第6話 バレンタイン1


2月13日


明日はバレンタインというイベントらしいがどうせ本命チョコなど貰えない俺には余り関係ない。気になるといえば隣を歩いている凜が今年もチョコをくれるかどうかだ。

無論、安心安全の義理ではあるが。



「明日は バレンタインだね!」


「そうだな」


「彰人は誰かから貰う予定あるの?」



この俺を舐めてもらっては困るぞ 凜



「あるぞ」



「え?誰?!誰なの?」



食い気味に聞いてくる凜。そんなに気になるのか?まー確かに女っ気ほぼゼロの俺に、凛以外でチョコをくれる女の子がいたらどんな子か気になるか。俺も知りたい…



「母さんだろ、それと凜。 今年もくれるんだろ?義理チョコ」


「何期待してんの きもいよ?」


安心したような表情から一転しての罵倒。少し傷つくんだが。


「きもくねーし てかないん?」



「今年はないよ。義理チョコはね」



「そか…」



義理チョコでも貰えないと悲しいが、こればっかりは仕方ない… 母さんのチョコで妥協するか ん?その手提げかばんに入ってるのって。。


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「はい! 豪太君 これ義理だけどよかったら!」


「お?まじ?」


「お返しはいいからね!」


「いや流石に返すよ! ありがとう!」



楽しそうに話す凜と豪太を遠くから見る俺。なぜだろう物凄く豪太を殴りたい。



その後も凜は、クラスの俺を除く男子全員にチョコを渡していた。「今年はないよ」と言っていた時の凜がニヤニヤしていたので、ドッキリでやっぱりくれると期待していたが、放課後まで待っても凜からは何も貰えることはなかった。思わずため息が出る。

自分が思っている以上にショックだったようだ。



「はぁ 結局凜から貰えなかったのは、クラスで俺だけか。やっぱり嫌われてるんかな?」




誰もいない教室で一人呟く。虚しい…




「帰るか…」



教室にいても惨めなだけなので、家路を急ごうと自分の靴箱を開けると、何かが入っていた。



「ん?なんだ?」



取りあえず開けてみると、入っていたのはチョコだった。キチンと梱包され汚れないようにか袋に入れられていた。入れ間違いかと思ったが、箱に『彰人へ』と書かかれていたのでその可能性は消えた。間違いなく俺に向けてのものだろう。



「よっしゃ!」



思わずガッツポーズがでる。男という生き物は、誰からであろうと女性からチョコを貰えるだけで喜べる単純な生き物だ。

俺はチョコを丁寧にカバンにしまい家路を急いだ。

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