第8話 決別? (彰人視点)

「源君 ちょっといい?」


「いいけど。何か用?」



教室でスマホをいじりながら昼食を取っていると、凜の友達の橘さんが話しかけてきた。橘さんは、凜と同様に人目を惹くので、あまり話しかけないでほしいのだが無下にもできない。



「今日の放課後は暇よね? ほら部活もオフだし。」


「まぁ」



確かに今日は部活もなく暇だ。自主トレをするので厳密には暇ではないが。



「よかった。なら凜と一緒に帰ってあげてくれない?」


「なんでまた?」


「ほ、ほら 最近痴漢とか物騒じゃない?」




凜なら余裕だと思うが、確かに、男がいたほうが狙われないし安全か。



「わかった いいよ」


「ありがとう。委員会が終わる17時頃に校門で待っていてあげて」


「あぁ」


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「遅いな。凜のやつ」



現在の時刻は17時30分 約束の時間を30分も過ぎている。委員会が長引ているからだろうが、もう終わるだろう。



「迎えに行くか」



会議がおこなわれている視聴覚室まで来たが、何か話し声が聞こえる。会議に適さない言葉が聞こえるので恐らく会議は終わっているのだろう。



「凛のやつ油売りやがって。待つこっちの身にもなれよな。」



扉を開けて文句を言ってやりたいが、凜と同じ風紀委員会に所属するカースト上位が怖いので、大人しく待つしかない俺は壁に背を預けて話が終わるのを待つことにした。




「それでさ 凜はどうなん?」




聞くつもりはなかったが、壁越しに話し声が聞こえてくる。待たされている身なので会話を聞くくらい許されるだろう。



「だから!本当のところ源君とどうなの?」



どうやら俺と凜の話で盛り上がっているらしい。




「な、なにもないよ! あんなやつとは本当に!」




「本当かなぁ?この前だって源君に介抱されたんでしょ?」


「だ!か!ら!違うって! 源君とはただ家が近いだけであんなやつ好きでもないし、嫌い!嫌いだから…」




凜は何もおかしなことを言っていないのに、なぜか胸のあたりが痛む。



「でも、橘さんに、凜が源君の家の家事を手伝ってるってきいたよ? 普通嫌いな男にそこまでやらないよね?」



「そ、それは。あいつの家、お父さんいなくてさ。働いてるおばさんに頼まれて仕方なく。」



「なるほどね。でも源君の幼馴染だなんて凜も不運だよね。豪太君が幼馴染だったらよかったとか思わない?」


「う、うん…」




普通だと、ここまでボロクソに言われたら怒るだろう。それこそ縁を切るくらいに。




だけど、今は申し訳なさが勝っている。俺という存在のせいで凜の時間をどれほど無駄にしたんろうか?毎日俺の世話を10年以上。凜のことだ。俺の幼馴染でさえなければ、勉強に空手それこそ恋愛も今よりうまくやっていたに違いない。

俺は凜に謝るこそすれ、怒る気には到底なれなかった。



「ごめんな。凜」



凜に、先に帰宅する旨、そして、これから一切の世話を受けずに自立する旨をメッセージで伝えて俺は家路を急いだ。

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