第3話 異変(1)
林道を抜けると、田園地帯に入った。2人はようやくアインガーデビレッジに着いた。この村は豊かな自然に恵まれていて、中心部は川の渓谷沿いにある。
その他の集落は農村で、自然豊かな山村だ。中心部には土産物屋や食堂が軒を連ね、観光客がお土産を買い求める。川の源流付近には山があり、その山は人気のハイキングコースだ。週末になると登山客が多数訪れ、そのため、道路は多くの車が行き交う。特に、大型連休になると、渋滞があちこちで発生する。
またこの山には、忘れられた神殿があると言われている。そこには巨大な何かが潜んでいるという噂があった。だが、その神殿を見た人はいないという。そこに行ったら二度と帰ってくることができないと言われている。地元の人も、その神殿を知る人は少なかった。ある人は、神隠しだと言い、ある人は、聖域だという。
だが今日のアインガーデビレッジは何かがおかしかった。見張りの人があちこちにいる。見張りの人は辺りを見渡し、何かを探しているようだ。みんな魔族で、ワイバーンという、サソリのような尻尾を持ち、ドラゴンよりも大きな翼をもつ、前足のないドラゴンに変身していた。わずかな人影がいても、それは見張りの人らしい。見張りの人は民家に入り、何かを探していた。事件が起こったのか? 死体が発見されたのか? マルコスは思った。
「あの人たち、誰だろう」
サラは首をかしげた。
「わかんない」
マルコスも首をかしげた。
「あのワイバーン、何をしているんだろう?」
サラはワイバーンを指さした。
「さぁ」
マルコスは首をかしげた。
サラは辺りを見渡した。週末はにぎやかなはずの村の中心部の人影がまばらだ。いつもだったら多くの観光客が土産物屋に集まり、お土産を買いに来る。食堂には行列ができる。それにもかかわらず今日は土産物屋に人がいない。食堂に誰も並んでいない。誰も食堂で食べていない。
「誰もいない。どうしちゃったんだろう?」
サラは嫌な予感がした。先日、母が行方不明になったからだ。
「まさか、連れ去られた?」
「そうかもしれない」
「ここにも悪の手が伸びているに違いない」
マルコスは拳を握り締めた。
「待って! そうとは限らないわ」
サラはマルコスの手を握った。
突然、見張りと思われる3匹のワイバーンがやってきた。サラはびくっとした。連れ去られるかもしれないと思った。
「ちょっとちょっと、君たち、一つ聞きたいことがあるんだけど」
見張りのワイバーンが問いかけた。
2人は驚いた。何が起こったんだろうと思った。そのワイバーンは目つきがまるで今さっき襲い掛かってきた魔獣のようだったが、口調は優しそうだった。サラは安心した。連れ去られる不安がなくなったからだ。
「どなたですか? 何、どうしたの?」
サラは首をかしげた。
見張りのワイバーンの横にいたもう1匹のワイバーンは言った。そのワイバーンはとても怖い声だった。
「我々は魔界統一同盟だ。君たち、人間か? 魔族だったら、魔獣の変身してみろ。さもないと、重労働させるぞ」
2人は驚いた。どうして魔獣に変身しなければならないのか? この村で何があったのか? 理由もわからぬまま、仕方なく、2人は魔獣に変身した。ワイバーンは2人が魔族であると確認した。
変身するのを見たワイバーンは言った。急に優しそうな声になっていた。
「よし、魔族だな。自由に行動してもいいぞ。なんで固くなってんだよ。おじさんは何にも悪い人じゃないよ。そんなに硬くならないで。笑ってよ」
ワイバーンは立ち去って、民家に入り、何かを探し始めた。2人はワイバーンに続いて民家に入っていく。サラは、どうして変身しなければならないのか、ワイバーンに聞きたかった。
2人は民家に入った。その中には何人かのワイバーンがいる。どのワイバーンも、何かを探しているようだ。部屋の中に入り、ベッドや机、椅子の下を調べ、冷蔵庫のドアを開けている。
マルコスは、冷蔵庫の中身を確認していたワイバーンに聞いた。
「どうして変身しなければならないんですか?」
「人間と魔族を区別するためだ」
「どうして人間と魔族を区別するの?」
するとワイバーンは、その理由を話した。
「君たち、わからないのか?これは神の生まれ変わりにして、父なる創造神王神龍様の命令だ。父なる創造神王神龍様は、この世界に平和をもたらすための存在として、神に召されたお方だ。この世界の平和のために、人間を1人残らず捕虜しなければならない」
「それじゃあ、今さっき家に入って探していたのは、人間ですか?」
「ああ、確かに人間を探しているんだ。捕虜して、更生させるんだ」
「なんでそんなことをするの? 人間は優しいわ」
サラはワイバーンの答えに対し、強い口調で反論した。
するとワイバーンは表情を変え、強い口調で言った。その顔は、怒りに満ちているようだ。
「そんなことはない。人間はこの世界を破壊する存在。この美しい世界を守るためには、人間を捕虜し、更生しなければならない。」
「そんなひどいことをしないで! かわいそう! 捕虜するほどではないわ! ちゃんと指導すれば、更生するはず! だから、捕虜なんてしないで!」
サラは再び反論した。人間を魔族が共存する世界が理想だ。ほとんどの魔族も、人間もどう考えているだろう。サラは彼らに訴えたかった。
突然、その近くにいた見張りのワイバーンが近寄ってきた。そのワイバーンは恐ろしい形相をしていた。サラは、また戦わなければならないと思った。
「お前ら、神龍教の思想に反発するのか? ならば、殺してやる!」
3匹のワイバーンが襲い掛かってきた。すると、一緒にいたワイバーンも襲い掛かってきた。
「やっぱり襲い掛かってきたか」
襲い掛かってくるワイバーンを見て、マルコスは拳を握り締めた。
「やってやろうじゃないの」
やる気満々に、サラは言った。2人は魔獣に変身して、攻撃を開始した。
「食らえ!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。ワイバーンはひっかかれた左腕を押さえた。
