第15話




 わたしは何度も倒れてそれでも立ち上がってきた。だから諦めない限り何度でも甦る。




 そんな声がした。不思議な女性。

 ミリアは過去の階層から我に返る。


 先刻、食事を振る舞われたエリスの姉弟子、あのナルと言う女性の声が心に響いた。


 地下10階の辛い思い出。一瞬で闇の中に落ちていった恐怖(一瞬のことではあったが)。気がつけば2年の月日が経っていた。


 あの女性も何度も倒れたのだろうか? どう言う意味? 迷宮で死んだの? わたしと同じに。


 




 エリスは姉弟子の声を聴いた。リリスのように魂に訴えかける声。ふたつの声に悩まされるのかとうんざりもしたが、なぜナルはそんなことをするのかと思った。これは紛れもなくナルの意志で伝えている声。


 暗闇。見たこともない風景。夢を見ているの。。。



 霧がかかったような大気。朝方のような、曇った日の夕刻のような色彩が広がる。


 髪の長い。紫色のローブを羽織った、あれは姉弟子のナルだ。


 そこは、ここはどこ? わたしは夢を見ているの? わたしの夢の世界で話しかけているの?


 ナルは平然と鈍色の世界を歩く。彼女が手を前にかざすと、音が響いた。重い何かが引き摺られるような音。ナルは歩を進める。どこかへ入ったようだ。エリスはその部屋には見覚えがない。しかし、それは地下10階の石畳と壁。まだ入ったことのない部屋。ナルは詠唱を始める。転移(マロール)。




 どこ? あなたはどこに行って、そして地下10階のどこに戻ってきたの?





 生きていれば何度でもやり直せる、挑戦できる。そうよ。



 

 もう一度声が響いて、そして消えた。

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