第3話:家出

 残念ながらエリザベスには私に喧嘩を売るほどの覚悟はなかったようです。

 なのでテキパキと聖女神殿を出ていく用意をしました。

 用意と言っても、以前から準備をしていましたので、自室に戻って荷物を持ち出し、可愛がっている魔馬に分けもたせるだけです。

 私の愛する魔馬達はとても賢いので、私の気持ちを察して待ってくれています。


ブケパロス:牡魔馬・戦闘魔馬

バビエカ :牡魔馬・戦闘魔馬

マレンゴ :牝魔馬・戦闘魔馬

バイアリ :牝魔馬・戦闘魔馬


「お待たせ、じゃあ行こうか」


 私は真聖女ですので、数多くのモノをプレゼントされました。

 聖なる力を利用したい者達が、金銀宝石だけでなく、普通の馬や牛もたくさんくれましたが、神殿領の小作人に貸し与えています。

 手元に残して可愛がっていたのは、自ら魔境に赴いて仲良くなった魔馬だけです。

 だから神殿に残すわけにはいかないのです。

 まあ、残そうと思っても、この子達なら、ついてくるか魔境に戻ってしまいます。


「お供させていただきます」


 魔馬達と一緒に待ち受けていた、守護騎士のダヴィドが話しかけてきました。

 無視して出て行こうと思ったのですが、無理のようです。

 幼い頃から共に育った乳兄で、神に私を護ると誓った守護騎士です。

 だから私が一人で出て行こうとしても、必ず付いてきてしまいます。

 無理に置いていくと自殺しかねない、とても面倒な存在です。

 魔馬達と心穏やかに旅したかったのですが、仕方ありませんね。


「私は自分の思うままに生きるわよ、邪魔は絶対に許さないわ」


「承知しております」


 全く表情を変えずに返事してくるのが小憎らしいです。

 私が出て行くと分かっていて、準備していたのでしょう。

 私の魔馬よりは格段に魔力が低いですが、普通の馬ではなく魔馬を用意していますから、空を翔けられないから連れて行かないとは言えません。

 魔力が低いから、足手纏いと言って置いてくと、自害してしまうでしょう。

 本当に守護騎士とは暑苦しい存在ですね。


「本当に仕方のないやつね!

 貴男のせいで逃げ足が遅くなってしまうじゃないの。

 貴男なんかどうなろうと知った事ではないけれど、巻き込まれる魔馬が可哀想だから、絶対に魔馬に無理させるんじゃないわよ、分かっているわね!」


 替え魔馬も三頭の用意していますから、途中でこまめに乗り換えれば、魔馬を潰すような事はないでしょう。

 思いっきり翔けられなくなったブケパロス達は不服かもしれませんが、魔力の低いモノにあわせて旅をするのは常識です。

 まあ、ブケパロス達も元は多くの配下を率いた群れの大ボスです。

 弱者を労わる優しさはもっています。


「さあ、改めて行きましょう」


 

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