第七話 買い物に行く。
どうも、ステラです。現在、市場に来ております。
というのも、今日は装備とか、そういう冒険者に必須の物たちを買い揃えようかと思うんです。
―――――ていうか本当は一週間前にこのセリフを言っているはずだった。
だが、実はあの後、魔術特訓の夜にカーテンを燃やしたのでマイと愉快な仲間たちから一週間の外出お預けを食らったのである。
その一週間で私は例の教科書を読破し、更にカーテンを燃やしたのにも拘らずファイアボールを連射し、それに飽きて杖を自作しようとして、失敗し、自棄になり、魔術を連発し、その結果再三に渡って注意されたはずなのに再び魔力欠になったりしたのだが。
まあそれは置いといて、今日は買い物をするのだ。そして、自作ではなくちゃんとした職人作の武器を買う。
「まず聞きたいんだけど、ステラが魔術以前に使っていた武器は何だった?」
「ナイフですね。マイに仕込まれています」
「「「「あれかぁ......」」」」
レインさんたちが微妙な顔をしている。マイのナイフスキルを見たのだろう。
「ステラは、マイと同じくらいのレベルなのかい?」
「いえ、彼女は、、、特殊です。投げナイフだけでも彼女の命中率は100%なのに対して、私は98%なくらいですし」
マイは、飛んできた魔術も切れるらしい。規格外なのだ。
「ステラも十分すごいと思うけど、、、投げナイフ以外では何ができる?」
「護身術は心得ています。あと、弓はある程度、レイピアが少しだけです」
あと剣は習ったことあるけど、それは自分に合わなくてすぐ辞めた。
「ナイフが一番強いんだよね?」
「はい、間違いなく」
「そうか。レンとマイは必要なもの持ってるんだよね?」
「軽鎧は置いてきましたけど」
「私はナイフだけですので」
「分かった」
少し考えてから、レインさんは歩き出した。
「どこに向かうんですか?」
「ナイフ屋だね。杖としても使えるようなもので行こう」
「そんなのがあるんですか」
「うん。ほら、ここだよ。ここはいい店だから、仲良くした方がいい」
大きな看板に「刃物屋」と書いてある。もう少しひねりのある名前が欲しいものだ。
「ダンのおっさん!いるか?」
マフカさんが店に向かって叫ぶ。どうやら店主はダンというらしい。
「あら、マフカたちじゃない。こちらの方は?」
優しそうなおばさんが出てきた。店員だろうか。
「あ、どうも。ステラです。こっちはレンとマイ」
「そう。ウチの娘をよろしくね」
「娘?」
誰のこと?
「ステラ、ここはうちの店なんだ。おっさんが店主で、母さんと父さん、兄ちゃん二人でやってる」
「そうなんですか」
マフカさんのお家だった。
「あの、マフカさんのお母さん、マフカさんにお世話になってます」
「「マフカが?珍しい」」
「兄ちゃん達!やめて。それで、おっさんは何処にいるんだ」
なんか気難しそうなおじいさんが出てきた。
「誰がおっさんじゃい。わしゃまだまだ生きるわ」
「いや、おっさんはまだまだ生きる部類に入ると思うけど........。ってそうじゃなくて、今日はこの子の武器が欲しいんだ」
「武器は?」
「投げナイフ、魔術が撃てるやつな。あと、エンチャント可能でスロットはできれば2つ」
「丁度いいのが2つあるぞ。選べ」
「あたしじゃなくてこの嬢ちゃんだってば」
「そうか。選べ」
「あっはい。違いはなんですか?」
ぼーっと見てたらおじいさんに話しかけられた。
両手にはそれぞれ穴が2つ空いているナイフ、どちらも同じに見える。取っ手は黒と金だ。
「こっちの黒いのは、耐久力は強いが重い。こっちは、耐久力はあまりないがもう一方より断然軽い」
どっちがいいだろうか。
「.....普段のやつと比べてみてはどうでしょう、ステラ様」
「それいいね!」
結果、重い方は元のやつより若干重いというだけだったので、それなら耐久力が強いほうが良いという事で取っ手が黒い方になった。
「お買い上げありがとうございました!マフカ、また来なよ」
「週イチは寄ってるじゃん」
「そうね。ステラちゃんも、ナイフに問題があったらすぐ来なさい」
「そうさせていただきます」
どうやら結構いいやつらしい。金貨一枚であった。予算は金貨三枚なので、こっからは節約しよう。
そういえば。
「この穴って、魔石をはめる穴ですよね?」
「うん。今から買いに行こうかと思って。魔力の色分けはできるよね?」
魔力の色分けとは。自分の魔力を属性ごとに分けて抽出することである。
そして私は、、、
「はい、先週練習していました」
「ならいい」
◇◇◇
わあ、きれい。何よこれ。
「素敵ですね」
「「そうか?」」
「マフカ、カイル、アンタ達にはわかんないから待ってて」
「僕は、素敵だと思うな―――」
「レイン、わかるのね!」
「―――――研究が捗りそうだよ、素敵な素材が沢山あって」
........レインさんは研究が好きなのだろうか、見た目より中身重視みたい。
どうやら魔石が光を放っているこの空間が素敵だと思うのは、イレネさんと私だけらしい。
「イレネさん、仲間ですね」
「そうね........」
「ステラ、この魔石は良質で、こっちはそうでもない。違いがわかるかい?」
「んと、良質であるほど光るんですよね?」
「そうだよ。じゃあ、この棚で一番良質な魔石を2つ、取ってきて」
「レインあんた、また難しい課題を出すわね......。この棚全て同じくらいの質でしょう」
「少し、微妙に違うんだよ。できるかい、ステラ」
「あの、試してみます」
というわけで、『中品質』の棚から一番良い魔石を見つけることになった。
棚の下の方より、上の方が光っている気がするな.....
上質な魔石は上にあるのだろう。上を探そう。
‐ 一時間後 ‐
「これと、これですか?」
「ん。片方は正解。もう片方は、間違っている」
「えっ」
「これを見て。ここが欠けているよね?光が強くても、欠けていては品質が落ちる。だから、こっちの光が少し弱いけれど欠けていない魔石のほうが品質でいうと良い方なんだ」
よく見ると、小さな引っかき傷が、片方にはついていた。
「あちゃー。難しいですね」
「そうだね。でも、最初にしては上出来かな。この2つを買ってきて」
「傷がついてていいんですか?」
「うん。それは十分高品質だからね。それに、魔石には相性っていうのもあるし。ステラがこれと思ったのならそのほうが良いんだよ」
「わかりました」
「お嬢ちゃん初めてだろう?銀貨一枚負けるよ」
「えっ、それは負け過ぎです。いいですよ、ちゃんと払います」
「硬いこと言わないの、それにお嬢ちゃんは後々良い客になりそうだからね」
「えぇ........じゃあお言葉に甘えて」
さすが商売人、お金持ちは見ればわかるのだろうか。
残高は金貨一枚、銀貨五枚である。
「次は、服かな。これは足りないかもしれないから、予算を超えることもあり得る。勿論、うまく行けば負けてもらえるかもしれないけど。商売の勉強になるだろうし、次はステラが一人で行ってみて。店はあそこだ、僕たちは昼御飯買ってくるから」
「はい、わかりました」
それにしても、龍の血晶は友達が多いのだろうか。沢山の人と挨拶している。
マフカさんたちが人混みに消えていったところで、私は店に入った。
「お兄さん、ちょっといいでしょうか?」
女は武器だ。
その名も、美少女作戦である。
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