第2話 サラの旅立ち(2)
サラは自分の部屋に入り、財布を持ってきた。部屋を出る前、サラは戸締りを確認した。留守にしている間、空き巣にあうかもしれない。ここ最近、空き巣が多く、どの家も警戒していた。だが、空き巣は全く減らなかった。高度なテクニックを使ってくるからだ。
しばらくして、サラは2階から降りてきた。サラは、今から旅行に行くというのに、悲しそうな表情をしていた。
「サラ、いつまで落ち込んでいる。さあ、行こう」
マルコスは楽しそうな表情だった。その明るさで、サラを立ち直らせようとしていた。
「うん」
サラはうなずいた。それでもサラは、母がいなくなったことから立ち直ることができなかった。マルコスはまた心配そうな顔をした。
「やっぱりだめか」
そう言ってマルコスは空を見上げた。外は雲一つない快晴だ。昨日の大雨がまるで嘘のようだ。マルコスは空を見上げて、喜んだ。絶好の行楽日和だからだ。さらに胸が高鳴った。
「やったー、快晴だ。絶好の行楽日和だ」
マルコスは両腕を上げた。マルコスは快晴で嬉しかった。昨日は大雨でとても退屈だったからだ。
「そうだね」
サラは寂しそうな声で答えた。サラはまだ落ち込んでいた。サラは母がいなくなった悲しみから立ち直れずにいた。マルコスはそんなサラを心配そうに見ていた。
「サラ、そんな落ち込んだ顔をしていたら、毎日が楽しくないぞ。最近元気がなさそうだから、みんな心配していたぞ。早く元気なサラに戻って、一緒に遊びたいな。きっとみんなもそう思っているよ」
マルコスはサラを引っ張った。早く出かけたかった。
「うん」
サラはまだ落ち込んでいた。
「アインガーデビレッジに行って、何をしたい?」
「まだ何も決めていない」
マルコスは、サラの肩に手をかけた。
「早く考えてよ。いつまでも下を向くな。もっと明るく話せよ」
「うん」
サラは落ち込んでいた。声が小さかった。
サラは玄関を施錠し、マルコスとともにアインガーデビレッジに向かった。サラはその時知らなかった。この先で起こる出来事が、自分の人生を変えることを。
2人はハズタウンを出発し、隣のアインガーデビレッジまで歩いていた。サラはすっかり泣き止んだ。サラはマルコスと手をつないで明るい表情で田園地帯を歩いていた。アインガーデビレッジまでは田園地帯の先のうっそうとした林道を歩くことになる。だがそこは、とても危険なところだ。なぜならば、1週間前から、林道を歩いていると凶悪な魔獣に襲われて、命を落とす人間や魔族がいるという。昨日も、この林道で殺人事件があったという。2人は警戒していた。
その時、巨大な飛空艇がハズタウンの上空を飛んでいった。その飛空艇はステンレス製で、車体の側面には白い龍が描かれていた。側面をはじめ、至る所に大小さまざまな砲台が取り付けられていた。
「何あれ!」
サラは空を見上げた。マルコスも大きな影に気が付いた。マルコスは驚いた。
「でっかい飛空艇だなぁ。どこのものだろう」
「乗ってみたいね」
サラは笑顔を見せた。
「そうだね」
「いつか、あの飛空艇に乗って、世界を旅したいね」
「うん、それより、大人になったら、サラの背中に乗って世界を旅したいよ」
「ありがとう」
サラは背中からドラゴンの羽を見せた。でも2人は思った。平和な世界でそうしてこんなのが飛ぶんだろう? 偵察だろうか? 2人は首をかしげた。
2人は再び前を見て歩き出した。田園地帯はとてものどかだ。とても平和な様子だ。最近物騒な事件が多発しているにもかかわらず、何も知らないかのようだ。自分には関係ないことだと思っているようだ。だが、彼らはまだ知らなかった。世界が変革の時を迎えようとしていることを。そのために魔族と人間が離れ離れになることを。
田園地帯を抜け、2人は林道に入った。頻繁に見渡しながら、不審者に注意して、恐る恐る歩いていた。ひょっとしたら凶悪犯が襲い掛かってくるかもしれない。昨日も先生が言っていた。知らない人が襲い掛かってきたら、大声で叫び、助けを呼びなさい。しつこいように何度も言われた。2人は先生のことをしっかりと覚えていた。
林道はとても賑やかだった。雑木林からはセミの鳴き声がする。その中で遊ぶ子供たちの声が聞こえる。子供たちは楽しそうに昆虫採集をしていた。非常に穏やかな雰囲気だ。本当にこの辺りで凶悪な魔獣が人間や魔族に襲い掛かり、殺そうとするかと思うぐらいだ。
「静かだわ。こんなに静かだと、悪いのが出てきそうにないわね」
「ほんとほんと。安心して歩けるよ」
いつの間にか、2人は鼻歌を歌っていた。悪い奴が全然出てこないので、安心していた。
突然、魔獣が襲い掛かってきた。3匹の黒いドラゴンだ。そのドラゴンはまだ子供らしく、体が小さく、まだ空を飛べないようだ。ドラゴンはとても生き物とは思えない形相だ。襲い掛かり、殺そうとしているようだ。
マルコスは驚いた。
「うわっ。何だ?」
「殺そうとしているのかしら?」
サラは少し戸惑っていた。出てくると思ってなかった。
腕をまくり、マルコスは言った。
「じゃあ、やってやろうじゃないか!」
「うん」
サラは天を指した。マルコスはうずくまった。2人は魔獣のオーラを放った。サラの顔が徐々に恐竜のようになり始め、背中からはコウモリのような羽が生えてきた。尻からは尻尾が伸び、手足はまるで恐竜のように変化した。サラはドラゴンに変身した。
マルコスの体から茶色い毛が生え始め、顔は徐々に狼に変化し始めた。尻からは短い尻尾が伸び、手足には肉球ができた。マルコスは狼男に変身した。魔獣の姿になると、人間以上の力を出せるようになる。
「覚悟しなさい!」
サラは炎を吐き、鋭い爪でひっかいた。ドラゴンは悲鳴を上げて痛がった。
「負けねぇぞ!」
マルコスは叫び、鋭い爪でひっかいた。1匹のドラゴンが倒れた。
「ガオー!」
残りのドラゴンはひっかき、火を吐いた。ひっかき攻撃はうまくいったが、そんなに強くない。火を吐こうとしても、普通のドラゴンみたいに火を吐けない。
「とどめだ!」
サラは鋭い爪でひっかいた。サラの攻撃を受けたドラゴンは倒れた。
最後に残ったドラゴンは突進してきた。しかし2人は、そのような弱い攻撃では、全くびくともしない。
「食らえ!」
マルコスは叫び、鋭い爪でひっかいた。最後に残ったドラゴンは一撃で倒れた。2人は難なく倒すことができた。
「あのドラゴン、どうして襲ってきたのかな?」
サラは疑問に思った。人間と魔族は友好的な関係にあるはずだ。なのに、どうして人を襲うのかな? 何か恨みがあるのかな? それとも、誰かに洗脳されているのかな? もし洗脳されているとしたら、誰が洗脳しているのかな?
