11月27日(金) PM 23:50

 無為な日。仕事は早々に切り上げて、パチンコ稼働。三万以上勝った。買った金で何かを買おうと思ったけど、特に欲しいものはない。毎月服や靴を買おうと決めているけど、おしゃれして出掛けたいとこもないし、そもそもがコロナを鑑みると足が遠退く。結果的に勝っても、別の日に金を突っ込むだけなんだよな。なんか勝とうが負けようがバカらしい。飯すら食わなかった無為な日だ。


 昨日はあんなに心が動いたのに、なんでこんなに荒んでるのか? それは感動ではなくて、敗北感だったのかもしれないな。昨日に何があったかと言えば、友人の舞台を観劇に行ったんだ。


 売れない脚本家の友人が久しぶりに役者として出演すると言うので、からかいに行ってやろうと下北沢へ。


 下北沢は昔よく遊んだ街だ。高校が梅ヶ丘にあり、遊ぶ場所と言えば下北沢か渋谷。だが、社会人になったら足が遠退いていた。観劇やライヴ観賞は中野に住んでいるから、中野や高円寺、新宿で事足りる。


 だから下北沢に来たのは、約20年以上ぶりだろうか? 駅は地下化しており、街並みは昔のママの店を探した方が早い。全くもって別の真地に感じた。


「そりゃ20年以上もご無沙汰なんだ。変わるわな」


 そんな事を思いながら、歩き慣れた見知らぬ街を通り抜ける。


 迷わずに劇場へ着く。初日の会場は満員御礼。指定された席で開演を待つ。コロナ対策で換気はばっちりと言うが、キャリア1人いたらクラスターだなと思っていると暗転、無音、しばらくして足音、そして無音。徐々に明るくなる壇上に浮かび上がる人影。劇の始まりだ。


 ストーリーは、サッカーのサポーターたちの事情を描いた群像劇。コミカルさと哀愁を感じる友人らしいテイストの構成だ。中盤に差し掛かる頃、友人が登場。久しぶりに見た友人は恰幅が良くなっており、口調も間も友人そのものだった。もう1人の友人も変わらずといった感じだ。


 一時間半で閉幕。通常ならキャストとの挨拶があるが、コロナ対策で無し。そのまま駅へと向かう。そのまま帰るのも味気ないので、駅近くのパチンコ屋に入る。新台を打って、一時間位で25500円勝つがやはり虚しい。


 帰り道、物造りについて考える。何かを買おうと成そうと費やした時間も、無為に過ごした時間も同じ時間だ。俺が費やしていた時間、彼らは物作りに費やした。大学生時代にバイト先の同僚だった芸人は、今やテレビで観ない日はない売れっ子だ。全員俺より歳上だ。


 俺は何をしていたんだろう。街も人も変わり行くというのに、俺だけは変わらないどころか逆行している。


 先ほど敗北感と書いたが、ここまで綴って分かった。この感情は敗北感と呼ぶには烏滸がましい、ただの疎外感だ。何もしてないくせに、皆に置いてきぼりにされているように感じているガキじみた感情だ。そうと分かっても創作意欲も湧かず、仕事にも打ち込めない俺は、もう終わっているんだ。


 そうと分かったところで、変わらぬ明日が来る。久しぶりの出張で土日が潰れるだけだが、きっと何も変わらない。


 まぁいいや、で済ましたくないことが増えてきたな。問題はこれが口だけになっているということだ。早急に変わらないと俺は何も出来ないまま死ぬ。そしたらアイツに何も話してやれない。


 敗北感を知りたいが、そのためには必死に努力を続けないといけない。挫折も敗北もない人生なんて、何も行動していないのと同じだ。パチンコが上手いからといって、それがなんだというのだ。


 少し疲れたな。寝よう。おやすみなさい。









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