第2話:姉妹

「マーガレット御姉様、本当に出て行ってしまわれるのですか?」


 次妹のアンゲラがしつこく付き纏わって質問してくる。

 長妹のエリザベスは黙って見ているだけなのに、うるさい子だわ。


「本当も嘘もないわ、出て行くと言ったからには出て行くの。

 私は有言実行の女なのよ」


 私が切り捨てるように言いきると、アンゲラが傷ついたような表情をします。

 それでも私の妹ですか、傷つくくらい嫌だと思ったのなら私にかかってきなさい!

 相手に押し切られるような性格では、聖女の力を利用されるだけです。

 聖女の力を身勝手に利用しようとする奴はいくらでもいます。

 それはこの国の王家も同じ、私は腐った奴に利用される気はない。

 その為に断固として断れるだけの力を蓄えてきたのです。


「めそめそするくらいなら、最初から絡むんじゃないわよ。

 それともアンタは私を生贄にして自分の身の安泰を図るつもり?」


「そんな、私はそんなつもりで言ったわけではありません。

 ただマーガレット御姉様が出て行ってしまわれるのが寂しくて……」


「めそめそするんやないわよ、うっとおしいわね。

 アンタの寂しさを紛らわせるために、私にあんな臆病者と結婚しろと言うの!」


 私が厳しく言い放つと、まためそめそと下を向いて泣き出しました。

 それでも聖女神殿第四席の聖女ですか!

 私が出て行けば三席に上がることになります。

 今まで私が力づく追い返して連中が、聖女を求めてやってくるでしょう。

 そんな根性なしでは、五席や六席の聖女に飛び越されます。

 まあ、この子の性格と聖女の性質なら、その方がいいのかもしれませんね。


「マーガレット御姉様、御姉様が出て行くと、私が王太子と結婚させられるかもしれませんが、その事はどう考えられているのですか?」


 今まで黙っていたエリザベスが急に話しかけてきました。

 確かに彼女心配もあり得る事でしょう。

 大聖女である母の考え方次第ですが、真聖女の私の代わりを務められるとしたら、光聖女のエリザベスくらいでしょう。

 ですが、だからといって、私が犠牲にならなければいけない理由にはなりません。


「どうもこうもないわよ、貴女も結婚するのが嫌ならここを出て行けばいいのよ。

 大聖女が言ったように、国と神殿の庇護を受け続けたいのなら、その命令に逆らえないわよ。

 貴女が王太子と結婚したくないから、私に王太子と結婚しろというの?

 ふざけるんじゃないわよ、私を命令したいなら、力尽くで来なさい!」


 私に次ぐ実力がある聖女であり、実の妹であるエリザベスに喧嘩をふっかけて、決断をするように誘導しました。

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