第三十四話 ルーム1のキャラバランスだと、私必然的に苦労人なんですよ。
さて、試験が終わって一週間。今日は試験結果が出る日である。
今日までの七日間、私とマイはずっと王都にいたわけだが、その間にミーヤと合流し何人か知り合いもできていた。
「おっ嬢ちゃん、お目覚めか」
「おはよう御座います、ダールさん!」
「ステラちゃん、朝食はいつもの?」
「ヨカさん!はい、そうですね」
「おはよう御座います、ステラちゃん」
「シュアさん、おはよう御座いますー」
同じ宿に泊まっていた冒険者さんのダールさん、シュアさん。若女将のヨカさん。その他に、ギルドで知り合った冒険者の先輩たちが数人いる。
「..........ステラ、朝遅い」
「いつもマイが起こしてくれるから感覚麻痺してた.....あはは.....」
そしてこれが、言わずとしれたミーヤである。
「おふぉふなっふぇほふぇん、おわっふぁはいほっふぁ(遅くなってごめん、終わったら行こっか)」
「......食べてから話して」
「もふもふごっくん。終わったら試験結果見に行こー、って」
「分かった」
もぐもぐ。もぐもぐ。もぐもぐ。
「終わった!」
「ならすぐ行く」
「もぅミーヤ、そんなに急がなくても!」
「心の方はとっくに着いている」
「うぅん.....うん」
「心が一人で寂しいから来いと言っている」
「うん....」
「だから急ぐ」
「うん......うん?分かった」
「では出発」
「れっつごー!」
「んー......よっ」
びゅごおおおお
「うぉおおお速い速い速い速い!」
「着いた」
「今のはなんだったんだろう......音速超えてたんじゃ.....」
「うるさい」
「おう辛辣☆」
それにしてもすごい人だー...。
当たり前か、国中から料理科、冒険者科、実験科、医療科、貴族科、魔法科、その他大勢の生徒たちが集まってくるわけだし.......ぎゅむっ。
「早く行くよ」
「はいはーい」
「ん。冒険者科はここ。ミーヤとステラの名前は―――――」
『ミーヤ』
『ステラ・イオリ・メデイロス』
「.....」
「やったね、ミーヤぁ」
「......うん」
無事合格である。
嬉しいとか楽しみとか驚きとか感じていたが、何よりもそれよりも.....。
「あの制服はこれで飾らなくてよし!」
「........なんのこと?」
「いやー、かくかくしかじか」
「..........あ、そう」
いやまあそうよね。そういう反応になるよね。
なにはともあれ私達が合格したことに感極まっていると。
「えーっ、皆様試験お疲れ様でした。合格、不合格はともかく、ここまでこれたことは素晴らしいことです。合格者はこれからよろしく、そして不合格者もめげずに頑張ってください。なお、合格者はこれから科目分け、部屋分けをするので、競技場に集まってください」
放送が来た。学園長さんかなー。
「さっ、ミーヤ行こー......ってミーヤ待ってぇー!」
ミーヤ、只今興奮中。
◇◇◇
「はーい、冒険者科はこちらだぞー」
冒険者科教官長さん、敬語と普段語が混ざってます。
もちろんアレンさんのことである。
「おうステラ、先日は済まなかったな。お前は.....っと、冒険者科ブロックのルーム1だ」
「りょかいでーす」
結局先に行ってしまったミーヤとはぐれて、私は列の中でも後ろの方、ミーヤは前の方となってしまった。
さってと、ミーヤと一緒だと良いけど......あと他が面倒くさい人じゃないといいけど......。まぁ、50人が10部屋に分けられるから、一緒になる確率は.....えっと.....49分の1?5分の1?どっちだっけ......?
まぁともかく、一緒になれるかどうかは分からない。あまり期待はしないでおこう。
「それにしても、広っっっっっっっろ」
広い。とっても広い。
「幸いにも冒険者科ブロックは競技場良く使うってことで一番近いし、つまりそれって宿から来るときの門に一番近いってことなんだよね」
得である。
「と、ルーム1は....一階!?ラッキー!」
一科目毎に一塔、一階ごとに部屋が一つ。
ルーム1ってことは階段の上り下り回避成功。
「え、待って私、部屋振り運良くない?」
近い、低い、これで同室の子良い子だったら完璧じゃん!
