第14話

 地下10階には昔のパーティーでも挑んだことがある。サコンやシルヴィアたちより前のパーティーで。記憶はなかったが。


 恋人を亡くしたのは地下9階だった。戦士も魔法使いも死んでパーティーは半壊状態。ミリアは前衛に立つことになった。いくつかの戦闘を切り抜けたあと、彼女の恋人でもあった戦士をそこで蘇生することが提案された。


 地上の寺院に戻るまでにパーティーは保たない。


 しかしミリアは失敗してしまった。修行が足らなかったのか運が悪かったのか。そんなことを問うている時ではなかった。また敵が来る。魔法使いが死んだために『転移(マロール)』での脱出も叶わない。


 ある提案がなされた。


 あえて地下10階に降りるのだ。


 そこには脱出口がある。



 ミリアは意を唱えなかった。

 

 疲れ切っていた。


 心が麻痺するほどの出来事が続いて、生に対する執着も消えかかっていた。それがいけなかったのか。なんらかの予兆だったのか。地下10階に降りる前の戦闘で彼女は命を落とした。


 地下10階には死体の状態で降りた。



 灰色の澱みが胸に突き上げてくるような不快な空気。それまでの階層とは異なる、まさに魔窟のようなモンスターたちの生まれいづる空間。





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