番外編 ダンジョンに勉強に行きます!中編

というわけでダンジョンに来ました我々一行。時刻は朝の九時、場所は入ってすぐの一階層です。


「ここは全部で五階層あるわ。普通の一階層、森の二階層、罠と迷路の三階層、水中の四階層と、蟻地獄の最下層よ。まず、ここが第一階層ね。言ったとおり、なんの仕掛けもないわ。ただ道に従って魔物を倒していくだけよ」

「確か魔物は炎鼠、水蛙、土蜥蜴、風鳥、ボスは闇蜘蛛だったさよね」


闇蜘蛛以外全部、雑魚レベルね。


「じゃあ適当に進むだけで」

「うん。ただ闇蜘蛛は割と厄介だから、突っ込んでいかないでね」

「はーい」


ちなみに、水蛙は雑魚だが絵面がアレなので女子組だけでなく男子組も結構嫌がってた。気持ち悪いし、、、、、、うん。雷魔法だと殺せても体は残るしね。


◇◇◇


「このドアが、、、、」

「うん。それ開けたら、闇蜘蛛いるよー。一応、闇蜘蛛と戦うときの注意点を教えるね。

一つ、やみくもに探しても見つからない。隠密、それが彼らの固有能力だよ。

一つ、彼らは闇属性だから、光以外はダメージが弱い。といっても、種族自体がそこまで強いわけじゃないから全力攻撃すれば一瞬で死ぬかな。でも気をつけてね。

一つ、蜘蛛は.....................かなりビジュアルがやばい」

「ごくり」

「じゃあ、鳥肌通り越して鳥になりそうなくらいものすごっっっく嫌だけど中に入るさよ」


ギィ。


ドアを開けた先には―――――。


「痛っ!?我が手に宿りし魔素よ空を切らずして空で切れ!ウィンドブレード!」

「キシャァア!」

「グロっ!?」


ダメージを与えると一瞬だけ見えるようになるらしい。多分、今ので足が二本切れたのだが、その見た目の気持ち悪いこと気持ち悪いこと。


「気持ち悪いのはさっさと退治するに限るぅ!ということで、周りのやつ全部使役!一斉攻撃ぃーっ!」

「ゲロゲロ!」

「キュゥー!」

「キェー!」

「シャァアー!」

「キシャァァァアッ!?」

「「「「ぅわ、気持ち悪いのに対するステラ怖ぇえ.........」」」」


こうして、開始一時間で私達は一階を突破した。

蜘蛛?素材が金銭的に美味しいから持っていったよ。

ただし、視界には入れたくないのでレインさんのマジックバッグに入れて。


◇◇◇


「うわぁ、何これ!?」


目の前に広がる、木と、木と、木と、木と、木と、木と、木と、葉と、葉と、鳩.....うん?


「ここが森階層ね。じゃあ、私が炎魔法で索敵しながら行くから付いてきて」

「その後で僕が消火していくから、イレネは全部焼くつもりで行ってねー」

「分かったわ」


森階層は、視界が悪くなっていた。あと、弱点の炎魔法は間違ったら大火事になる可能性があるから使いにくい、という点でハードルが上がっている。

のだが。


「全部焼いて全部消火するつもりでいるとか、ほんと私何すればいいんですか?」

「あ、そうだった!じゃあステラだけ、ちょっと前に行きなよ。僕ら後ろから援護するから」

「..................忘れてたんですか......................はーい」


そうして、先頭は私ということになった。


........................あれ?一番安全な場所?余計なものには反応しない?


なんだっけ、それ?


「あの、最初のルールは――――」

「変更する!ステラ、強いから!」

「おい」


しかし実際に私は、なんということなく森階層も進んでしまったのである。


「ってストォォオッップ!トレントって倒したらバチ当たるんじゃ.....?ドリアードが住んでるとかなんとか」

「あぁ、あれはトレントの中でも精霊の森の木たちにしか住んでないから大丈夫だよ」

「じゃあここのボスにはバンバン打ち込んでいいと」

「うん!全部焼き尽くすつもりでいいよ」

「んじゃあ、、、、、我に宿りし魔素たちよ、最大限の力を以て我の前に立ちふさがる敵を焼き尽くせ。灰になるまで焼き尽くせ。あ、やっぱ灰になったら売れなくなるからそれはキャンセルで。売れる程度に焼き尽くせ!ファイアースフィア!」


なんだそのギャグみたいな詠唱って思ったそこのあなた。

私もそう思いました。

でもね、そう言ったら本当に売れる程度に焼かれてたので、これで良いかなーとは思う。

本当に私が頑張って覚えた詠唱って一体.......................。


◇◇◇


「二階層は、罠や仕掛け、迷路の階層だな。正直一番頭を使うから、俺とマフカはあんまり役に立てんな」

「あんたと一緒にするんじゃないさね!...........まあ、確かにそうだけど」


この階層は、頭を使うらしい。


「例えば、宝箱がミミックだった、、、とかですか?」

「そうそう。あと、この長―い道。行き止まりでしょ?どうやって進むと思う?」

「んーっと、転移トラップ......とかですかね?あと、壁に何かしらのスイッチがあるとか」

「...........教えがいがないねぇ」

「えっと、、、、すみません?」


いや、いいことでは?