サラは、今起こっている変なことに何か関係があると思った。子供たちが帰ってきて、変な呪文を唱えている。子供たちが次々と姿を消している。それらの事件は、魔族の氾濫に何か関係があるのでは?
「あのドラゴン、すごい形相をしていたぞ。まるで誰かに洗脳されているかのようだ」
マルコスも襲い掛かってきたドラゴンを見て疑問に思っていた。誰かが彼らを操っているに違いない。それはいったい誰だろう。最近起こっている誘拐事件とは関係ないと思うが、何か不吉だ。マルコスはそう思った。
「ひょっとして、世界各地で起こっている誘拐事件と関係があるんじゃないかな?」
マルコスは何かを考えているような表情だった。
「関連がありそうだ」
「何か怪しいわね」
サラは首をかしげた。ここ最近、魔獣が人間に襲い掛かり、殺しているニュースを耳にする。とても信じがたいことだ。人間と魔族は友好な関係にある。なのに、どうして?サラはこの世界に異変が起こっているのを感じた。
2人は再び歩き出した。雑木林は、とても穏やかだ。だが、2人は落ち着きがなかった。魔獣が見えないところに隠れていて、襲い掛かってくるかもしれないからだ。
やがて平原に差し掛かった。この先がアインガーデビレッジだ。あと少しだ。アインガーデビレッジの民家が見えてきた。
突然、2人の目の前に2匹の蛇が現れた。その蛇は目が1つだ。蛇は今にも2人に襲い掛かろうとしていた。
「また?」
マルコスは強気だった。
「何度でもやってやろうじゃないか!」
サラは腕をまくった。
「覚悟しなさい!」
2人は再び魔獣に変身した。蛇は2人が身構える前に襲い掛かってきた。蛇はマルコスに噛みついた。
「いてっ!」
マルコスは噛まれた右腕を押さえた。マルコスは毒を食らったと思った。
「マルコス、大丈夫?毒食らってない?」
「大丈夫みたい」
マルコスは笑顔を見せた。毒は食らわなかったみたいだ。その蛇は毒を持っていなかった。
「よかった」
サラはほっとした。
「食らえ!」
サラは炎を吐いた。蛇の体に火が付いた。蛇は驚いた。体に火の付いた蛇は驚き、何もできなかった。
「よくもやったな!」
マルコスは別の蛇を鋭い爪でひっかいた。ひっかかれた蛇は倒れた。
「これでも食らえ!」
サラは再び炎を吐いた。体に火の付いた蛇が倒れた。
「覚悟しろ!」
マルコスは残りの1匹を鋭い爪でひっかいた。残りの1匹が倒れた。2人は2匹を難なく倒した。
「どうしてこうなったのかしら?」
サラは首をかしげた。
「わかんない」
マルコスはため息をついた。
だが、程なくして、2匹のゴブリンが襲い掛かってきた。彼らは剣を持っていた。
マルコスは腕をまくり上げた。
「かかってこい!」
サラは驚いた。
「今度はゴブリンよ!」
「食らえ!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。ゴブリンはやや痛がった。
「覚悟しなさい!」
サラは炎を吐いた。ゴブリンは倒れた。
「おりゃあ!」
残ったゴブリンは右手に持っていた剣でマルコスを斬りつけた。
「うっ・・・」
マルコスは傷口を押さえた。
「よくもやったな!」
マルコスは火を帯びた爪でひっかいた。ゴブリンは傷口を押さえ、痛がった。ゴブリンの体に火が付いた。
「とどめだ!」
サラは炎を吐いた。ゴブリンは倒れた。
「また襲い掛かってきたわね」
サラは腕を組んで考えた。
「やっぱり、この世界で異変が起こっているんだろうか?」
「人間が連れ去られる事件と関係しているのかな?」
「わからないけど、そうかもしれないな」
「とにかく、行きましょ」
「うん」
2人は再びアインガーデビレッジに向かった。
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