第2話 大きな山の麓にて
ぼやけた光景が偽物であるだなんて、そりゃあ何度も疑ったさ。けれどもどれだけつぶらな目をゴシゴシしたって、ちっとも悪い夢から醒めやしないんだ。
ボクの立っているところは3cmくらいの短い葉っぱが生えている野原である。しかし正面を向く視界ならば一面が樹の海に埋め尽くされていて、ボクはちっちゃいから、あそこに繁茂する草花にも身長が及ばないのかもしれない。頭の真上では太陽なら燦々と煌めいているのに、この奥なんて真っ暗闇で何があるかも分からず、本能的な恐ろしさを感じた。後方は対称的に見渡す限りの草原が延々と続いており、地平線まではっきり見える。
なぜだかここに止まっておくのはいけないように思えた。とにかく歩き出さない限りはお家に帰れないような気がして。けどどちらに進むのが正解かも分からない。
さて、ボクのお家は何処なのでしょう?
自らに問い掛けたところで勿論答えなどでない。しかし尋ねずにはいられなかった。だって誰も助けてくれる人がいないのだもの。
ボクの願いが届いたのでしょうか、気紛れにふと顔を上げたとき、森の大木よりもっともっと遥かに高くに山が聳え立っているのが確認できた。山の裾野は余りに広大でその向こう側は完全に隠されており、またこの山はどうやら堂々たるに雲を貫いてしまっていて、もしかすると頂上はお月様にまで届いているのではないかとも錯覚される。
だからボクには深い森に入っていくことに何の躊躇もいらなかった。
あの山に行けば帰れるかもしれないという考えには、もちろん根拠なんてありやしない。だけどもこの直感は信じるに足るものだと、なぜだか知っていたのです。
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