ランチタイム
「こ、これは…」
午前の授業を一通り終え、昼休みとなる。
昼休みはいいものだ。
ご飯を食べたり昼寝したり、場合によっては体育館で運動したりと各々好きな時間を過ごすことができる学生にとっては至福の時間だ。
さらに言えば、今日に限ってはまた一味違った楽しみ方ができるというもの。
いわば勝者の特権ともいえる。
「これが夢にまで見たA5ランク牛ステーキ定食プレミアムクレープ付き…なんて美味そうなんだ…」
皐月からジュルリとよだれを
わかる、わかるぞ皐月!
こんな高級食がまさか学校で食えるとは思わないもんな。
圧倒的感謝である。
「これは…中々…」
「うむ、とても美味である」
「僕こんな美味しいもの初めて食べたよ!」
「お肉が柔らかくてとっても美味しいですね〜」
「体動かした後にこれは破壊力抜群だよ!」
「おっと、鉄板の熱でメガネが曇ってしまいますね」
「こんな美味しいものが食べれるなんて…私この後死ぬのかしら…」
「あふっ、おいひいでふぅ〜」
よく見れば如月、三空、卯月、水無月、文月、葉月、神無月、師走がもう食べ始めてる。
俺も肉を切り分け、一口いただく。
「こ、これは…」
あまりの美味しさに言葉が出なかった。
自分はグルメリポーターではないのでうまく表現できないが、思わずにやけてしまいそうなほどの旨味が口の中いっぱいに広がっている。
「美味い、美味すぎる…」
皐月に至っては感動して涙を流していた。
ただその感動する気持ちもよくわかるのだ。
こんな幸せな時間をこのメンバーで過ごせるとは思わなかったし、人生何があるかわかんないね。
みんな満面の笑みでご飯にありついていた。
「「…………」」
長月と霜月の二人を除いては。
「あのー、どなたでもよろしいんですが、一口分けてもらえませんかー…」
「「「あげない」」」
霜月の言葉をバッサリ切る三空と如月と文月。
この三人は特に霜月にあたりが強い気がする。
「そもそもの話、俺十人に奢るって言ってないんだけど!?」
「俺が勝負に勝ったら十人前奢ってくれるって話だったろう」
「だからって即日で十人分頼むバカがいるかよ!?おかげで俺の財布の中身がすっからかんだよ!」
「ついでに言えば長月の財布の中身もすっからかんだけどな」
「はは…」
先ほど、皐月と霜月でポーカー勝負をしていたが霜月の不正が発覚。
買収された長月も悪事に手を染めており、連帯責任として罰ゲームを受けていた。
一応うちらが学生ということも踏まえて、この定食の値段は2000円×10人=20000円。
そりゃ霜月一人では無理があるとのことで長月もお金を出したわけである。
財布の中になんでそんな大金入っていたのかは触れないでおこう。
「いいんだ…僕はみんなの喜ぶ姿を見ることができて満足だよ…もう思い残すことはない…」
長月が壊れて変なこと言い始めた。
こいつもただ巻き込まれた一人だというのに、哀れである。
なんか見てたらいたたまれなくなってきたので、何切れかあげることにした。
「ほれ長月。さっき体育の時お願い聞いてくれたからな。やるよ」
「いいのかい睦月くん!?ありがとう、君は命の恩人だよ!」
「お、おう…」
長月の勢いに後退りしてしまう。
命の恩人とまで言われると思わなかった。
肉を受け取った長月は急いでご飯を取りに行った。
「おい睦月!俺には!」
「あるわけねえだろ。長月に渡したので俺の分はなくなったよ」
「なんでだよ!俺にもくれよ!」
「だからねえっつってんだろ!そもそも長月巻き込んだお前に当たると思ってんのか!」
霜月とギャーギャー言い合っている中、皿に目を戻すと無くなったはずの肉があった。
しかも9切れ。
「睦月には世話になってるから…」
「貴様には受け取る権利がある」
「さっき悩み聞いてくれたお礼だよ」
「お前のおかげでこの肉が食えると言っても過言ではないからな」
「私も、先程はありがとうございました」
「睦月もこれで元気いっぱいだ!」
「もらってばかりは性に合いませんからね」
「先程は、ご迷惑をおかけしました…」
「私はもう、お腹いっぱいなのですっ」
霜月を除くみんなからだった。
量が結構多いけど、みんなの好意が素直に嬉しかった。
「なんかすまないな、気を遣わせたみたいで」
「貴様は本当に…遠慮せず食え」
「…おう、ありがとう」
なんか礼をいうのも気恥ずかしくなるのだが、しっかり返さないといけない。
三空も素直じゃない、って人のこと言えないなこりゃ。
「ねぇねぇ俺の分は!?」
「「「は?なんか言った?」」」
「…いえ、なにも…」
相変わらず霜月にあたりが強い三人組だった。
そんなやりとりをしている中、長月がご飯を携えてルンルンと戻ってきた。
今日も騒がしくて平和だった。
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