第4話 空腹は最高のスパイス
「ほらっこれでも食べろ。」
「あぁ・・ありがとう。これは?」
「はんっ!これはな、鹿肉を薄く切って少し炙る。これを出汁にして、真水入れる。炙って鹿肉は、柔らかくもなるし味も出る。この中に、メグ麦を入れて柔らかくなるまで煮る。簡単に出来て、腹にもいいスープだ。どっかの誰かと違って。」
「えぇー。それ、僕の事?確かに草とかは固いかもだけど食べてみないとわからないじゃないか!ほらっ!僕のも食べてペル君!気持ちは、僕の方がいっぱい入っているから!」
目の前に出された二つの器。
今までの生活だったら、1回の食事で2品なんてありえなかった。
確かに、アースの作ったスープは色が不気味で食べるのが怖い。
それに比べて、ネメアが作ったものは、匂いはアースのより劣るけど、トロッとしたスープが、中身の具に絡みついててとても食欲をそそる。
まずは、ネメアのスープ。
・・・・・・。
・・・・うまい。
「おいっ。泣くほどかよ。」
・・・?
膝に置いていた手を頬に当てると、涙が流れていた。
・・俺は・・・泣いていたのか・・。
こんなに・・温かくなるスープを飲んだのは初めてだ。
一心不乱にスープに噛り付いた。
4日間なにも食わなかった人間とは、思えないような速さで食べきった。
「ふふふっ。良かったね。ネメア君。おいしいみたいだよ?」
「ふんっ。俺様がつくったんだから当たり前だろ。」
「ねぇーねぇー!ペル君!僕のも食べて!」
「お前・・・うまそうに食ってるだろ!空気読め!」
「えぇー!ずるい!ずるい!ネメア君だけ褒められて僕は?僕も褒めてほしい!」
「あのなぁ。こんな色のスープなんて誰も飲みたくないだろうが。」
・・・・。
・・・あぁ・・そうだな。
4日間も、見知らぬ俺なんかのために・・。
俺は、一度置いたスプーンを持って、紫色のスープを掬った。
「「あっ!」」
二人の大きな声が、ダイニングを抜ける。
紫色のスープは、独特の苦みと渋みがあった。
だけれども、食べていくうちに甘みが出てきて、なんとも言えない味になる。
普段、雑草とかを食べていたからだろう。
そんなに、不味くない。
というより、食べられないものは匂いでわかる。
こんなに、匂いのいいスープが、食べられないわけがない。
あっと、いう間に紫色のスープ食べきった。
再度、スプーンを皿において二人を見る。
ネメアは、引きつった顔で。
アースは、満面の笑みで。
「・・・・うまかった。ごちそうさまでした。」
「・・こいつ。笑いながら寝てるぞ。」
「あぁ~ほんとうだぁ~。そんなに、僕のスープがよかったのかなぁ~?ふふっ!」
(無言で、ペルの鼻近くに手を持っていくネメア。)
「んん~?ネメア君?なにしてるのぉ?」
「いやっ・・・別に。(よかった・・息はしてる)」
「へんなのぉ~。」
「とりあえず、こいつをどうするかだな。」
「どうするぅ?って何が?」
「はぁ・・。どう考えてもこいつは、地上の民だろ。地上に返すべきだ。」
「んん~・・・・。でも、きっとペル君は、帰りたくないと思うよぉ?さっき、寝言でここに居たいっていってたしぃ。」
「よく、聞こえる耳だな・・・。はぁー・・・じゃあ、どうするんだよ。」
「帰る帰らないは、起きたペル君が決めれはいいよ。それより、お尻というか・・下半身が痛そうだったから・・お医者さん?」
「医者・・?そんなもんオリンポスに居るのかよ?お前みたいに地上出身者ばっかりじゃなんだぞ。そもそも、神どもに医者なんていらないだろが。」
「んもぉ~。どうして、そんないに神々を嫌うかなぁ~。」
「ふんっ!」
「んん~・・・医療の神なら居ると思うけど・・・僕はどこに居るのか知らないよ?僕ぐらい顔の広い人って・・・・誰かいるのぉ?」
「・・・いる・・・お前なんかより、賢くて公平で正義の人が・・・。アストライアーだ。アストライアーの天秤なら、知っているはずだ!」
「アストライアー?あぁ・・・彼か・・・えぇ~彼に聞くのぉ?僕の事好きじゃないと思うよぉ~?」
「知らん。それは、お前が自由すぎるからだろう。」
「それってぇ~僕のせいなのぉ~・・・んん~会いに行くのヤダったりするなぁ~。気まずいなぁ~・・・。」
「上目遣いで見るな・・キモイ。」
「はぁ!失敬な!オリンポス一美しい人間の僕がキモイ訳なだろう!訂正してよ!」
「はいはい。じゃあ、お前の水瓶かせよ。」
「はぁ!意味わかんない!君の暴言と僕の水瓶がどう関係するのさ!」
「天秤に会いに行きたくないんだろう?じゃあ、直接会わないようにすればいいんじゃね。だから、お前の水瓶で問いかければ良いだろ。」
「・・・・・・。そう、だけど・・・もっーーー!僕は、怒ってるんだからね!絶対、訂正させるんだからね!」
ダッダッダッダッーーー!!!
「病人がいるってわかってんのかあいつ。・・・はぁ~またか。おいっ、部屋行くぞ。起きろペル。」
「・・・ん?ネ・・・。」
「・・・・はぁ・・・。」
ネメアの深いため息が聞こえた様な・・・。
聞こえなかった様な・・・。
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