第六話 魔術、特訓。

「お父様、本当ですか!」

「ああ。ステラも大きくなったし、そろそろ自分で物事を決めさせてやってもいいかと思ってな。それに、ステラたちが言っていたことは全て正論のようだしなぁ。俺が間違っていた。すまんな」

「ごめんね、イオリ。でも、怪我はできるだけしないでね」

「僕からも、すまなかった」

「私は、ステラが望むのなら冒険者になっていいと思うわ」


というわけで、家族からGOサインを貰った私は使用人たちの苦笑いを受け流しつつ龍の血晶の拠点に向かった。


「マフカさん!勝ったよ!私、護衛を外せる!」

「おお!やったな!皆!ステラの家族に勝ったぞ!」

「相変わらずうるさいわね、早朝に迷惑よ」


目をこすってイレネさんが出てくる。ツンデレ気味だ。なので―――――、


「イレネさん、ありがとうございました」

「ま、まあ、いいけど」


――褒める。こうする事によって、ツンデレをデレさせる道に近づくのだ。


「じゃあ今日から特訓だね」

「おう。まあ、なんだ。頑張れよ」

「はい!レインさんとカイルさんも昨夜はありがとうございました」


二人は起きていたようだ。


「レン君とマイちゃんはもう手慣れの戦士みたいだから、カイルとマフカと一緒に依頼をこなしてくれるかな。ステラちゃんは、僕とイレネで面倒見るよ」

「今日は一日特訓するわよ」


二人が魔術を教えてくれるみたいである。


「了解です。そういえばレイン様、私とレンは呼び捨てにしてください」

「え?あぁ、うん。分かったけど、マイも様付けと敬語は止めてよ、堅苦しいからさ」

「昨日まではステラ様の客という形で接していましたが、確かに今はパーティーメンバーなので様付けは止めましょう。ですが、敬語は癖ですし、先輩には敬意を

払ったほうが良いかと思いますので」

「そっか、癖ならしょうがないね。でも、ナメられないように一応慣れておきなよ」

「善処します」


うむ。成長はいいことだ。そういえば。


「レインさん、私もちゃん付けではなくただステラ、と読んでください」

「あ、そう?分かった」


というわけで、ちゃん付けから呼び捨てにグレードアップした。

.......グレードアップなのかな?


◇◇◇


「イレネは火属性が一番強くてね、攻撃型なんだけど、僕は土属性が強いから魔術は防御に特化している。もちろん、僕は剣が使えるから攻撃もある程度はできる」

「なるほど」

「アンタは火と風だったわよね。火は私が教えるから、風は教科書読んで自力で覚えて。ほら、これが教科書よ。一章を読み終えたら来て」

「はい」


現在、ギルドの横にある訓練所に来ている。そして、私はその一角で本を読んでいた。


『魔術〜基礎から神級まで〜 第一章・魔力の素と魔術の基本の形』


『人体には、魔力を溜める器のような器官がある。

魔力は空気に充満しており、息を吸うことによって体内に取り込まれる。これを凝縮したものが魔力回復剤である。

また、魔力はは体の中でも作られている。体内で作られた魔力は濃度が高いため、魔術の効率が良くなる。故に、時間に余裕があるときは睡眠を取るなどして魔力を回復させたほうが良い。

〜〜〜〜〜

魔術を使うときは、体内の魔力管を通して杖・魔道具等に魔力を注入し、然るべき手順を踏んで魔術を発動させる。例えば、杖ならば魔術を発動させたい方向に向かって杖の先を向け、詠唱をする事がそれに値する。

