番外編 ダンジョンに勉強に行きます!後編
「ここが最下層、ですね」
「うん。もうここで学ぶことは学んだから、あとはボス以外全員倒してから行ってもいいんだけど、どうする?」
「.........あの魔術ですか?」
「うん」
あれは、、、、、
「私達もろとも吹き飛ばされるしダンジョンが崩れるので止めてください」
「あ、うん」
「あ、、、、でも、結界張れば行けるさね」
「マフカさん!?」
「あ、いいねそれ。結界張って、と......風よ――――」
「いやいやいや!あの、結界あっても怖いですから!やめてください!」
「――――エンド!」
「おいいいいい!」
ボス?勿論、死んだけど?
あ、そういえばダンジョンの壁とかは崩壊しなかった。ダンジョン、強し。。。。
あと結界も壊れなかったから、結界強し。
結論、レインさんは怒らせてはいけない。
- その後 -
「ねぇ、ステラってもう学園に必要なものは全部揃ったわよね」
「はい、あともう少し勉強してから行きたいんですけど.....」
「じゃあさ、時間があるから王都観光に行かない?」
ん.......?
「イレネさん、急に優しくなったりして、、、死なないでください!?」
「失礼ね、私だって優しいときくらいあるわよ!」
後輩に餞別の代わりに、、、、ということらしい。
「勘違いしないでよね、、、、、、それはともかく、おすすめの店があるのよ」
「なんのお店ですか?」
「異国の装飾品が売ってるのよ」
「わぁ、素敵ですね!」
「でしょ!このパーティーの人たちは誰も分かってくれないから.......」
「あぁ.......」
カイルさんは男だし、レインさんは狂ってるし、マフカさんも男勝りなとこあるし、マイは無駄を嫌うからね。
「お気の毒です........
「そうなのよ。一度家族も連れてきたんだけど、お父様が『イレネのほうが何倍も美しい!』とか言ったもんだから、、、、」
「あぁ..........」
言いそうだわ、うん。うちの父親が言ってるところも容易に想像できる。
「お気の毒です........」
「そうなのよ.........」
うちもイレネさんも一応お助け役なお姉様達がいるから良いけど、、、、居なかったら、、、、、まぁ、うん。
「さっ、ここよ。私とステラで見てくるから、皆は市場にでも行ってて頂戴」
「「「「はぁーい」」」」
そうして重たい木彫りのドアを開けた先は―――――、
ガランガラン
「素敵............」
東方の文化がごっちゃにされたような、それでいてまとまりのある店であった。
戸を開けたら鳴るベルが、心地よい音を立てている。
「ステラはヤマトの血が混ざってるんだったわよね。ここにはヤマトの物もるはずよ。おばば様に聞いてみたら?」
「おばば様?」
「ここの店主よ。おばば様、お邪魔しております」
イレネさんが声をかけたのは、白髪のお団子に金色の目と異国の服を着た―――、
「人形?」
「ちがわい!全く近頃の者は魔術具と布塊の違いも判らん――――」
あ、魔術具なんだ。
とにかくその可愛らしい魔術具が、ここの店主らしかった。
「って、ん?魔術具が店主?」
「馬鹿言え、これは私の分体じゃ。違うところから話しておるんじゃよ」
「へぇ、そんな物が......」
「おばば様は龍だから、誰にも姿を見せないのよ」
「へぇ、龍........龍!?」
マジで!?
