第9話 決別?(凛視点)

「凜少し話そ?」



長かった委員会も終わり、帰る準備をしていると隣のクラスの樹下さんに呼び止められる。

正直私は、樹下さんが苦手だ。どこか彰人のことを陰キャラだとか見下している節があるから。



「いいけど。手短にお願い!」




樹下さんが苦手なのもあるけど、なにより由美が言ってた今日の下校時に起こる『良い事』が凄く気になるので、長引かないように予め樹下さんに釘を刺しておく。



「おけー!恋バナしよ!恋バナ!!」



「う、うん」





「私最近彼氏と喧嘩したんだけど…」



どうでもいい話を聞くのは非常に苦痛。そんな心境からか適当に相槌を打ち、意識は彰人の晩ごはんの献立を考えていた。ハンバーグ?いやそれは、4日前に作ったからパスタかな?



「それでさ 凜はどう?」


「え?」


聞いていなかったので聞き返す。



「凜は好きな人いるの?」



「えっと、、」




彰人への気持ちを認めると更に時間がかかりそうなので曖昧な受け答えををしているとしびれを切らしたのか樹下さんが核心をついた質問をしてきた。



「本当のところ源君とどうなの?」



「な、なにもないよ! あんなやつとは本当に」



彰人の名前が出ると顔が熱くなり、彰人との関係を否定すると胸が痛む。けど一刻も早く帰るにはこう言うのが最善のはず。ごめんね!彰人



「本当かなぁ?この前だって源君に介抱されたんでしょ?」




早く会話を終えたかったから・彰人が私を看病したことを知ってることへの動揺・バレンタイン以来どこかそっけない彰人への小さな不満 

理由はどうあれ私は最低な言葉を思わず発してしまった。



「だ!か!ら!違うって!源君とは家が近いだけであんなやつ好きでもないし、嫌い!嫌いだから…」



私の返答に満足したのか、二言三言交わすと、樹下さんはようやく解放してくれた。



「ようやく帰れる。。」



思わずため息が漏れる。心にもないことを言うのは本当に疲れる。

自分に嘘をつくのは もう絶対にしないと心に決めた。



「彰人からだ!」



通知音を変えているからすぐわかる。彰人からのメッセージだ。自分でもニヤニヤしているのがわかる。おそらく晩御飯の催促だろう。

まっててね。すぐ帰るから。



•••



「え、」



メッセージの内容は、今日由美が言っていた『良い事』が彰人との下校‘だった’こと。

 そして彰人のお世話をもうできないという私にとっては余りにも残酷すぎることだった。

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