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 僕達は、「派遣会社」の有る場所から、輸送用の……まぁ、早い話がドラゴンに似た巨大動物に乗せられて、空輸で「出荷先」である「ウゥスサァ」と呼ばれる地域に送られていた。

 この「地獄」の空は赤黒く、更に上空には、巨大な天体のようなモノがいくつも見える。

 どうやら、それらの天体の正体は……この「地獄」と他の世界との「門」らしい。

 そして、原理はよく判らないけど……その「門」の見た目は、その世界を外から見た姿と同じものになるらしい。つまり地球との「門」が有るなら「宇宙から見た地球」そっくりの見た目になるようだ……けど、それらしいものは見当らない。まぁ、数がハンパないので、見付けられないだけだろうけど。

 その天体……つまり他の世界との「門」……の真下を通り過ぎる度に、上から人間のような姿をした「何か」が落ちてくるが……落ちていく内に、気持ち悪い外見の芋虫みたいな姿に変っていった。

「あれ何?」

 渡辺が、輸送用の巨大動物の操縦手に聞く。

「あれは、この世界に堕ちてくる罪人どもの魂だ。お前らも、そっちの会社の奴と契約し損ねてたら、ああなってたかもな。この世界以外にも『地獄』は無数に有って、他の『地獄』では、地面から罪人の魂が生えてくるとか、罪人の魂が川になって流れてるとか、その『地獄』の支配者が次々と、罪人の魂を吐き出してるとか……昔、そんな話をお前たちみたいな他の世界から来た傭兵に聞いた事が有るけどな」

 しばらく行くと、とんでもない数の「罪人の魂」が滝のように落ちて来ていた。

 上を見ると、地球のように青く見えていた天体のあちこちが輝いたかと思うと、段々と、その輝いた部分から、赤茶けた色や、黒に近い灰色に染まっていっている。どうやら、罪人の魂の滝は、そこの「世界」が源らしい。

「凄い事になってるな……」

 今度は佐藤が呟く。

「ああ、また、どっかの世界の……『魂』を持ってる『何か』が大量絶滅したようだ。あの真下あたりでは、今は、何十年か何百年かに一度の『超特大級の収穫期』だが、その「収穫期」が終ったら、『罪人の魂』が全く獲れなくなる」

「そんな事って、良く有るのか?」

 佐藤が操縦手に聞いた。

「まぁ、毎日起きる訳じゃないが、俺ぐらいの齢の、この世界の原住の魔族なら、生まれてから十度以上は見た事が有るだろうな……。これで、あの辺りの勢力地図が書き変わる。また、デカい戦争が起きるかも知れねぇ……。まぁ、お前もウチの『会社』も忙しくなるかも知れねえな」

 体育会系魔族の勢力範囲は、この「地獄」の4箇所に分散しているらしい。

 その4箇所で最も大きいのが「帝国本国」。またの名を「ガルマーニャ」。

 残り3つは「帝国本国」の属国で、大きい順に「ベー・イョット・ペー」「ウゥスサァ」……そして一番小さくて、ちょっと特殊な「ジン・グォク」。

 なお、「ベー・イョット・ペー」と「ウゥスサァ」は、領土の面積が広いのは前者だけど、国の勢力そのものは、今は、後者の方が上らしいけど……逆転されるのも時間の問題らしい。

「あそこがお前たちの派遣先の『ウゥスサァ』だ」

「壁?」

「まるで万里の長城だな」

 上空から見ても、かなりの高さが有るのだけは判る壁が、その国を取り巻いているようだ。

 もっとも、その国の大きさは……どう少なめに見積っても、それこそ「国」と呼べるだけの面積は有るので、「壁」の長さも「万里の長城」級かも知れない。

 国の中は、溶岩らしいモノや毒々しい色の謎の液体の「川」が何本も流れ……。

「城や要塞みたいなモノは、結構有るのに、町や村は無いのか……」

「無い訳じゃない。まぁ、この世界の『町』は、特に体育会系アァラィアンの『町』は……他の世界の奴には要塞みたいに見えるらしいんでな」

 佐藤が口にした疑問に、操縦手は、そう答えた。

 やがて、僕達を乗せた獣は、どうやら、この「国」のほぼ中心に到達し……。

「あ……あれって一体……?」

 行く手には、壁より更に高い……妙に近代的な……多分、数百階建て、ひょっとしたら㎞単位の高さの……ミラーガラス張りの2つのビルと、同じ位の大きさの、とんでもない代物が有った。

 それは、頭に3本のネジ曲がった角が有るのと、尻の辺りから……尻尾……と言うには、妙に別のナニかに似てる細長いモノが、そそり立っている以外は、僕達の世界の白人の男の巨像に見えた。

 その像には、ちゃんと色が塗られていて……禿をごまかそうとしてるようにしか見えない妙な髪型の髪は金色。肌は、薄気味悪い感じのする、血の気のないピエロの顔のような白。スタイルのいい人が着れば格好良く見えるかもしれないけど、でっぷりと太ったそいつには似合っていない軍服のような服は黒。

 人間の男に似ていると言っても、顔に浮んでいる表情は……悪魔だ。

 自信たっぷりで……「男らしい」と言えない事もない気がするけど……けど、何故か、嫌らしさがにじみ出てるように見える下品な笑顔。

 妙に人間臭いから逆に嫌な感じがする「悪魔」。

 いかにもな姿の「悪魔」より「悪魔」っぽく見える「人間に化けた悪魔」。

 多分、萌香もか姉さんを自殺に追い込んだセクハラ上司も……きっと、あんな顔だったんだろう。

「あれは……この国の首都の『ザㇺネンの双塔』と、この国の事実上の最高権力者『帝国行政府特級参事官・ダァァナルゥヅ・ザㇺネン』の像だ」

 操縦手がそう答えた瞬間、壁のあちこちから巨大な火球がいくつも飛んで来て……。

「えええええ?」

「お……おい……」

「おお、こりゃ幸先がいい。また新しい戦争の火種だ。お前ら、これから稼ぎ時だぞ」

 火球が次々と命中した「二つの塔」と「悪魔の巨像」が崩れ堕ち始めた……。

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