第7話 出発オリンポス!

おっ~い!出てきてよぉ~!

外から、アースの声が聞こえた。帰って来たのか。

ネメアの後ろに着いて外に出る。

・・・!

凄い・・玄関の扉を開けて外に出ると白い世界が広がっていた。

白い木に実っているのは、金と銀の実。

道路には、色とりどりの変な家が建っている。

空には、羽が生えた人間が飛んでるし、どこからか独特の甘い香りが漂ってくる。

さっきの木の実か?・こんなに甘い匂いなんて・・一体どんな、味がするんだ。

足もとに広がっている道は、土と砂利じゃないな・・。

雪か?違う・・いつか見た白くて高い石だ。


・・あれ・・・?

・・・?

外と家の中を何度も見る。

中から見た外の景色があまりにも違う。


「んじゃあぁ~!出発進行!!」

アースの高くて元気な声が響く。

彼の隣には見知らぬ人と馬の間の子?が立っている。

栗色のツヤツヤした胴体にネメアよりも強そうな筋肉。

胴体と同じ色の髪は、全体的にうねっていて靡いている。

深草色の目。高い鼻筋。白く健康的な歯が光っている。


「おいっ。なにが出発だ。どの方角に向かうのかわかってんのか?」

「もっちろん!僕に任せてぇ~。」

「ご安心を、ミスター。我らケンタウロス族は地上にも、このオリンポスにも知らぬ土地はないのですよ。・・・ですが・・ミスターは・・あなた様は・・・百獣の王ネメア様では?」

「・・?そうだが?」

「あー・・・アクエリアス様・・わたくし如きがネメア様をお乗せするのは・・ちょっと・・。」

「んん~?君に乗るのは僕だよ?」

「はぁ・・それはよかった。」

「はんっ!この俺が草食動物に乗るわけないだろ。道がわかるなら先にお前たちが走れ。」


俺は、3人?の会話よりもアースの家の形が気になった。

アースの家の全体を見ようと離れた。

大きい水瓶だ。

大きな水瓶の形をしてる、その形にそって水?海?で覆われている。

これは・・・触れるのか?

