第十六話 狩りとミーヤと炎鼠。
「十時、三時、六時。五時に土、二時50に3匹」
「ツルギ。十時、三時、六時!」
シュバンシャキンシュルルルッ!
「クロ、ファイアで五時」
ビュンジュワーッ!
「ヒヨ、毒を二時、50歩先に投げる」
パタパタ、ヒューンパリーン!
「じゃあ私も。ウィンドブレード!」
シュン!ハタ。
「「「「強っっっよ」」」」
今日は、魔物を狩りに来ている。
ところが。
一緒に依頼を受けることになったソロの子、―――名をミーヤという――が、【敵感知】なるスキルを持っていた。
それで、その子のスキルで見つけた魔物を私が魔術とナイフと使役した動物で倒す。
そうすると、狩りが楽々なのである。
故に。
「「「「「「あの二人だけで良かったんじゃ....」」」」」」
ぜんっぜん助けが要らないのだ。
...........私、Eになったら龍の血晶出てミーヤをパーティーに誘おうかな。あ、決して先輩たちが弱いわけじゃないよ?彼らは凄く強いんだ。
だけどミーヤはEランクで、学園の推薦候補らしい。私と年も近いし、パーティーを組むには最適なのである。
夜空色のショートヘアに、同じ色の猫耳。整った顔と透き通った灰緑の目。
スレンダーな体がしなやかに動いて―――
「って、うぉぅ!?」
「ぼーっとしないで。危うく攻撃されるところだった」
「いや、攻防も大事だと思うけど」
「でもよそ見は良くない。魔矢の無駄撃ち」
「ごめん......」
「分かったらいい。.....これは、炎鼠?」
「あれ?ここにはいない筈....」
「これは、要報告」
よそ見をしていたら、魔物に接近されていた。
それにしても、魔矢って綺麗。ミーヤは水属性だから、矢が青く光っている。それで、矢が射たれる瞬間に一瞬輝くのがまた綺麗なんだよねぇ。
「魔矢、返して」
「あっはいどうぞ」
ミーヤは、遠距離型の冒険者である。水属性の魔力持ちだが、魔術は使えない。なので、代わりに魔矢を使用することで魔力を消費しているのだ。
普通なら遠距離は近距離と組むものだが。
彼女は魔物感知のスキルが有るため、大抵は接近戦になる前に倒してしまう。もし接近戦になっても、剣技も少しはできるらしいので、ソロで行けるのだそう。
うん。強いね。特に、スキルが強い。
「しかし、討伐が一瞬で終わったね」
「あたしたち、何もしてないじゃん」
「これ、私達は報酬をもらっていいのかしら.....」
「ミーヤとステラに半分あげちゃっていいんじゃない」
「いい。報酬は山分け」
「いやでも」
「こうも楽々と魔物を討伐できたのは皆が周りに警戒してくれたから。だから、報酬は山分け」
「......分かったよ」
ミーヤは、謙虚である。色々な事に対して、気遣いができるのだ。
私とは違ってとってもいい子である。
「んじゃ、帰るか」
「ん。帰りはミーヤたちが護衛をする」
「いいのか?」
「戦闘中に守ってくれたから」
ミーヤは、よく働く。無口で無愛想に見えるけど、結構お人好しだったりする。
「帰ったら、報告をする。炎鼠は最近あそこには出ていなかった。森の近くにまだいるかもしれない。それは危ない」
そして、洞察力に優れている。さらに、行動派である。
私とは大違いである。
「なんだろう、ミーヤと一緒にいると自分に自信が無くなってくる」
「俺も」
「あたしも」
「私も」
「僕も」
どうやら、皆もミーヤと一緒にいると時間と共に自信が削ぎ落とされていくらしい。
「........皆はミーヤの欠点を知らない」
ミーヤは、空気の読めるいい子である。
あれ?それさえも逆に私の自信を削ぎ落としてるんだけど?
「ミーヤ、もっと悪い子になってよ」
「......なんで?」
なんでだろう?いい子すぎるから?
「.....ミーヤは常に自分を向上させている。それはさておき、ギルドに着いた。報酬とポイントを貰ったらレティに炎鼠が出現したことを伝える」
「おーけい」
炎鼠。それが、先程私に飛びかかってきた魔物だ。炎鼠ー通称フレアラットは、数年前に人の手で持ち込まれ、それが逃走してちょっとした火事になったという迷惑な魔物である。
確か逃げ出したのは全部捕まえたはずなのに......なんでいたんだろう?
前回、火事が起こったのは街中だった。街の中だった故に、すぐに報告されたしそこまで広がらなかった。
でも、今回は。
あの炎鼠は森の外周で見つけたのだ。まだ仲間が残っているのなら、森が火事になる危険性だって出る。
あの森は隣の伯爵領まで繫がっているので、そこまで被害が出たらうちはただじゃ済まない。
残ってるなら駆除しないとなぁ。これ以上うちに胃薬は要らない。
「炎鼠、ですか。ギルドから調査依頼を出しておきますね。できるだけ早く受けてくださる方がいるといいのですが」
「助かる、レティ」
「ありがとうございます、レティさん」
さあ、報告を終えたところで一休み。
「んなわけ無いでしょ。今年の学園入試に間に合いたいなら時間を無駄にしないこと。今日は早めに依頼が終わってるんだから、もう一つ受けてもいいのよ?なんなら、炎鼠は私達が探してもいいの」
「すいません、イレネさん.....確かにそうですね」
一休み、、、では無く。次の依頼を受けに掲示板に行こうとした、その時。
「た、大変なんです、炎鼠が10匹くらい森に入っていって、、、全部興奮状態なんです、倒そうとしたんですが目の前に木に火が付いちゃって......とにかく、来てください!」
「――――――!?」
みんなと顔を見合わせる。
「行くわよ」
「はい」
どうやら、早く止めないと大変なことになりそうだ。
..........王族やら、火事やら、もううちに胃薬は要らないってんのに。
その時点では気づかなかったのだが、、、、、
どうやら、あの魔物は人工的に放たれたらしい。
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