第19話 最終話。

「俺だって本当は別れたくないよ!」


彼女のいう「嘘つき」は本当だ。正しい。俺は自分の本当の気持ちに蓋をせざるを得なかった。そんな抑えていたはずの本音が彼女の言葉によって引きずり出された。


「なら何で別れるなんていうの!?」

「酷いよ!」


わからない。なんで俺が今責められてるんだ?俺はただ笑って送り出したかっただけなのに。最後くらい笑顔で。


「それはお前が浮気してたからだろ!」

彼女が俺の頑張りを汲み取ってくれず、あまつさえ自分を責めるかのような態度にもう我慢できなかった。


「土曜日に俺との約束をドタキャンしてイケメンとデートしてただろ!さぞかし楽しかったんだろうな。」

彼女のキョトンとした、とぼけるような仕草が俺の怒りに拍車をかける。


「違う!違うの!」

「土曜日」・「イケメン」という言葉でようやく理解したのか、顔は青ざめ、必死に「違う」を連呼する。何が違うというのか?自分の非を認めない彼女に対して更に怒りが募る。


「違わないだろ!」

彼女の肩が震える。全く怒らない普段の俺から想像もつかないほど豹変しているのだ。無理もない。


「お前にあんな兄弟や友達がいないことは知ってる。俺との約束よりあいつとの約束のほうが大事だったんだろ?」

彼女は言葉も発さず、ただ俯いて首を横に振っていた。


「お前言ってたもんな。俺より良い人がいたら別れて乗り換えるって。よかったじゃん願いが叶って。」

悪意が止まらない。



「俺が見たのはデパートまでだったけど。どうせそのあとは、あの男とヤってたんだろ?このヤリ〇ン」



彼女が顔を上げ、目が合い、泣きはらした目を見たことで、如何に最低な発言をしたか自覚する。どんな理由があっても絶対に言ってはいけない言葉だった。


「ごめん今のは完全に言い過ぎた。」

今の言葉で冷静さを取り戻す。


「いいの。勘違いさせた私が悪いから。ねぇ話そ?」


「あぁ」

そこから俺たちは一方通行な会話ではなく、しっかりと話し合い凜の説明をうけた。


・俺が目撃した男は、彼女がいる大樹さんという凜の従兄だということ。

・あの日2人でデパートにいたのは他の誰でもない俺へのプレゼントを選ぶためだったということ。

・これと言ったものが見つからず、手編みのマフラーになったこと。




「全部俺の勘違いだったのか」


「勘違いさせるようなことした私も悪い。ごめんね?」

「それに今まで冷たい態度取って彰人を不安にさせて本当にごめんね?」

凜はなぜか俺に許しを乞うてきた。凜が謝る理由なんてどこにもないのに。むしろ謝らないといけないのは…


「俺、俺のこと考えてくれる凜のこと疑って。最低な言葉散々言って挙句の果てに勘違い…なんだよそれ。」


ダサすぎる。クソ野郎すぎんだろ。俺よ。


「もう気にしてないから!やり直そ彰人。ね?」

俺にもう一度機会をくれるという凜。こんな最低の屑野郎に凜は…



「いや。やっぱり別れよう。」

眩しすぎる。




「え?私浮気してないんだよ?それに、これから素直になってもっと彰人に甘えるよ?」


「彼女のことを信じもせず、最低な言葉で凜のことを罵った俺に凜の隣に立つ資格はないよ。」

凜が俺のことを愛してくれているのはヒシヒシと伝わる。罪悪感で押しつぶされそうだ。


「言っただろ?俺では凜を幸せにできない。最初から釣り合ってなかったんだよ」


「なにそれ…」

座っていたはずの彼女は、俺の眼下に立ち、胸倉をつかんで俺の頬を…


バッシッ!!


「釣り合わないって何!」

「彰人は誰よりもカッコいいよ!」

「周りがどう思うかなんて関係ない!私達2人が幸せならそれでいいじゃん!」


「やりなおそ?」


「で、でも」


「いいから。」

迷える俺の唇に、忘れかけていた温もりをくれる柔らかい何か…いや凜の藤原凜の唇が触れる。








「こんな俺ですが…」


「こんなじゃないでしょ?」


「そうだった」


「また俺と付き合ってくれますか?」


「喜んで!」





作者あとがき

処女作であるこの小説を最初に投稿したのは小説家になろう様で7月でした。あれから半年以上掛かりましたが、完結できて大変嬉しく思います。これも応援してくれた読者の皆様のおかげです。小説のラストは、タイトルから察せられるようにバッドエンドの予定でしたが、キャラクターに愛着がわき、ハッピーエンドにしました。

この作品は人物の心情描写や布石?伏線?にこだわっているのでまた1話から読み返していただけると幸いです。

連載は性に合わないと気づけたのでこれからは一話完結でラブコメをかきたいと思います。

ありがとうございました!

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