2体目

4時20分になった。海はまだ来ていない。おかしいなぁ…。もしかしてと思ってLINEを見たけど、別に遅れるとか来ていない。どうしちゃったのかな?アイツ、時間は結構守ってくれる奴なのに…。もしかして…。少し不安に思っていると、ピロン♪とLINEの通知が鳴った。海からだった。


『10点のテスト見つかって、かーちゃんに怒られてた…。ごめん、遅れる!』


な~んだ。全然何てことなかった。イヤ、アイツにとっては大変な事だっただろうけど。


「おーーーい!!!」


外から微かに声が聞こえた。海の声だ。

僕は鍵を開け、窓から覗いた。手を降っている海と、先程とは違って優しいオレンジ色の光を放ってる空が見える。


「海、10点のテスト見つかって怒られてたんだってね。」

「そうだよ~…あのババア、何でこういうときに限って見つけるんだ…。」

「あははは…。とりあえず家の中入ったら?早く遊ぼうよ!」

「そーだな。お邪魔しま~す。」



僕は机に2人分のジュースを置く。海はもうゲームの電源をつけて遊んでいた。


「サンキュー。」

「どーも。……あっ!海、もうこのステージクリアしたの?スゴいね!」


クラスで一番ゲームが上手な美野くんでさえここまではいってないのに…。どういう裏技使ったんだ?海はニヤリと笑って


「実はな…俺、ここを簡単に突破できる方法を発見したんだよ。」


誇らしげに僕に言った。へぇ~どんな方法だろう?めっちゃ気になる!


「何々?教えてよ!」

「え~どっしよかな~?」

「お願い!」


僕は手をパチンと合わせて海の前にしゃがむ。ここまでされたら海は何だかんだ優しい奴だから教えてくれるだろう。案の定。


「しゃーねーな!ハルカには教えてやるよ!他のやつには言うんじゃねえぞ?」

「わーい!!うん、言わないよ!」


少し大袈裟に喜んで見せる。本人は気づいてるかどうか知らないけど、海は僕に喜ばれるのが好きなんだ。説明が始まる……。



説明が終わったときには、空はすっかり真っ暗になっていて星がキラキラと弱々しく…だけど輝いていた。6時32分。海が僕の部屋にかかっている時計を見た瞬間、顔が真っ青になった。


「ヤッベ!そろそろ帰んないとマジで殺されるぅ~!!ごめん、帰るわ!」

「分かった。僕、見送るよ!」


ドア越しにダダダと階段を急いでかけ降りていく音が聞こえる。相当焦ってるなぁ…。思わずプッと吹き出し、後を追う。


「じゃあな!!」

「じゃあね!」


僕に一回手を降ったあと、道路に出た海は走り出そうとした。


「あ。」


ぐしゃっ。

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