第6話 冒険の果てに(1)
3人は話題の教師がいる学校の前にやってきた。その学校は小高い丘の頂上にあって、そこからは街や海を見渡すことができる。
3人は正門から入ろうとした。だが、夏休みだからか、閉まっている。隣の守衛室には、守衛がいるはずだが、今日はいなかった。
「閉まってる」
サラは門を握り、軽くするった。しかし門は開かなかった。
「夏休みだもん」
「他に出入りするところないかな?勉強会をやっているなら、どこかが開いているはずなんだけど」
サムは冷静だった。勉強会をやっているから、教師や生徒が出入りするために、どこか門を開けているはずだと思っていた。
3人は校舎の周りを歩いて出入り口を探すことにした。
しばらく歩くと、開いている門を見つけた。ここから教師や生徒は入ったみたいだ。
「ここだ」
サムは開いている門を指さした。
「入っていいの?」
サラは聞いた。無断で他の学校には行ってはいけないと思っていた。
「大丈夫だろ?」
サムは強気だ。
3人は学校に入った。廊下には誰もいなかった。ただ、上の階から声が聞こえる。どうやら上の階で勉強会が行われているようだ。
「上の階から声が聞こえる。勉強会かな?」
サラは小声だった。勝手に入ったので誰かに見つかると思ったからだ。他の学校の生徒が無断で入ってはいけない。でも教師の秘密の突き止めなければ。
「そうだろう」
サムも上の階でやっていると確信していた。
「まず、職員室に行こう。あの先生と会ってみよう」
「うん」
3人は職員室に入った。夏休みだからだろうか。用務員以外は誰もいる気配がない。室内の電気が消されている。いつもだったらかかっているはずのエアコンが、かかっていない。そのため、とても蒸し暑い。3人は持っていたハンカチで汗をぬぐった。
そこに、1人の男が入ってきた。その男は半そでにジーパン姿だ。ひょっとして、話題の教師? そう思うとサラは、とても緊張した。
「何か用か? 君、この学校の生徒じゃないな。だったら、さっさと帰ることだな。じゃないと、警察を呼ぶぞ」
男はすぐに職員室を出ていった。男は冷静な表情だ。何か悪いことを企んでいるような顔だ。
「あの人・・・」
サラは何かを感じた。
「私、感じたの。あの人、悪い人よ。何か悪いことをやってるはず。それを証明するまで、私は帰らないわ」
サラは強気だった。サラは人間の悪を見抜く力がとても鋭かった。それは、他のドラゴン族では見られないことだ。担任の教師もそのことに気づいていた。生徒も気づいていた。これもサラが友達が多い理由だ。
「じゃあ、俺も付き合うよ。俺がサラを守ってみせる」
マルコスの目は真剣だった。
「僕も。サラは大切な友達だから」
サムもサラについていこうと決意した。
3人は教師を尾行し始めた。教師は上の階に向かうようだ。
「僕の体の中に隠れて。そうすれば見えないから」
サムはゴーストに変身して、2人を体の中に隠した。体の中に隠れることで、外からは見えないようになるからだ。
「ありがとう」
3人は廊下を静かに歩いていた。とても静かだ。電気は消されていて、暗かった。
突然、たまたま通りかかった生徒が魔獣に変身して襲い掛かってきた。透明になっているため見えないはずなのに、彼らには見えるかのようだ。3人は、透明になったのにどうしてと思った。最初3人は、彼らが野蛮な魔獣だと思っていなかった。普通の優しい子供だと思っていた。サラとマルコスはサムの体から飛び出し、魔獣に変身して襲い掛かった。
「くそっ…それでも襲い掛かってくるとは」
サムは悔しげな表情だった。
「やっつけましょ」
サラは強気だった。
「かかってこい!」
サムも強気だった。
「うん」
マルコスは腕をまくり上げた。
「炎の力を!」
サムは右手を指し、火柱を起こした。
「食らえ!」
マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。
「覚悟しなさい!」
サラは炎の息を吐いた。しかし魔獣は倒れなかった。耐久力が高かった。
「水の力を!」
魔獣は魔法で火柱を起こした。3人は大きなダメージを受けた。
「大地の怒りを!」
サムは大地を指し、大きな地響きを起こした。
「覚悟しろ!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。
「星の怒りを!」
サムは天を指した。すると、無数の流れ星が降ってきた。敵は大きなダメージを受けた。
「天の怒りを!」
サラは魔法で雷を落とした。敵は倒れた。
