第5話 日常

数学の小テスト開始5分前




「あ、消しゴム忘れた」


「珍しいな」


「昨日 勉強してたから」


「貸そうか?」




消しゴムは1個しかないが、どうせ数学は解けずに終わるので凜が持っていたほうが消しゴムも喜ぶだろう。




「い、いいよ 彰人の消しゴム汚いし 由美ちゃんから借りる」


「そうか」




そんなに汚くないと思うんだけどな




「諦めずに最後まで解いてよね」


「あぁ」




凜に言われるとやるしかないので必死に問題と格闘していると、つい消しゴムを落としてしまう。


取れそうで取れないので先生を呼ぼうとしたが凜が拾ってくれた。




「はい これ」


「あ、ありがとう」


「気をつけてよね? 彰人は本当にドジだよね」




笑いながら軽くいじめてくる凜。てか、さっき俺の消しゴム汚いからって言ってたのもう忘れたのか?




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「ねぇ橘さん 藤原さんと彰人何か進展あった?」




今、私に話しかけてきたのは、同じクラスの平豪太君。保健室のあとで凜に、彰人君から告白させるにはどうしたらいいか相談をうけたので、彼の友達の平君にも協力してもらっているっていう訳。




「進展ではないけど 面白い話ならあったわよ」


「どんな?」




「この前の英語の授業、学校の都合で1日オンライン授業だったのは覚えているかしら?」


「あぁ 確かboomとかいうアプリ使ってたな それで?」




「boomでは画面を任意の人の画面に固定できる つまり好きな人の顔を全画面で見れるの」


「俺もやったわ それから?」




「凜をからかおうと思って、画面を固定したら、固定された人つまり彰人君に「藤原凜があなたの画面を固定しています」っていう通知が行くよって冗談をいったの」


「お前 えげつないな」




「凜ったら凄く慌てだして スクショは?スクショは大丈夫だよね??って泣きながら聞いてきたの…勿論通知がいくと答えたわ」


「藤原さんも可哀想に でもすぐネタバラシしたんだろ?」




「2時間後にね さすがの凜も凄く怒ってたけど、ラーメンで手を打ってくれたわ」


「藤原さんチョロいな 彰人もこれくらいチョロければな」


「本当にそうだわ」




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現在の凜は物凄く不機嫌だ。原因はどうやら俺らしい。心当たりはない。




「なぁ 何怒ってるんだよ」


「別におこってなんかないし!」


「彰人が女の子と話してたって私には関係ないし…」




徐々にトーンダウンする凜 その女子とはグループワークについて話ていただけなのに何を怒っているんだろうか? 




「だから! それは…」


「あーもう うるさい! 私の半径10m以内に近づかないで!」




弁明しようとしたとき凜に言葉を遮られる。




「わかった」




反論しても焼け石に水なので、凜の言う通りに、凜から半径10m離れるように後ろを歩いていたのだが その2分後




「ねぇ? 遠くない?」


「ん? 半径10mってこんなもんだろ?」


「あ!半径!」




凜の顔からだいたい察したが、どうやら直径10mと言うつもりが、半径10mと言い間違えたらしい。それは結構大きな差だぞ (直径10m=半径5mなので5mも違う)




「ば、ばか! 笑うな!」


「ご、ごめん! つい プッ」


「彰人のバカ!」





凜の間違えのおかげで、雰囲気も良くなり、無事凜を納得させることできた。

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