〜〜〜〜〜』


一時間後


「レインさん、終わりました!」

「意味は分かった?」

「まあ、うちにも似たようなのはありましたので。ただ、こちらの方が情報が多かったので勉強になりました」

「そっか、良かった」


長かったけど、面白かった。


「それでなんですけど、レインさん、質問があるんです」

「うん、いいよ」

「魔術というのは、杖がなくてもできるんですよね?」

「そうだね。杖の方が遥かに効率が良いけど」


そうか。なら―――――、


「それはスキルでも、ですね?」

「そうだね、どんなスキルでもスキル発動には魔力を使うから。でも、スキルに必要な魔力は殆どないから、杖を使わなくてもできるよ」


ふむ。なる程。だから私は杖無しで使役ができたのか。


「そうですか。では、もう一つ聞きます。魔術が使える者と使えない者の差はなんですか?」

「魔力量と、魔力の色だね。

まず魔力量だけど、魔術発動に必要な魔力を持っていないと、魔術は使えない。魔力量は練習で伸ばせるけど、それでも使える人と使えない人には明確な差があるから使えない人は一生使えない。

次に魔力の色なんだけど、ステラが手を乗せて魔力適性を調べた水晶玉があったよね?あれで色が出ない人が、稀にいるんだ。どうなるかというと、強いグレーが出る。彼らは魔力はあっても魔術が出せない人たちだね。それを無属性と呼ぶんだけど、彼らは一般的な魔術が使えないから魔道具の研究者になったりする」


そういうことか。じゃああの水晶は魔力がない人は透明のまま、ある人は適正の色が集まってきて、無属性たちはグレーなのね。


「そうなんですか~、ありがとうございます」

「いやいや、遠慮せずに聞いてね」

「ところで、アンタたち私の話聞いてた?」

「「いや、全っ然」」

「いい度胸してるわね......」


忘れていた。イレネさんがいたんだった。


「イレネさん、イレネさん、聞いてなくてすみませんでした。反省します。それで、火魔術を教えて下さい」

「ステラ、絶対反省してない、、、、、、うん、絶対してない」

「してますってばー(棒)」

「.......まあいいわ。じゃあ、まずはあの的にファイアボールを当ててみて」

「はい。ファイアボール!」


ゴウッ!


「お、思ったより強いわね。じゃあ、次は連射――――」


ゴウッ!ゴウッ!ゴウッ!ゴウッ!ゴウッ!


「.....................完璧よ。じゃあファイアスピアをどうぞ。今度はあの人形の的の顔をやって」


チュドーン!ゴウッ!


「ファイアブレード」


パシュン!ゴウッ!


「ファイアウォール」


ブワッ!ゴウッ!


「.........さすが子供、と言うべきなのかしら、もしくは異例と捉えるべきか。。。」

「彼女は確実に異例だね。風の方も余裕で行けるかも」

「おーけー。ステラ、ウィンドアロー」


「はい!ウィンドアロー!」


ビュン!パスッ!


「ウィンドカッター」


ビュン!シュバッ!スパーン!


「場所を取ってトルネード」


ヒュン!ビュオオオ!


「ボルト」


パチパチッ!


「........うん。彼女は、、、、実力があるね」

「もう何も教えることないんじゃないかしら.......」

「だね。ステラ、その教科書読破したらもう終わりでいいよ!」

「もう魔物で実践してもいいと思うわ.......」

「ほんと、ですか?やったぁ.....」


少し無理をしたのかもしれない。レインさんとイレネさんに褒められた瞬間、気が抜けたのだろう。私は目眩と共に意識を手放した。


◇◇◇


「テラ......ま。ステ...様。ステラ様。ステラ様!」

「えっ、ここ何処!?」

「魔力欠で意識を失ったので屋敷で寝ていました」

「レインさんたちが届けてくれたんだよ」

「そっか。あの二人にはお礼を言わなきゃ――――」

「お嬢!」


起き上がろうとしたら、倒れてしまった。


「危なっかしいのでまだ寝ていてください。間違っても抜け出したりしないでください」

「でも―――」

「いいですね?」

「はい........」


釘を差されてしまった.......。


ちなみに、この後こっそり魔術の練習をしていたらカーテンが焼けて盛大に怒られた。


「全く、室内で魔術を使うなんてどうかしています!」

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