「なんで見えるのかな?」
サラはいきなり戦うことになって驚いていた。
「何か不思議な力を持っているに違いない」
やっぱりあの教師には、何か秘密があるのでは?マルコスは改めて思った。
「マルコス、やっぱりこの学校、先生ともども怪しいわ」
サラは強気だった。絶対に秘密を突き止めてやると思っていた。
「うん、僕もそう思う」
マルコスも怪しいと感じ始めていた。
「あの先生がますます怪しく見えてきた」
「絶対に真相を突き止めてやる」
マルコスは拳を握り締めた。
4人は階段を上がった。と、その上からまたしても敵が襲い掛かってきた。
「また出た!」
サムは驚いた。
「しつこいな。」
マルコスはあきれていた。
「星の怒りを!」
サムは大量の流れ星を落とした。敵は痛がった。
「食らえ!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。
「ガオー!」
敵はサラに向かって炎を吐いた。しかしサラには全く効かなかった。
「天の怒りを!」
サラは雷を落とした。敵は倒れた。
「ふぅ・・・」
サムはため息をついた。突然襲い掛かってくる子供たちにうんざりしていた。
「きっと、教師が操っているんだ」
「私もそう思う」
サラは何としても彼らを元に戻さなければと思った。
程なくして、再び敵が襲い掛かってきた。
「また襲い掛かってきた」
マルコスは驚いた。今度は2体だった。
「大地の力を!」
サムは大きな地響きを起こした。
「天の怒りを!」
サラは雷を落とした。雷を浴びた敵はしびれた。
「覚悟しろ!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。敵は倒れた。敵は何をすることもできなかった。
「はぁ・・・」
マルコスはため息を吐いた。ひっきりなしに敵が襲い掛かてくるからだ。
「この学校、どうなってんだ?」
マルコスは首をかしげた。
「この先に何があるんだろう」
「行こう!」
サラは強気だった。
3人は3階に向かって歩き出した。敵が襲い掛かってくる時以外は廊下は静かだった。
3人は3階にやってきた。声は3階から聞こえてくる。どうやら勉強会は3階でやっているみたいだ。
突然、再び魔獣が襲い掛かってきた。
「ここでも襲い掛かってきた!」
マルコスは驚いた。
「炎の力を!」
サムは魔法で火柱を起こした。敵の体に火が点いた。
「食らえ!」
マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。敵は熱がった。
「許さないわよ!」
サラは激しい炎の息を吹きかけた。
「天の怒りを!」
敵は魔法で雷を落とした。
「炎の力を!」
サムは再び火柱を起こした。
「覚悟しろ!」
サラは鋭い爪でひっかいた。
「とどめだ!」
マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。敵は倒れた。
「ふぅ・・・」
サラはため息をついた。だが、間もなくして、魔物が襲い掛かってきた。
「ひっきりなしだな」
サムは驚いた。
「やってやろうじゃん」
マルコスは腕をまくり上げた。
「炎の力を!」
サムは魔法で火柱を起こした。体に火は付かなかったものの、効きはいいようだ。
「食らえ!」
マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。
「許さないわよ!」
サラは炎を吐いた。
「グルルル・・・」
魔獣は炎を吐いた。マルコスの体に火が点いた。
「炎の力を!」
サムは魔法で火柱を起こした。魔物は倒れた。
「しつこいな」
マルコスはあきれていた。
「なんだか不気味な声が聞こえないか?」
その時、サムは何かの声に気づいた。とても不気味な声だった。
「ほんとだ」
「何だろう」
「あの教室の方から聞こえてくる」
4人は勉強会をやっている教室の前にやってきた。教室の前の廊下には誰もいない。聞こえるのは勉強会の教師や生徒の声だけだ。
「ここだ」
3人は教室をのぞき見した。そこには、あの教師の他に、白いドラゴンの司祭がいる。
「あっ、その人、知ってる。神龍教の司祭のラファエルだ」
サムはその男のことを知っていた。
「その人、知ってるの?」
「うん。雑誌に載ってたんだ」
ラファエルは魔法で子供たちの魂を抜き取っていた。そしてその隣にいた教師が、とんでもないことをやっていた。教師は吸引器具を使って、魂の抜けた子供たちに幻草(げんそう)を吸わせて、神龍教に使えるように洗脳していた。
