死に愛されてる
@hdsohht
菱科ハルカ編
1体目
僕は昔からやたら「死」というものに出くわすことが多かった。例えば…学校の帰り道の途中、車にはねられた犬が僕の目の前に飛んできたり、廃墟のビルの前を通った瞬間、上から落ちてきた男性がべしゃりと音をたてて弾け飛んだりとか。一年に一回は必ず僕は「死」を眼前で見る。だからもう今更、僕の目の前で何が死のうとあまり動揺を感じなくなってきていた。
「といーわけで!ハルカ!今日、お前んちにゲームしに行っていい?」
「えっ…いいよ。」
さっきまで他の奴と喋っていた友達の久遠海が、いきなり僕にそう聞いてきたので一瞬詰まって答える。海は僕の返答を聞くと、すぐに帰る準備をして
「よっしゃ!じゃあ、4時ぐらいに行くわ!じゃあな!」
風のごとく素早い動きで教室を出ていった。せっかちだなぁと思いながら目線だけで見送ったけど、僕もうかうかしていられないや。だって、4時まであと30分…。
さっきまで青く澄んでいた空は、まるで血のように鮮烈で赤い夕焼けになっていった。何か気味が悪いなぁ…。僕は空を見たくなくて目を地面に向ける。困った。地面まであの赤色だ。でも少しはマシだから我慢しよう…。
影が僕よりも長い。黒い。当然だけど僕と一緒の動きをしている。何かあれみたいだな…。えっと、何だっけ?ドッペルゲンガーっていうの?あ、だけどドッペルゲンガーは同じ動きはしないか。ただ姿が一緒なだけで…。
ペタペタと足音が聞こえる。振り向くと3~5歳ぐらいの女の子が、俯きながら歩いてくるのが見えた。一人だ。何か変だな…。こんな幼い子を夕方とはいえ一人で外に出すものなのか?親は何をしているのだろう…。
立ち尽くす僕の横を女の子が通りすぎる。
ぐにゃり
女の子の体の軸が歪んだ。地面に叩きつけられる。驚いて僕は女の子の元へ駆け寄る。
とりあえず血は出ていない。良かった…。俯いて見えなかった女の子の顔が見える。可愛い顔立ちをしていた。二重の目を見開いている。ビックリした~というような顔。だけどピクリとも動かない。まさか……。脈を測った。ない。死んでる。
「はぁ…。」
思わずため息が口から出る。まさかさっきまで普通に歩いていた人間が、死ぬなんて…。しかも地面に叩きつけられたぐらいで。人間の体って…特に小さい子は思いの外脆いもんなんだな…。あっ!後10分で4時じゃん!ヤバイな…。死体より生きている人間の方を優先しなくちゃ。僕は走り出した。
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