「......はい、ステラフラグ立て完了ー」
「うぉっミーヤ、びっくりした!ってミーヤもこの部屋!?まじで!?」
「っ、うるさい。それよりも部屋に関してちょっとプレッシャーなお知らせが...」
「えぇー........」
「実は.....」
「冗談じゃないわ!?私この方と一緒なんですの!?」
「........エステリーゼ王女、同室」
まっ・じっ・かっ。
「ふぇー........ちなみに他の部屋メンバーに関しては....?」
「後で説明する。とりあえず今は王女と同室という事実を.......」
「......受け止める、か.........」
「い、いえ王女様、私達は試験を通してどの方が王女様と同じ部屋でも問題なさそうかちゃんと調べました上で.....」
「この方、私のお兄様を馬鹿になさった方よ!?そんなことも覚えてないのかしら!」
「王女様、ですが、このメンバーが男女のバランスや役職を考えても最適で.....どうか、お気に召さなければ再考いたしますので......」
「そうしなさい、だって私は―――」
「エステリーゼ、落ち着いて」
「はっ!?お兄様!?」
「アルさん!?」
「あっステラちゃん。久しぶり?でもないか?一週間ぶり?っていやー、そんなに睨まないでよー。軽く箝口令敷かれてたんだから」
「まぁそれならしょうがないですけど......」
「それよりもお兄様はこの者とどの様な関係なのです!?」
「リーゼ、彼女はステラ。エステラちゃんね。僕のイカれたローブを買ってくれた子だよ」
「あれイかれてるって自覚あったんですね......私に着せといて......」
「着せといたってなんです!?あとローブって!?ずるいですわ!ずるいです!」
「リーゼ!リーゼ、王女様は可愛くなくちゃいけない。今の君は美しくないよ」
「っ........」
あぁーあ、王女様機嫌損ねちゃった。
んっとに、アルさんがいる間は良いけどさ、帰ったら散々私に悪態つくんだからいい加減にしといてよ。
(だけどね、ステラ......リーゼを叱れるのは僕しかいないんだよ)
まーそうですけど.......。
「ほら、リーゼ、スペシャルゲストもいるから....といっても一緒に住むわけだけど......」
「え?スペシャル―――」
「エステリーゼ嬢、お久しぶり」
「カルロ王子!?」
うんふふーん.......。あなざー王族.......同室.........噂の異国のやつか.....王女が恋い焦がれてるってやつ........まじか........。王女顔赤らめてるし...........どーしよまじで........。
「やっぱり再考は取りやめですわ!.....こほん、取りやめてくださいませ。これでよろしいですわ」
おぅ、王女様おしとやかーんになっとる。
「で、残り一人は...」
「ルーム1って一階かぁ!ラッキー!.....げっ、王女様!?王子様もいるしー!どどどどうしよ、あたしもしかして部屋間違えたかも......し、失礼しますっ!」
がしっ
「君の部屋は間違ってないよ」
「あああアルフレッド王子様、あたしみたいな男爵家令嬢にですね......!」
「君が逃げようとするから悪いんだよ、デヴィーナ・シャリーニ・デュッタ男爵令嬢」
デヴィーナさんというらしい。デュッタ男爵って言ったらえっと確か、
「......海に隣接していて、パルジャヴェータ王国との交易をしている辺境伯で、スパイスを使った料理で有名なところ....の、属性。直接港がある領地」
「あっそうそう」
「ケモミミちゃん良く知ってるね!そうなんだよ!」
「ケモミミと呼ぶな。あとミーヤは男」
「ごめんケモミミちゃん!」
「ミーヤはミーヤ!」
「ごめんケモミーヤちゃん!」
「混ぜるな!」
お、ミーヤのツッコミ新鮮。
「それにしてもなんですの、私に対して『げっ』とは?」
「うっ......王女様ごめんなさい.......」
「.....確かに、明らかに悪かったのはデュッタ嬢」
「まぁまぁ、王族を見たら誰でもそんなもんだよ。僕達もう慣れっこだろう、エステリーゼ嬢?」
「いや、そうかなー?僕は見つかってもあんまりびっくりされないんだけど...?」
「それはアルさんが王族って誰も知らないからですよ!?」
お馴染みのミーヤ、危険物の王女、キザすぎる王子におっちょこちょいな私と同じ男爵令嬢。
キャラ的にミーヤが真面目っていうか冷静、あと腹黒なキャラで、王女はツンデレで、王子は破天爛漫なリーダーって感じ。デュッタ男爵令嬢はおっちょこちょいだし明るいムードメーカーかな。
っていうとこのグループに不足するのが.......ツッコミキャラ.....まとめ役.......面白要素.......苦労人......苦労人.........あれこれ私、必然的に苦労人ルートじゃね?呆れてツッコんでく感じの.....自由達をまとめ上げてスケジュール管理する系の........。
どうやら波乱の一年は、避けようがないらしい。
だってまずキャラバランスもそうだけど、メンバーが王族二人とおっちょこちょいとか頼りになるのがミーヤと自分しかいない!!
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