幻草を持つことも使うことも、法律で禁止されている。持ち込んだりした場合、死刑にされる。更に教師は、魔獣のオーラを与え、魔族にしていた。魔獣のオーラを与えて人間を魔族にするのも、法律で禁止されている。
「何あれ?」
「幻草だよ。あれ、使うことが禁止されているんだよ」
物知りなサムは答えた。
「なんであんなことを?」
「あれを吸った人は幻覚を覚えるんだ。たぶん、王神龍に使えるようにするためじゃない?」
「こんな恐ろしいことを」
マルコスは拳を握り締めていた。今すぐぶん殴りたいと思っていた。
その時、教師が廊下に目を向けた。教師は誰かが廊下にいることに気が付いた。今さっき、職員室で会ったあの3人だった。教師は捕まえようと思い、教室を出た。
3人は隣の教室をのぞいた。隠れるところがないかどうか探していた。幸いにも、隣の教室には誰もいなかった。3人は隣の教室の机の下に隠れた。
「誰もいない。ここに隠れよう」
今さっき、職員室にいた子供だということに気が付いた教師は、廊下を歩いていた。サムの中に隠れていた2人は、その様子を見ていた。教師は、秘密を知られたくないと思い、彼らを殺そうと思い、やってきた。だが、その姿は人ではなかった。3つの首を持つ犬、ケルベロスだった。
「誰だ!出てきなさい!」
教師は叫んだ。しかし誰も出てこなかった。
「やっぱりあの人、悪いことをしてたのね」
「サラはすごいな。悪い人がわかるから」
マルコスは感心した。
「ありがとう。この力、生まれつきのものなんだけど、その力、絶対に見せるなと言われてきたの。理由はわからないけど」
サラは笑顔を見せた。
「どうしよう」
マルコスは困っていた。逃げてばかりではだめだと思っていた。
「逃げてばかりじゃ話にならないわ。気づかれないように後ろから近づいて襲い掛かりましょ」
サラは強気だった。今すぐぶちのめしたいと思っていた。
「うん」
2人はサムの中に隠れながら廊下を出てきた。物音を立てずに、静かに歩いた。3人はゆっくりとケルベロスに近づいた。ケルベロスは3人に気づいていなかった。
「3、2、1、ゴー!」
「ゴー!」の合図で3人はケルベロスに襲い掛かった。
何かに気づいて、ケルベロスは振り向いた。あの3人が襲い掛かってきた。ケルベロスは先制攻撃を受けた。
「なぬっ! ここにいたとは!」
ケルベロスは驚いた。
「食らえ!」
サラは炎を吐いた。しかしケルベロスにはあまり効かなかった。
「天の怒りを!」
サムは魔法で雷を落とした。しかし全く効かなかった。ケルベロスには魔法が全く効かなかった。
「あなたが生徒たちを洗脳してることも、人間を魔獣に変えてることも、いけないことよ!」
サラは強気な表情だった。
「ちっともいけないことではない。全ては偉大なる創造神王神龍様のため。改まエデンを築くため」
ケルベロスは熱く語った。
「この野郎!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。ケルベロスは少し痛がった。
「炎の力を!」
ケルベロスは魔法で火柱を起こした。マルコスとサムは大きなダメージを受けた。今までより火柱が強かったからだ。
「食らえ!」
サラは雷を吐いた。ケルベロスは大きなダメージを受けた。どうやらケルベロスは雷が弱点みたいだ。
「ガオー!」
ケルベロスは毒の牙でマルコスに噛みついた。マルコスは毒に侵された。
「くそっ・・・」
マルコスは腕を握った。噛みつかれて痛かったからだ。
「癒しの力を!」
サラは魔法でマルコスの毒を消した。
魔法で解毒をしながらの戦いだった。時々強力な攻撃魔法を使ってくるケルベロスに苦戦した。魔力が高いうえに、どんな攻撃魔法も通用しない。
「私に勝てると思ってるのか?」
ケルベロスは毒を帯びた鋭い爪でひっかいた。
「くそっ、またやられた」
ひっかかれたマルコスはまた毒に侵された。
「大丈夫?」
サラはすぐに魔法で毒を消した。
「覚悟しなさい!」
サムは透明になってケルベロスに体当たりした。
「死ね!」
ケルベロスは毒の爪でサラをひっかいた。しかしサラは毒に侵されなかった。ドラゴンの皮膚は頑丈な上に、ドラゴン自体毒に強かった。
「そんなことで毒に侵されないわよ。覚悟しなさい!」
サラは炎を吐いた。
「さっきはよくもやったな!」
マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。
