一文字書きの楽園

ウゴカッタン

全脳融合男女学生

「っつって?!」

頭が痛い、まあいい? 頭が痛いんじゃない? いやなんか妙にさえる。


「なんだってんだよ?」

ご飯にご案内されたようで衝動的に乗り出す毎日を、

この全寮制のアルコロジー特区で過ごしてる、

自分がどうしているのかなんて全くわかっちゃいないが、

とりあえず学校には通えてる、卒業後はアルコロジーを管理する仕事につく、

学食はいつも自動調理機械が出来たてを出してくれる。

おっと、なんで俺、女の子の横に座ってるんだっと?


「おはよう、お前様、元気かの?」


そうそう、最近はやってるんだよな、髪の色を自由に変える遊びみたいなの、オーバーウィッグって言って髪自体が記憶媒体になった女の子は自由に髪の色を変えれるから、こういう長髪ロングでもきれいなピンク髪、しかもキューティクルつやっつや。


「そ、そのお前様よ、突然、ここで始めるのかの? 御飯が冷めてしまうぞい?」

「わー、って俺なんで君の髪触ってんだろ? というか朝の四時十分からって早朝過ぎるなこれ、まだ太陽登って無くない? 君大丈夫!? 頭大丈夫!? オレ、確か頭を開かれて頭の中を、裂果した果実、そうここにある四つに上の方が裂けたフルーツみたくさ」

「そうそう、わしのもお前様のフルーツと」

「ミックスチュァー」


お互いの皿にあった果物を手に取って、上が開けたその果物の四つ割り裂果の部分をぴたっと密着させてなんだこれ、フルーツ? 新しいフルーツか?


「って待て?! 頭に栄養が足りない! 食べていい!?」

「食べよ食べよ、食べ終わらねば話にもならぬからの」


朝ごはんは皿に盛られたサンドウィッチとポテトサラダの進化系、ポタットサラダ、そんで絶対栄養食の座を揺るがないダチョレの卵焼き、日本人の証と、おいしいミックシュチュアーのフルーツ、なんかこの娘の味がする気がする。


「おいしいのーおいしいのー人間の御飯はおいしいのー」


――――――というかこの娘とても可愛くないか?


可愛いの定義ってのはあんまり定かじゃない、でも今のご時世、どんどんと可愛いが更新されていって目まぐるしい、正直アルコロジーなんて古風な箱庭型の施設に好き好んでやってくる変わり者はなかなかいない、だって公共工事が合体したインフラテクトニクス、公共事業のミルフィーユと呼ばれる十層構造の中で、いまだに国の利権問題で自由じゃないとこもあるからだ、本当はこんなアルコロジーよりこのピンク髪の娘は制服なんか着て遊ばせておくのはもったいない。


「ハムとチーズのミルフィーユはおいしいのー」

「きみさ、飛び級して卒業したらいいんじゃない?

 見たところオーバーウィッグしてるってことは、

 俺みたいな劣等三種より上の資格保有できるよね?

 わざわざアルコロジーの循環器系の官僚になるのか?」


不機嫌そうな眉間ー、でもちょっと眉がまとまったピンク色でお兄さんは大変満足ですよー。


新柄着雄途しんがらぎゆうと、お前様はさっそく口説き文句かの?」


「いや、口説いてるように聞こえたらあれだけど、俺たち巨人の胃の中にいるようなもんだし、というか始めて人の名前を検索して使う時はまずリプ飛ばさない? 生姜嵐湯ン子しょうがらしゆんこ、というか変わった名前!」


「ほーほーほー! 雄途とかいうありきたりな名前に言われたくはないの!

それでどうするのじゃ? ごちそうさましておいて、女の子をほったらかしにするほどお前様はだらしないのかの?」


「そりゃまあ、はじめて会ってから二十分? 名前を呼び捨てにしあったんだからそりゃまあ、普通考えたらそうだけど」


「――――――知っておるわ、初めてなんじゃろ?」


ピンク髪の制服の女の子に唇あてがわれてるの、なんでだろね?

あー歯を磨かずにキスするとかないわーとか思うけど、

舌入れられたら吸わずにはいられないので自然と味がする、

なんだこれ、なんだこれ!? なんだこれ!?!


「初めてがわしとなんて感謝してもらいたいくらいじゃよ」

「なに、飲ませた? 薬? ナノマシン? まて、おかしい、吐かないと!?」


 喉の奥に指を突っ込むが、吐くより前に指が震えて戻ってきた。

意識が混濁する、この高さ千メートルある都市ユニット、アルコロジーの中で、こいつとであったのは意味があるはずだとは思う、けどはじめて会ってから二十分は嘘だ、こいつとはもっと早く会ってる!


「――――――夢の続きをしてくれんかの?」


 記憶がブーストして脊椎反射で跳ねる体を抱きしめられて、このおれより小さくて柔らかい体の質感、知ってる、おれこの娘だったし、この娘は俺だったことがある、夢の中でさっき食ったフルーツみたいに頭が開けて中身がミックスチュア?


「あ、あ、あ」

「わしとお前様の時間はもっともっと! もっとじゃよ!」


 気づいたんだ、気づいたのかの?


 この町は、アルコロジーは、


「さあ、夢の続きじゃ、世界を一緒に作ろうぞ」


 ずぶずぶと抱きしめ合うと二人とも体が沈み込むみたいで、質感が柔らかさしか無くて、普段意識から外れてるはずのからだが、女の子と男の子一緒に感じられて、頭の中じゃアルコロジーをはやくもっとどんどん作ってる、君と僕、最高に、気持ちいい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一文字書きの楽園 ウゴカッタン @kak16kyou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