第2話 東京自殺センター2

ドアをくぐると受付に受付嬢、少し離れたところに自動販売機に、数個の椅子という想像したようなオフィスが広がっていた。


ここで多くの人が自らの意志で命を絶っているとは思わなかった。


受付に行き、ここに来た意図を受付嬢に伝えるとにこやかにお待ちください。とだけ言われ椅子に座らされた。


数分後、修一郎の目の前に1人の眼鏡の男がやってきた。


「お待たせしました。瀬川と申します」


瀬川と名乗った男は首にかけたネームを強調するように修一郎に見せた。


「お伺いはしております。では、行きましょうか」


瀬川に言われるがまま、エレベーターに乗り込む。


自殺センターにて自殺するにはネット上で簡単な必要事項を書き込んで自殺する日時を決める必要があった。そうすることで自殺する当日は手ぶらで施設へ向かう事が出来るのだ。


エレベーターの中は無言が続く。24階のボタンが光っている。そこが自殺場所なのだという事だけは分かった。


1分ほど経っただろうか。ポーンという音と共にエレベーターは24階に到着した。

薄暗い空間の中で心を落ち着かせるようなオルゴールの音が室内全体を支配するように鳴り響いていた。


「案内します」


瀬川の案内と共にまっすぐ突き進み、右に曲がり、ドアを開く。


1つの明かりともった部屋の中に無機質なカプセルが1つだけポツンと置いてあった。


まるでSF映画のようなそのカプセルは人1人だけが収まるように設計されており、おあつらえ向きという言葉を学のない修一郎の脳内を駆け巡った。


「この中に入るという事ですよね?」


修一郎の言葉に瀬川は「ええ」とだけ返した。


「随分殺風景ですね・・・・・・」


この何もないような感覚に耐え切れず、修一郎は話題を探すような言葉を言ってしまう。

「他の利用者様はそれぞれ部屋をカスタマイズされる方もいます。このカプセルの中に大切にされていたグッズを入れたり、部屋の周りを自宅のように再現されたり。もちろんデフォルトがお好みの方もおります」


瀬川は淡々と説明する。


「そういうもんなんですね」


修一郎はそんな言葉しか返せなかった。


「何か言い残す事などはございますか?ご遺族の方など、連絡先をご存じな方がいらしたらお伝えすることが可能でございますが?」


瀬川の言葉に修一郎は首を横に振る。


「そんな大切な人は僕にはいません」


瀬川はまたそうですか。と殺風景な言葉を言い、手元のスマホを操作し、カプセルを開いた。


プシューという音と共に上部分だけ開き、中からスモークが排出される。


「どうぞお入りください」


瀬川の案内と共に修一郎はカプセルへと入っていく。


全身がすっぽり入り、窮屈な感じは無かった。


「お加減はいかがでしょうか?」


瀬川の言葉に頷くだけ返す。


「このまま閉めますとガスが注入され、しばらくすると睡眠するような感覚になり、そのまま・・・・・・」


修一郎は


「分かりました。そのまま閉めてください」


言葉を遮った。その先を聞くことに抵抗があったのだ。


「では」


瀬川はそう言い残し、スマホを操作し、カプセルを閉じた。


その瞬間、どこからともなくガスが噴出され、修一郎の体を包んでいく。


いいことなんて1つも無かった人生だったな。とガスに包まれながら思う。


小学生から中学生までずっといじめられ、高校生になり、今までの人生を変えるためにオシャレをしたり、勉強を頑張ったりしたが、何一つ報われることは無かった。それどころかそれらをバカにされた。卒業後に俳優を志すも・・・・・・・


ここまで考えているうちに辛くなってきた。死ぬ前まで辛い思いをするのは辞めにしたいのだ。


ガスが充満してくると心が落ち着いていき、体が様々な事を考えることを拒否するようになってくる。


こんな辛い事はおさらばだ・・・・・・


修一郎はガスが体を支配していくほどに幸せを感じた。


「死ぬって気持ちいいな・・・・・・」


修一郎はもっと早くに自殺するべきだったとにこやかな表情で思った。


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