「食らえ!」
サムは透明になって体当たりした。ケルベロスはその場に倒れた。3人はケルベロスを倒した。
「うっ、よくも私を倒したな。しかしもう遅い。あと少しで、父なる創造神王神龍様の世界が完成する。私たちの理想郷が完成する。なんと素晴らしいことだ」
そう言い残し、ケルベロスは目を閉じた。
サラは焦った。魔界統一同盟が世界を征服する日が近いと感じたからだ。ケルベロスが、王神龍の世界ができるまであと少しだ、と言って死んだからだ。
突然、光とともに1人の男が現れた。その男はまるで忍者のような服を着ており、首から下をマントで覆っている。彼の頭には金色の龍の彫刻がある。サラはその男を見て、驚いた。王神龍だった。
「ふっふっふ、よくも私のしもべを倒したな」
「あなたが、王神龍?」
王神龍は鋭いまなざしで3人を見ていた。
「そうだ。私が王神龍だ。覚えておけ、やがてこの世界の最高神となる存在だ。君たちが倒した私の仲間から聞いたのだが、君たち、私を倒そうとしているようだね。だが、誠に残念なことだが、それはできない。なぜならば、私は神だからだ。神を倒すことなど、できるわけがない。諦めたまえ」
やはりその男は王神龍だった。サラは拳を強く握りしめた。サラは怒りに満ちていた。
サムは開いた口がふさがらなかった。雑誌に書かれていた通りだ。
「生意気なこと言いやがって。これでも食らえ!」
マルコスは迫真の力で王神龍に殴りかかった。だが、痛がらなかった。今度は鋭い爪でひっかいた。だが、王神龍は何も痛くないかのような表情だ。マルコスは、何かがおかしいと思った。普通だったら痛がるのに、どうして痛がらないんだろうと思った。
「お母さんを返して」
サラは炎を吐いた。だが、王神龍は痛がらなかった。全く食らっていないかのようだ。
「お前の母はまもなく私の生贄になる。愚かな人間は、私の生贄となるのだ」
王神龍は笑みを浮かべていた。
「たった1つの罪で人を殺すなんて、私、許せない! 殺してやる! 覚悟しなさい!」
サラは魔法で火柱を放った。王神龍の体は火柱に包まれた。だが、王神龍は何もなかったかのような表情だ。どうして効かないんだろう。強力な何かが王神龍にあるのでは?サラはそう思った。
マルコスは鋭い爪でひっかいた。やはり王神龍は痛がらない。
「何だ、その攻撃は?それで私を倒すことができると思うのか?」
王神龍は少し笑みを浮かべていた。
「ふざけたこと言うな!」
サラは炎を吐いた。しかし王神龍はダメージを受けない。
「ふっふっふ、いくらやっても無駄だ。まだわからぬのか。私は神だ。私は不死身だ。私を倒せやしない。」
王神龍は相変わらず笑みを浮かべていた。
「俺は神龍教の信者になんかならないからな」
サムは叫んだ。サムは魔法で火柱を起こした。しかし王神龍はダメージを受けない。
「いやでもならせてやる!」
「許さないわ!」
サラは魔法で雷を落とした。王神龍の頭上から雷が落ちてきた。だが、服も体の焼け焦げない。痛くもかゆくもない表情だ。
「ふっ、痛くもかゆくもないわ」
王神龍は自信気だった。
「この野郎!」
サムは催眠術をかけた。催眠術をかけ、悪夢を見せようと思った。だが、王神龍は眠らない。
「そんなの効かぬ!」
王神龍は叫んだ。
「食らえ!」
サラは巨大な火柱を起こした。だが、それでも倒れない。王神龍には全く効かない。
「何だその攻撃は」
王神龍は笑みを浮かべた。
3人はその後も強烈な技や魔法を使ったが、王神龍にダメージを与えることができない。王神龍は全く痛がらない。次第に3人は、どうして攻撃が効かないのだろうと思い始めてきた。だが、その理由は全くわからなかった。
「遊びはここまでだ! 食らえ!」
王神龍は少し笑みを浮かべ、持っていた杖を天に掲げた。その時、天井が光り、3人の頭上にすさまじい雷が落ちてきた。裁きの雷だった。神のみが放つと呼ばれる雷だ。最初、3人は何が起こったのかわからなかった。目の前がまぶしくなり、真っ暗になった。3人は一瞬で気を失った。その後何が起こったか、覚えていなかった。3人は王神龍の恐ろしさを知った。その力は桁外れで、とても倒せそうにない。もはや人間は滅ばなければならないのか。3人は、人間が滅びるのは避けられないことだろうと思った。
王神龍は、何事もなかったかのように消えていった。3人はその場に倒れたまま、起き上がることができなかった。
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