第3話 異変(2)

 2人は周りのワイバーンを全て倒した。2人が倒すと、中から人間と思われる子供たちが出てきた。どうやら魔界統一同盟の難を逃れた子供たちのようだ。子供の中には、自分以外の家族を連れ去られて、泣いている人もいる。


「大丈夫?」


 サラは子供たちに聞いた。


「うん、僕は大丈夫」


 サラは頭を撫でた。だが、その子供の手は震えていた。襲い掛かってきた魔界統一同盟の幹部を怖がっているのだろう。


「こわいよー!」


 子供たちの中には泣いている人もいた。よほど彼らが怖かったに違いない。


「何があったの?」


 泣いている子供の肩を叩きながら、サラは聞いた。


「パパが悪い怪獣に連れていかれちゃったよー!」


 一緒にいた子供が、泣きながら言った。この子の手も震えていた。その子供も家族を彼らにさらわれた。その子供も彼らを怖がっていた。


「怪獣のお兄さん、こわーい!」


 どうやら、彼らの家族はワイバーンたちに連れ去られたようだ。その姿を見てサラは思った。この子のために、何としても家族を助けなければ。王神龍を倒さなければ。さもなければ、彼らが悪い奴らに殺されてしまう。人間と魔族が共存する世界を維持するために、彼らを止めなければ。


 突然、サラの頭上から黒いドラゴンが襲い掛かってきた。そのドラゴンは羽がボロボロで、まるでゾンビのようだ。死体を引き裂くと言われる黒いドラゴン、ニーズヘッグだ。そのニーズヘッグはワイバーンと同じペンダントを首からぶら下げていた。そのニーズヘッグはどうやら彼らの親分のようだ。彼はすごい形相だった。まるで何かに操られているようだった。


「あれ、何?」

「また怖いお兄さんがやってきた」


 男の子はまた震えあがった。男の子は家に逃げ込んだ。


「こわいよー・・・」

「今度は誰だ?」


 マルコスは舞い降りてくるニーズヘッグを見ていた。


「もしかして、ワイバーンたちの親分?」


 サラは首をかしげた。


「そうかもしれない」


 子供たちは再び家の中に避難した。今度こそ連れ去られると思ったからだ。


「お前、俺の部下を殺したな。俺が仇を討ってやる! お前ら、八つ裂きにしてやる! 覚悟しろ!」


 ニーズヘッグはサラをにらみつけ、襲い掛かってきた。


「村をめちゃくちゃにしやがって。許さん!」


 マルコスは炎を帯びた拳で殴りかかった。しかしニーズヘッグはびくともしなかった。


「人間を返せ!」


 サラは炎を吐いた。ニーズヘッグはやや強いダメージを受けたが、やはりびくともしなかった。


「覚悟せよ!」


 ニーズヘッグが襲い掛かってきた。


「俺の魔力を思い知れ!」


 ニーズヘッグは魔法を使ってきた。マルコスが火柱に包まれた。マルコスは大きなダメージを受けた。


「うっ・・・」


 マルコスは傷口を押さえた。ニーズヘッグはワイバーンよりも体力があり、いかにもボスのようだった。ニーズヘッグは、鋭いまなざしでサラを見つめていた。いかにも襲い掛かってきそうな様子だった。


「食らえ!」


 サラは炎を吐いた。それでもニーズヘッグはびくともしなかった。どれほど体力があるのだろう。それとも、全く聞かないのか?サラは思った。


「俺の強さを思い知れ!」


 そう言って、ニーズヘッグは強力な毒の爪でサラをひっかいた。そのひっかき攻撃はマルコスよりも強かった。


「うっ・・・」


 サラは大きなダメージを受け、毒に侵された。サラは傷口を押さえた。


「癒しの力を!」


 すぐにサラは魔法で体の中の毒を消した。


「世界平和のために、人間を捕まえるなんて、ひどい! しっかりと教え直せば、賢くなるんじゃないの?」


 サラは傷口を押さえていた。


「そんなの、許さないぞ!」


 マルコスは鋭い爪でひっかいた。


「食らえ!」


 サラは炎を吐いた。だが、ニーズヘッグは痛がらなかった。


「ちっともひどくない。そんなことをやっても、効果はない。心正しき人ばかりの、素晴らしい世界になるのだぞ」


 ニーズヘッグは笑顔をのぞかせながら言った。ニーズヘッグは毒を帯びた爪でマルコスをひっかいた。ワイバーンの毒の尻尾で刺されるよりも痛かった。マルコスは毒に侵された。マルコスは傷口を押さえた。