「覚悟しなさい!」
サラは炎を吐いた。ワイバーンは倒れた。
ワイバーンは尻尾の先の毒針を刺してきた。
「いてっ・・・」
マルコスは傷口を押さえた。マルコスは毒に侵された。毒を食らうと、時間が経つにつれて、体力が落ち、放っておくと死に至る。
「マルコス、この毒消し草を使って」
サラはあらかじめ買っていた毒消し草を使い、マルコスの体の中の毒を消した。
「ありがとう」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。だが、びくともしなかった。ワイバーンは今までの敵と比べて耐久力があり、なかなか倒れたなかった。
「覚悟しなさい!」
サラは炎を吐いた。ワイバーンの体に火は付かなかったものの、ワイバーンはかなり痛がっていた。その時サラは、これなら勝てるかもしれないと思った。
「神龍教の素晴らしさを教えてやる!」
ワイバーンはサラに向かって炎を吐いた。だがサラはあまりダメージを受けなかった。サラのようなドラゴン族は火に強かったからだ。
「食らえ!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。1匹のワイバーンが悲鳴を上げ、倒れた。
「この野郎!」
サラは炎を吐いた。ワイバーンは熱がった。
「殺してやる!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。
ワイバーンは鋭い爪でサラに噛みついた。サラは少し痛がった。
「許さないわ!」
そう言って、サラは炎を吐いて反撃した。ワイバーンの体に火が点いた。体に火が点いたことに気づき、ワイバーンは慌てた。
「とどめだ!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。最後の1匹が倒れた。
2人は何とか倒すことができた。サラは肩を落とした。
「ふぅ、助かった。あの魔獣たち、何者? 人間を捕まえるなんて、私、かわいそうだと思う。なんでそんなことをするの? そんなことして、平和のために役立つの?やっぱり、人間と魔族が仲良く暮らす世界が平和だと感じるわ」
「僕もそう思う」
サラの言葉に、マルコスも同感だった。
サラは思った。ひょっとして、今さっき襲ってきた魔獣は、彼らの味方なのか? 魔界統一同盟は、どうしてできたのか? 彼らが崇めている、神龍教とは? 神の生まれ変わり、王神龍とは、いったい何者なのか? 王神龍は、この世界に何をもたらすのか? 良いことか? それとも悪いことか? これから世界はどうなるのだろう。捕まった人間はどうなってしまうのだろう。劣悪な環境の中で強制労働させられるのでは? サラは少しずつ世界の異変を感じ始めた。そして、人間の未来について考えた。
だが突然、近くにいたワイバーンが次々と襲い掛かってきた。ワイバーンはとても怖い顔をしていた。これほど多くのワイバーンが襲い掛かってくると思っていなかった。
サラは少し焦っていた。これほど多くのワイバーンが襲い掛かってくると思ってなかったからだ。
「ああ大変」
次々とワイバーンが襲い掛かってくるのを見てサラは焦っていた。
「さぁ、戦おう!」
マルコスはやる気満々だった。
「えいっ!」
サラは炎を吐いた。ワイバーンの体に火が点いた。
「これでも食らえ!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。
「うっ・・・」
ワイバーンはマルコスに噛みついた。マルコスは痛がった。
「覚悟しなさい!」
サラは再び炎を吐いた。ワイバーンが倒れた。
「この野郎!」
マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。
ワイバーンはさらに毒針を突き刺した。
「いてっ・・・」
サラは痛がった。だがサラは毒を食らわなかった。ドラゴン族は魔獣の姿だと毒が全く効かなかった。
「食らえ!」
サラは鋭い爪でひっかいた。
「許さねぇ!」
マルコスはワイバーンを殴った。ワイバーンが倒れた。
ワイバーンはサラに噛みついた。
「いてっ・・・」
サラは悲鳴を上げた。
「人間を返せ!」
マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。
「とどめだ!」
サラは激しい炎を吐いた。サラの強烈な炎を食らったワイバーンは倒れた。
サラやマルコスは少しずつ先頭に慣れてきて、前よりも簡単にワイバーンを倒すことができた。毒針を指す攻撃にも慣れてきて、毒に侵されることも最初と比べて少なくなってきた。2人は少しずつ自信をつけてきた。
ところが、再びワイバーンが襲い掛かってきた。戦っていたワイバーンが助けを求め、それを聞きつけた仲間がやってきたからだ。
「どうしよう」
サラは悩んでいた。再びワイバーンが襲い掛かってきたからだ。
「仕方がない、全員片付けて、王神龍に会いに行こうぜ! そして、王神龍をやっつけようぜ!」
マルコスは強気だった。彼らを連れ去るように命令した王神龍が許せなかった。
「覚悟しなさい!」
サラは叫んだ。2人は鋭い爪でひっかいた。強力な魔法で攻撃しなかったのは、彼らの親分が襲い掛かってきた時のことを考えて、魔力を節約するためだ。
「終わりだ。」
ワイバーンは魔王でサラの足元に火柱を起こした。サラは驚いた。だが、火に強いドラゴン族のサラはあまり痛がらなかった。
「これでも食らえ!」
マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。
「くそっ・・・」
ワイバーンは倒れた。
「とどめだ!」
サラは鋭い爪でひっかいた。もう1匹のワイバーンが倒れた。
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