(2)

 ボクは元の世界……早い話が地球って惑星ほしの日本って国で謎の死を遂げた後、ボクの世界のボクより年下の女の子に見える……本当の姿か知れたもんじゃないけど……何かと契約して異世界に転生する事になった。

 そして、転生した後のオリエンテーションで聞いた話では……その女の子、つまり「担当さん」は、いくつもの世界を股にかけた人材派遣業者……ただし、かなり零細業者らしい……の「社員」だそうだ。

 何かの原因で、僕が死んだのと、ほぼ時を同じくして、地球各地で、とんでもない数の死者が出たみたいで、その無数の魂を「傭兵」としてスカウトしたようだ。

 ただし、零細業者だけあってコネが無い。「大手」だったり、色んな所にコネが有ったり、それぞれの世界の地元の業者だったする「同業社(もしくは同業者)」に更に人材を派遣しているらしい。

 元の世界でも似たシステムは聞いた事が有る。

 鬱で自殺した萌香もか姉さんが、死ぬ前によく言ってた「IT業界名物・多重下請け」って奴だ。土木業界や建設業界も似たようなモノらしいけど。

「次、肉体改造だ」

 僕をスカウトした奴から、更に僕を「買った」人材派遣業の魔族は、ボクにそう言った。でも、よくよく考えたら、「改造」なんて嫌な予感しかしない。

「何をやるんですか?」

 たしかに、この「地獄」に転生した直後に、そんな事を言われた気もするけど……。

「お前の場合は、肌を焦げ茶色にするだけだ」

「はぁ?」

体育会系アァラィアンは『肌は白で、軍服や鎧は黒』って姿が基本だが、他の種族から雇い入れた傭兵には『肌を黒っぽい色にして、純粋な体育会系アァラィアンと見分けが付くようにしろ』と要求してるんでな。まぁ、肌の染色処理は、すぐに終る。体育会系アァラィアンに派遣される他の連中と一緒に順番待ちしてろ」

 とりあえずの雇い主は、そう言うと、何か呪文を唱える。

「あちっ⁉」

 次の瞬間、僕は、臍の下のあたりに痛みと熱さを感じた。

「な……なんですか、これ? 魔法の呪文? ひょ……ひょっとして……ま……まさか、淫紋って奴ですか?」

 僕の下腹部には、見た事もないけど……少なくとも文字だと判る「何か」が刻まれピンク色の光を放っていた。

「いや、個体識別の役に立つ以外には、大した魔法の効果はない。……って、お前と同じ世界から来た奴で、お前と同じような事言ったの、お前で千匹目ぐらいだぞ。大体、その淫紋って何だ?」

「えっと……つまり……その……」

「まぁ、いい。最初の2文字は体育会系アァラィアンの『国』の中でも、お前が派遣される先の略称。次の3文字は、お前がウチの所属だって事を示すモノ。残りは、お前の識別番号だ」

「は……はぁ……」

 後からすると、この時点で気付いておくべきだった。僕の「派遣先」が、どんな所かを。

 気付いたとしても状況を変える事なんて出来ないだろうけど、前もって覚悟ぐらいは決められた筈だ。

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