「癒しの力を!」


 サラは魔法でマルコスの体の中の毒を消した。


「そんなの素晴らしい世界ではないわ!みんなが共存する世界が一番素晴らしいと思うわ。あなたの考え、間違ってるわ!」

「そうだぞ!」


 マルコスは炎をまとった爪でひっかいた。


「そんなことはない!」


 ニーズヘッグはサラをひっかいた。しかしサラは毒に侵されなかった。


「目を覚ませ! そんなの、素晴らしい世界ではない。つまらない世界だ! 生きる人は、個性があるから面白い。お前は間違っている」


 マルコスは反論した。マルコスは鋭い爪でひっかいた。しかしニーズヘッグは痛がらなかった。だが、確実にダメージを与えていた。


「私もそう思うわ」


 サラは炎を吐いた。


「それはどうかな?」


 ニーズヘッグはサラを鋭い爪でひっかいた。だが、サラは毒に侵されなかった。毒の量がそんなに多くなかったからだ。


「これでも食らえ!」


 サラは炎を吐いた。しかしニーズヘッグはびくともしなかった。しかしニーズヘッグの傷口が広がっていた。確実にダメージを与えている。このまま攻撃すれば、必ず勝てるはずだ。サラは徐々に勝てると思い始めてきた。


「許さないぞ!」


 マルコスは鋭い爪でひっかいた。


「悪魔の炎の力を思い知れ!」


 ニーズヘッグは黒い炎を吐いた。体に炎が移りやすい悪魔の炎だ。この攻撃は、体に火が点きやすいうえにダメージが大きい。2人はこれまでで最も強いダメージを受けた。その炎を受けて、マルコスの体に火が点いた。マルコスは慌てて、火を消そうとした。だが、火は消えなかった。


 2人はニーズヘッグの攻撃に苦戦を強いられた。


「食らえ!」


 サラは激しい炎を吐いた。ニーズヘッグの体に火をつけることができなかったが、大きなダメージを与えることができた。


「とどめだ!」


 マルコスは何度も鋭い爪でひっかいた。ニーズヘッグは大きなうめき声を上げ、地面に倒れた。2人は何とかニーズヘッグを倒すことができた。ニーズヘッグは驚いた。相手があまりにも強かったからだ。


 死ぬ間際、ニーズヘッグは言った。


「おのれ、よくもやったな。だが、心配はいらぬ。ほかの仲間が、父なる創造神王神龍様の思いを受け継ぐはず。そして、われらの理想の世界が創造されるだろう」


 ニーズヘッグは目を閉じ、息絶えた。




 それを偶然見ていたワイバーンたちは驚いた。


「あいつら、強い。今すぐ犬神様に報告だ」

「ひとまずここは退散するぞ!」


 ワイバーンたちは大急ぎで逃げた。


「ふぅ、助かった。あの人たち、何者?魔界統一同盟って、何? 父なる創造神王神龍様の思いを受け継ぐ?ますます王神龍ってやつが気になるわね。我らの世界が創造さっる? 人間を捕虜するなんて、ひどい! かわいそう! 何としても彼らを止めないと、人間がかわいそう。それに、我々の世界って、何? なんだか、怖い」


 サラはため息をついた。今さっきのニーズヘッグとの戦いで疲れていた。


「僕もそう思う。早く止めないと」


 サラは決意した。このまま放っておくと、人間が滅びてしまう。人間と魔族の共存が続くように、一刻も早く王神龍を倒して、人間の滅亡を阻止しよう。


「それにしても、犬神様って、誰?」


 マルコスは思った。


「さぁ?初めて聞いた」


 家に隠れていた人間が出てきた。人間は辺りを見渡した。また彼らが出てくると思った。


 丸坊主の少年が言った。彼らの両親と祖母は、ワイバーンに連れ去られた。


「もう大丈夫かな?」

「もう大丈夫みたいだ」

「また、あいつらが来ないかな?」

「どうして僕だけ残したのかな?」

「お父さんが連れていかれちゃったよー」

「大丈夫? きっとお父さんは元気にしてるよ。心配しないで」

「あのワイバーンは、人間を捕まえて何をしようというのかね」

「どうして魔族は襲われないのかな?」

「人間は何も悪くないのに、どうして?」

「お母さん、どこに行ったの?」


 それを見て、サラは行方不明になった母のことを思い出した。


「この村の奥には、誰も知らない何かがある。だが、そこに行った人はいない。そこに行ったら、生きて帰れない」


 サラは空を見た。気が付くと、もう夕方だった。サラは夕焼け空を見上げた。


「もう夕方だわ。おうちに帰らなくちゃ」

「うん、帰ろう」


 2人はアインガーデビレッジを後にして、ハズタウンに帰ることにした。

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