「しかしイレネ、お主も来おったのか。あの狂科学者は連れてきてないじゃろうな?」
「えぇ、勿論ですわ」
狂科学者って、、、、
「レインよ。一回連れてきたときに、魔術具に興味を持ってそこかしこ調べたもんだから......」
「あそこまで的確に調べ上げられるのは珍しいし良いことじゃが、さすがにいじくり回されては膿もな。あいつは気に食わん」
あぁ、狂科学者の『狂』の部分が発動して、嫌われた、と。
「やりそうですね......」
「だからレインはどうしても連れてきたくないと思って、魔術具のことを思い出さないうちにかなり離れた市場に向かわせれば、、、、と思って」
「なるほど―――――」
「イレネ、ここって魔術具があった店だよね!?」
「「「来ちゃった!?」」」
レインさんよ、こんな所で『狂』を発動させないでくれ.......。
◇◇◇
あの後必死でレインさんを追い返した私達は、少々遅れたが店内を物色していた。
「全く、今度から強力な結界でも張って儂が一々認めないと入れないシステムにしてやろうか.......」
後ろで何やらブツブツ呟いている人がいるが、気にしない。
兎も角、一時間ほど物色し続けて、私は一つ気になる物を見つけていた。
「これは、、、、これって、、、、」
そう、洗礼式のドレス――――ローブを買うときに売り払った、例のアレである。
「どうやってここに来たんだろ........」
しかし異国の商品を扱う店というだけあって、どれもお値段が高い。
イレネさんも大抵は何も買わず、見るだけで終わるのだとか。
残念なことに私もお金は持っていなかったので、今回は断念することにした。
「ありがとうございましたー」
「うむ。二度と彼奴を連れて来るなよ」
「「......はい」」
この後もイレネさんおすすめの店を数店回って、その日は王都に宿泊した。
- 帰り道のこぼれ話 -
「この前盗賊を倒したところの近くに村があるらしいんさよ。帰りははそこに行ってみようと思うんだけどどうさね?」
というマフカさんの提案により行った村。そこでは、代々伝わる七不思議話があった。
そのうちの一つは最近起こったことで、こんな話らしい。
「それはその日の夜じゃったかの。ワシや村の連中が床に就こうとしてたときのことなんじゃが。近くの森から人間が叫ぶ声が聞こえてなあ。それは言ってたんじゃよ。『うぎゃあ!魔物がぁ!』、『足が!足がぁ!』となぁ..........。ワシらは怖くて仕方がなかったんじゃが、今思うとあれは昔森で魔物に殺された冒険者たちの叫びだったのかもしれん.......。翌朝調べに行ったら、そこにはロープが四本と『報告ありがとう』と記された木札しか残っておらんかった。あれは一体、誰からの礼だったのか、、、、、そして、一晩で消えた叫び声の正体はどこに行ったのか、、、、、不思議じゃのう」
「「「「「「..........」」」」」」
「.........ちなみにそれが起こったのは何日前で?」
「二日前じゃの」
「「「「「「......................................」」」」」」
それ、私達です。
とてもそう言えるような空気では無かった。
◇◇◇
「ふー、ただいまー」
「あ、お嬢おかえりー。そういえばミーヤちゃんが遊びに来てたよ」
「えっ今!?すぐ行く」
そしてお茶部屋には、ミーヤがドレスを着て座っていた。
「...............ドレス?ミーヤ、どうしたの?」
「?ミーヤはどうもしてない。ただステラに文句を言いに来ただけ」
「文句!?ってそうじゃなくて、ドレス!ミーヤ男でしょ?」
「...........あ、確かに」
「私に怒っといて自分で忘れてる!?」
「恥ずかしいから服を着替えさせて欲しい」
えー、、、
「可愛いから駄目」
「ステラ........?」
分かった、分かったからそんな突き刺すような視線で見ないでぇー。
「セバス」
「執事用の服でも良ければ」
「それで構わない。とりあえずドレスは嫌」
「かしこまりました」
そうして着替えてきたミーヤは............
「うん、やっぱり可愛い」
「.............ステラ」
「はいすいませんでした」
だって、可愛かったんだもん。
「.....で、文句って何?」
「ミーヤを置いてダンジョンに行ったとか行かないとか」
「あぁ、今さっき帰ってきたんだよ」
「行くならミーヤも連れて行って欲しかった」
「いやだってあれは、龍の血晶内での話で―――――」
「連れて行って欲しかった」
「いやだからね?ミーヤはうちのパーティーじゃないし、それに故郷に帰ってたし―――――」
「話を聞いたら帰ってきていた」
「いや、それは駄目だよ!?.........ってそうじゃなくて、ミーヤはうちのパーティじゃないじゃん」
「もはや一員と言っていい」
「.................あのね、じゃあもうそういうのは全部認めるとして。あんまり面白く無かったよ?皆が色々ぶっ飛ばしてたから」
「具体的に」
「全員本気で魔法ぶっ放したり剣振るったりナイフ投げたりしてました」
「そこにミーヤがどーん!」
「うぅん.........ごめん?」
むしろあれに来てもらうのは申し訳ない気が、、、、
「.........学園で仲良くしてくれたら許す」
「それは勿論!」
「...........ついでにお菓子も?」
「うっ..........うぅん........」
お菓子、あったっけ....?
「セバス、今軽く食べれるような甘味って」
「料理長に聞いてみます」
「お願いねー」
数分後。
「旦那様が買ってきたお酒を使えば、今すぐ作れるとのことです」
「うん、使う」
父の酒より友の幸せである。
その夜屋敷に響いた、『お、俺の酒がぁぁぁぁあーーっ!』という雄叫びと共に、私のダンジョンプチ冒険は幕を閉じた。
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