なっ!あのじじぃ!連絡出来るんなら、自分で調べに来たらいいだろぉ!!」

確かに‥‥。

「ジュゼンネさん…。とりあえず、コレを‥‥。」

俺は、アスクレピオスに渡された手紙をジュゼンネさんに手渡した。

「そうか…これが…。」

そう言って、ジュゼンネさんは、手紙を読み始めた。


「ねーねーっ!これで、観光して帰れるかな?」

「いやいやっ何も調べてない。」

「俺は、どこでもいいから寝たい。」

「もぅ!ネメア君、ライオンじゃなくて、豚になるよぉ~!ププッ!」

「あぁ?誰が、豚だ。」

「2人とも。こんな所で喧嘩はちょっと‥。」


「ふむっ…じゃあ、お主らは、アスクレピオス様の代わりに調査に来たということじゃな…。あい。分かった。」

「観光はぁ~?」

「とりあえず、休ませろ。」

「2人とも…。」

「そうじゃな…。そんな泥だらけの姿で、患者の所には、行かせられんな‥‥。まずは、宿舎に案内する…ついてこい。」

アースとネメアの態度に、呆れたのかジュゼンネさんは、俺達を宿舎に案内してくれた。


「あっ…あの、ジュゼンネさん…俺達金は‥‥。」

「大丈夫じゃ。ここでの代金は、全て魔女の谷の経費で落とす。なにも気にするな。」

「やったぁーーー!!」

「まぁ…妥当だな。」

「ジュゼンネさん、すみません。」

「これぐらい良い…。この谷の奇病が解決するなら安いもんじゃ。」

「そうだよねぇ~!ペル君、ここはジュゼンネさんの顔を立てると思って受け取っておこうよぉ!」

「それって、こう言う時に使う言葉なのか…?」

「それと、これをしておれ。」

そう言って、ジュゼンネさんは俺達にブレスレットを渡してきた。

青色と黄色、それに赤色に光る玉が連なって出来たブレスレットだ。

「これは?」

「これはな。青は天の加護を、赤は太陽の加護を、そして黄は、地の加護を込めた物じゃ。これらは、神の使者である事の証じゃ。このブレスレットをしている限り、この谷では自由に動けるじゃろ。それに、お主らは、アスクレピオス様の使者。本物の神の使者じゃしのぉ。」

「これって…貴重なものじゃないのぉ~?」

「そうじゃな…が必要なものじゃろ‥‥無くすなよ。明朝に迎えにくる。」

「ジュゼンネさんありがとうございます。」

そう言って、ジュゼンネさんは、帰って行った。


「ねーねー。3人お揃いだね。フフフッ!なんだか、やる気が出てくるね!明日らか頑張らなきゃだね!」

「そうだな。」

「めんどくせぇ~な。」

「もうっ!ネメア君は、すぐそんな事言うんだから!あっこれって探偵みたいだね。」

「そうか?」

「違うだろ。」

「よしっ!探偵ブラザース出動!!」

‥‥。

「ねみぃ…。おいっペル風呂入って、飯食って寝るぞ。」

「そうだな。明日の為に体、休めないとな。」

「‥…僕も行くぅ!」


アース命名「探偵ブラザース」

1回休み。

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