「とりあえず、探索してきてみて。本当に危ないやつは無効にしたから」

「いつの間に!?」

「さあ?」


さあ?

まあいい、探しに行こう。


「この壁の素材って燃えるのかな?―――うん、燃えるわ」


燃えるなら、片っ端から壁に魔法を撃っていけば焦げ目の付く付かないで何か分かるよね。

というわけで、燃やしていきまーす!


後から思ったけど『というわけで、燃やしていきまーす!』って貴族のお嬢様が口にしていい言葉じゃないわ。


まあでも結論としては、転移トラップが三つ。謎の出っ張りやくぼみが五つ。触れると攻撃魔術が飛んでくるトラップが四つ。落とし穴が三つ。


「で、合ってますか?」

「合ってる!あーでも、天井にもいくつかあったんだよ」


天井!?


「それは思い至らなかったですね」

「まあまあ、初めてにしては上出来だから。じゃあ、トラップの解除方法も教えるから来てー」


こんな感じで、三階層は頭を使うけどなんとか突破した。

ボス?

あぁ、マイがね......


「スライムが大量にいる部屋!?スライムって確か、唯一無属性の魔物で、魔術も物理攻撃も効きにくくて、弱点が体の真中にあるから、巨大化したら物凄く強いっていうあの?刺しがいありそうなので私がナイフで刺してきます!」


っていって、アサシンスキルを駆使して一匹にも気づかれず全滅させてた。


◇◇◇


「確か四階層は水中でしたよね。どうやって行くんですか?」

「水中っていっても所々に島があるから、それを伝って行くんさよ」

「ステラ様って泳げましたっけ?」

「泳げない............」

「そりゃそうよ、貴族のお嬢様が水泳習ってるわけ無いでしょう。それとマイ、あんたはできるの?」

「お恥ずかしながら、私もずっとメデイロス家に使えているものですので、、、学ぶ機会がありませんでした」

「でしょう。私も最初は泳げなかったのよ。だから、貴方達はボート漕いで行きなさい」

「ボート?そんなものどこに―――」

「僕のマジックバッグ」

「えっ、、、、いやなんですかその馬鹿容量!?っていうか前から思ってましたけど私達が依頼を受けに行くときにほぼ手ぶらなのってそれのお陰ですよね!?どんだけ魔力あるんですか、レインさん!?あと、その生地自体も結構な値段ですよね!?その入り口の広さ、どんだけお金あるんですか!?」

「ん?これはね、僕が自作したやつだよ。だからお金っていうよりかは素材採集の苦労が、、、かな」

「..........マッドサイエンティスト...............」


それはともかく、ボートに乗ろう。


「マイ、ボート漕げたっけ?」

「いえ、ですが形を見ればわかります」


分かるんだ。すごいな。


「私は魔力が使えないので、あまりお役に立てませんが..........いえ、スピードを付けて投げ込めばナイフでも.......?」

「やめなさい!水力に逆らおうとするな!」

「それっ!」


そして驚くことに―――。


「これで私も何かできそうですね」

「えっなに、あんたナイフの神様に気に入られでもしたわけ!?マジで!?」


.......................もう何も言うまい。


「で、水中のボスなんですけど.......」

「うん」

「私思ったんですけど、そもそもこの階層って皆が一旦陸に上がって、そこから雷魔法を放てば.........一瞬クリアなのでは?」

「まぁ、それだけの魔術が撃てればだけどね。やってみる?」

「はい、少なくともダメージは与えられると思うので。......ですよね?」

「うん、水蛇も水属性だしね」

「じゃあ、皆さん上がってもらって.........」


もしこれで成功したとしたらここ数時間の苦労は何だったんだって感じだけども。

まあ早く帰れるに越したことはないしね。


「我が手に宿りし魔素たちよ、集まれ、集まれ、集まれ。精鋭なる針となれ、敵を貫く電撃となれ!サンダーボルト!」


ビリビリビリ。

ぷかぁー。


階層中の魔物が、一掃された。

とっても、虚しかった。




次は最下層。ここまで大した苦労はしなかったけど、いや心労は多かったけども、とにかくこの先はどうなるのか。

仮にも一ダンジョンの最下層である、そこそこに苦労するのだろう。

楽しみである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る