第十四話 初依頼(?)を受ける。

さあ。

逸れに逸れに逸れに逸れた会話をもとに戻す。

本日2回目の仕切り直しである。


「では、ナマコ虫狩り、、、、、もとい、胡桃狩りに行きましょう」

「おー!」


うむ。こういう感じである。


「ステラ様、十時の方向に獲物十匹発見!」

「よし!ウィンドブレード!」

「私も行かせて頂きます!」


シュピンシュピンシュピピピン!

ストトトトン。


「すっげえ」

「すごい」

「......人離れしてるわね」

「本当にできるとは、、」




「私は、マイほどじゃないですけど.....」


シュバババ!ストトトトン!


「「「「十分すごいって」」」」

「......やはり鈍っていたようですね。明日から再教育を図りましょう」


ひえーんマイさん勘弁してぇ。


「いえ、丁度いい機会なのでここでナマコ虫を使って......」


びえーーーん!マイさん!なんで練習場がここなの!勘弁してぇ!


「マイって実は、恐ろしい子だったんだね....」

「お褒めに預かり光栄です」

「マイ、あんた、お母様みたい.....」

「お母様はさぞ優しいお方だったようで」

「俺、マイににあまり深く関わらないようにしよう」

「あっはは御冗談を」

「マイ、僕の弟子にならない?」

「ご遠慮させて戴きます」


……….最後のだけは真っ当な判断だったと思う。


最後のだけは。


「まあでも、鈍ってきたのは確かなんだけど。.......何匹、倒せばいい?」

「何匹とでも、十回連続で均一に切れるようになるまでは」

「......分かった」


そうして続けること3時間。

私はやっと10回連続マイのお眼鏡にかなう均一さでナマコ虫を倒したのである。

スタンピードが消えたんだけど。むしろ、ナマコ虫が以前より少なくなったわ。

だがしかし、胡桃は一切採集していない。


「...なんの3時間だったのよ、今のは」

「ゼェゼェ、私にも、わかりません、ハァ」


本当なんの時間だったんだろ。全然くるみ取ってないし。


「マフカは木登りが得意だろう?くるみを取ってきてくれるかい」

「おっけい、行ってくる」

「じゃあ私も、っていうかそれ私の仕事ですよね」


完全にナマコ虫駆除要員みたいになってたけど、最初の役割分担ではそうだったよね?


「木登りはできるのか?」

「いえできませんけど、登らなくても切り落とせます」


特に今なら、失敗する気がしない。


「そうかい。でも、木登りは習得しておいた方がいいから、一緒に登るよ」

「分かりました」

「んじゃ、まず登る木を選ぶんだ。胡桃の木は登るのが簡単だけど、もしこれが難しかった場合、近くにある木を登って採集するんだよ」

「なるほど」

「じゃあ、この木の近くにある登りやすそうな木を選んで」

「隣の、胡桃の木はどうでしょうか」

「......それだったらその木の実を取ればいいんだよ」

「......あ」

「.......まあ、いい。その木に登って隣の木から採集する」

「はい」

「じゃあステラの場合、ナイフを足場にするか幹の上の方にナイフを刺してロープで登るか、木の枝を使って登るか。どれが一番早くて簡単かい」

「ロープですね」


持ってないけど。


「んじゃ、ロープを使って登るんだ」

「あ、でも私持ってないんです」

「ん?じゃあ、そこのツルでも使え」


あ、天然ツルでもいいのね。

では、依頼開始から四時間後。ようやく、本来やるべきことができそうである。

....................ほんっっと、あの一連の無駄なやりとりは何だったんだろう。いや、4時間って。


◇◇◇


「............これは、あの依頼も無くしちゃっていいんじゃないかしら」


冒険者ギルドに帰ってきた。


「いや、まあ、ちょっと訓練をしていたもので」


レティさんが大量のナマコ虫を見て顔をしかめつつも驚いている。

レティさん、これ見て逃げたりしないのね。そこは一応受付令嬢というわけか。


「なんの訓練をしたらあのスタンピードが収まるのよ」

「物を空中で均一に切る練習をしていました」

「その能力、いるの?」

「それはマイに聞いてください」


うん。私にも分からない。なんであんな必死になってたのか。完全に無駄な能力だと思うんだよね。


「しかし、あの依頼とは?」

「スタンピード駆除の依頼ね」

「ああ........」

「メーテ、あれの報酬とポイントは龍の血晶に入れておくけど、いい?」

「いいわよ」

「んじゃ、入れとくわね」


レティさんがもう一人の受付さんと話している。

メーテさんというらしい。

しかし、あの顔にあの胸は反則ではなかろうか。


「..........卑猥な」

「誰が卑猥か!別に好きでなってるわけじゃないんだからね!?」

「よし、合格」

「何に!?」


そりゃ勿論、面白いリアクションテストである。


「余計な事をしていないでさっさとギルドカードを差し出してください」

「レティさんが前より辛辣になってる」

「私は親しくなるほど辛辣になるんですよ」


そういう人なのね。


「では、スタンピード駆除も合わせて25ポイントね」

「「「「「「「駆除ポイント、高っ」」」」」」」


Eランクになるのに必要なのが50ポイント、採集3回、討伐5回、その他3回、あとひとつ上のランク依頼を1回だったから。


「なんか、予想以上に早くランク上がっちゃいそうです....」

「スタンピードが例外なんだけど、確かにこれは随分と次ランク到達が近づいたね......」

「で、報酬はこれだから」


金貨5枚。


「「「「「「「駆除報酬、高っ」」」」」」」

「領主様直々の依頼だったからね.....」


なるほど。領主様.........って、うちの家族やん。

え、これって私が報酬を全部もらったとしても元々うちから来たお金だから私の儲けにはならないってこと?

うむ。残念である。

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