12歳の時、村の金持ちゴルドルト夫婦の悪ガキに海に突き落とされてから泳げるようになった。

だから・・アースの家の水?に入っても溺れることはない・・はずだ。


「僕の家の水で溺れることはないよぉ?」


いつの間にか、3人の話は終わっていたようだ・・。

「あぁ・・アース。この家は・・どうなっているんだ?」

「ふふんっ!これはねぇ~。僕には特別な力があってねぇ~。これは、その力によるものなんだぁ~。すごいでしょぉ!」

「あぁ。すごく、綺麗だ。」

「ふふふっ!そうでしょ?だって、僕は特別だもん!」


アースの説明では、特別な力で出来ているしかわからなかった。

だけど、俺はこんなに綺麗で不思議な家を見たのは初めてだ。


「おい。お前らいつまで話してる。行くぞ。」

「んふふぅ~。ねぇ~。聞いて。ペル君ったら、僕の家が綺麗だってぇ~それにすごいってぇ~。ふふふっ!」

「離せ。抱き着くな。別に、お前の力じゃないだろが。」

「えーっ!僕の力だよぉ~。僕が余りにも美しすぎるから得た力だもん。」

「うるさい。早く馬に乗れ。」

「ミスター。わたくしと馬を同じにしないで頂きたい。確かに、ペガサスの様に美しい翼があるわけではありませんが、彼らよりも気高く誉れ高い事を覚えて頂きたい。」

ネメアの言葉にケンタウロスは少し機嫌を悪くしたみたいだ。

ケンタウロスの後ろから、アースが顔を出し、彼に賛同するように抗議するように手を振り回している。

2人を白い目で見ながら抗議を聞き流しているネメアの手には、砂漠色のカバンがある。


あのカバンには、ネメアが作ったスープと大きめのパン。

あとは、手ぬぐい・火を起こす種・ネクタルと小型の水瓶

アースがケンタウロスを探しいに出て行ったあと、ネメアが黙々と準備をしていた。

手伝おうとしたが、座っていろと言われた。


ネメアは、豪快で乱暴に見えるけど、とても世話好きで心配性だ。

俺にもこんなに優しい友達が居たら・・。

「2回目だけどぉ・・出発進行!」

ケンタウロスにまたがったアースが、両手を高く上げて叫んでいる。

彼の肩には、白いマントが片方に掛かっているだけで何も持っていない。


「・・・俺は・・どうすれば?」

ネメアが運んでくれると言っていたが、まさかおんぶされるのだろうか?

「んな訳ないだろ。これ背負っとけ。万が一落ちた時のクッションにでもなるだろう。」

ネメアが持っていたカバンを受け取り背負った。

去年の薪運びの時より、はるかに軽いカバンは背負った感じがしない。

結構荷物を詰め込んでいたように見えたのに・・・。


「ほらぁ~見てペル君!ネメア君が今よりもカッコよくなるよぉ~。」

「うるさい。黙って見とけ。お前はもう少し離れてろ。」

そう言うネメアから数歩下がって離れた。

俺が離れた事を確認すると、ネメアは目を閉じて立って何かに集中している。

数秒?数十秒?もしかしたら、もっと長かったかもしれない・・・。

ネメアの全身が彼の目の色と同じに光った。

俺は眩しくて見ていられず、目を反らした。

きっと、アース達も目を反らしたと思う。


「もういいぞ。」

ネメアの声。で、目を開けて彼の方を見る。

・・・。

・・・・・。

・・・・・・。

俺は、この世界に落ちてから驚く事ばかりだ。

ネメアの姿は、見たとこもない姿になっていた。


黄金色に輝く姿。

彼の黒くて艶のある髪が首回り全体を覆っている。

長い手足は、太く頑丈でその先には、鋭く尖っている爪が光っている。

とても、強く気高い姿だと思った。

だけど、目の色はいつものネメアの色だ。

・・・・・。

・・・・。

「すごいでしょぉ?かぁっこいいよねぇ~。それでもって、もふもふしてるしぃ・・・。」

ネメアの姿を褒めるアースの目は、一点を見つめていた。


「いつまで見てる。行くぞ。それと、俺の尻尾に触ったら切り裂くからな。」

眉間に皺を寄せて、腕を上げる仕草をしながらアースを睨んでいる。


「ネメア・・今の君の姿は、なんと言うんだ?とても、強そうだが。」

「あぁ・・強い、今の俺の姿は、ライオンで百獣の王だ。人の姿でもお前たちには、勝つがな。」

「えぇ~。やばぁんん~!僕は、暴力は嫌いだしぃ~、美しい僕は暴力に頼らなくてもいいもん。」

「わたくしは、誉れ高きケンタウロス族。戦う理由があれば力も已む無しです。・・・がネメア様とは戦えません。逃げるのも戦術の一つですからね!」

アースとケンタウロスは、なぜか持論に自慢するように鼻をならしている。


「はい。はい。お前ら草食動物とやりあうなんて時間の無駄だ。それより、早く乗れ。鬣にしっかり捕まっているよ。」

ネメアの背に手を触れてみる。

見た目とは違って、少し硬いけれどもずっと、触っていられる。

俺の身長よりも高い背中に飛び乗る。

馬にも乗った事がないのに、まさかライオンに乗るとは・・。

俺は人生の幸運は今が最高だ。

恐る恐る鬣を掴んでみる。

大丈夫だろうか・・俺の力で抜いてしまったら・・。

少し不安げにネメアの顔を除く。

鬣から見える凛々しい顔が、「大丈夫だと」言っている。


「では、まずペリオン山へ向かうには東あるカネロ谷を抜けなければなりません。ネメア様着いてきてくださいませ。それでは、オリンポスからペリオン山へ!」

ケンタウロスの鳴き声と出発の音頭で、2人は走り出した。

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