プロローグ 「終焉の始まり」
―――その時はまだ、誰も知らなかった。
この国が、この世界が、たった1人の命にかかっているという事を―――
***
土埃で霞む朝の空気を凪いだ風が、やがて黒く続く川のような大軍の全容を露わにした。
淀んだ空気を纏い、唸り声をあげながら左右へ進軍する、
壁のような陣形を展開すると、その背後に構えた皇帝シャダイは、空を見上げる。
蒼穹を滑空する巨大な白銀の翼。
その姿が、この、血で血を洗う荒れた大地に大きな影を落とした。
複数の甲高い威嚇声が空に鳴り響く。
「白鷲だ!!奴らが来たぞぉぉぉ!!」
「全軍、進めぇぇぇ!!!」
地響きのような怒号、雄叫びの中、エゴランの掲げる血塗られた黒い剣の背後から、土埃が巻き上がり、大群の餓狼が飛び出す。
よだれを撒き散らし咆哮を上げ、真っ直ぐに斜面を駆け下りて荒地を我先にと
後を追う数万の騎馬。
ぼろぼろと砂を落とす土塊の騎士が悲鳴のような叫声を発しながら馬群を操り、牙を剥いて襲い掛かろうとしていた。
丘陵にそびえる砦に立ち、サリードは燃えるような瞳でそれを見据える。
強い風になびく朽葉色の髪に朝日が当たり、あたかも黄金のように輝くその耳元で、小さく揺れる2つの紋章が一際光を放つ。
彼はオシグルの大剣を天に突き上げた。
「…この領域を犯し、踏みにじり、蹂躙する者は何人たりともここから通すな!!奴らを再び冥府の奥深くに落とすまでこの戦いは終わらない!!負ければ我々は全てを失うのだ!それを決して忘れるな!!」
「「おおぉぉォォ!!」」
「「オリエンティスベルラトール!!」
「「我らに勝利を!!」」
「「オォォォぉぉぉ!!」」
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