第3話 幼馴染を看病1
6日間の出席停止がようやく解除され久しぶりに学校へと向かう。正直もう少し休んでいたかったが、母親に邪険にされ、凜に、これ以上迷惑をかけるわけには、いかないので仕方ない。
重い足取りでなんとか歩き正門を通ったところで誰かに声をかけられる。
「よう彰人!インフルもういいのか?」
「あぁ 医者からOKでたし」
この黒髪短髪のいかにもスポーツやってますという感じの男は友人で、名前は平豪太。
バスケ部でキャプテンやっててそこそこ良いところまでいったらしい。因みに彼は京都出身で彼の言葉を意訳すると「インフルうつしたら、しばくぞ」らしい。知らんけど。
「そだ、藤原さん お前がいない間の授業つまらなそうだったぞ」
「授業はもともとつまらんだろ 英語以外」
「それもそうか」
教室についたので日直だという豪太と別れ、HRが始まるまで自分の席でスマホをいじっていたが、机の下で周りから見えないのをいいことに、隣の席の凜が俺の足を踏んでくる。痛い。やめてくれ。
「何? 藤原さん」
軽くこちらを睨む凜
壁をつくるみたいで心苦しいが、二人きり以外は、凜のことを藤原さんと呼ぶことを徹底しているし、凜にも俺を彰人ではなく源君と呼ぶようお願いしている。
前に一度、凜と呼んでしまい、空手部の先輩たちに詰められたからだ。最初は渋ってた凜も、俺の生命の危機だからと力説すると渋々応じてくれた。
「久しぶり もう大丈夫?」
「あぁ はい。」
「そ。 ならいいけど」
「席につけよ~」
HRが始まったので会話を切り上げる。心なしか凜にいつもの元気がないように感じた。
~
4時間目体育の授業
豪太と卓球をしていると何やらクラスメイトが騒ぎ始めた。何事かと思い聞き耳をたてる。
「おい 聞いたか 藤原さん倒れたらしいぞ」
「え?まじかよ それで?」
「保健室に運ばれたらしい」
体育館でバトミントンをしている凜が倒れたとの知らせを聞いた俺は制止する先生の声も聞かずに保健室へと飛び出していた。
「大丈夫か凜!」
下の名前で呼んでしまったが、そんなこと言っている場合ではないだろう。
「うん。あk…源君 風邪みたいだけど大丈夫」
「よかった」
俺のインフルエンザがうつっていたという最悪の事態は免れたようなので、安堵していると保健室の先生が話しかけてくる。
「あなたが源彰人君?」
「はい そうですが」
「実は、藤原さんのお母さんに電話したら、今夜はどうしても帰れないから彰人君に藤原さんを看病してほしいということなんだけど どう?」
「え、俺がですか?」
いくら家が隣の幼馴染といっても男の俺より他に適任がいると思うが。。
そこで俺への敵意を隠しきれていない凜の友達の橘さんとか。
「藤原さんは源君がいいといってたけど」
「なら…わかりました。」
そこまで言われて看病しないのは男じゃないだろう。凜には、前に、看病してもらった恩返しもしたい。
「じゃあよろしくね。 2人とも早退にしとくから」
タクシーまで凜を負ぶろうと、保健室を出ようとしたとき橘さんから呼び止められる。
「ねぇ源君と凜って何かあるの?」
下の名前で呼んだ手前隠し通すのは厳しいか。
「俺と凜は幼馴染だけど、それだけだよ」
「本当に?そうは見えなかったけど」
「あぁ 単に幼馴染ってだけだし、お互いそれ以上の関係になるつもりもないし、なれないよ。」
凜が震えている。寒いんだろうか?早く看病しないと。
「ごめん 急がなきゃ」
橘さんから俺と凜の関係性を聞かれたので、幼馴染だけどそれ以上の関係ではなく、なる気もお互いないことを強調して説明しておいた。橘さんも一応納得してくれたようだし凜の名誉は守られたと思う。
「引き止めてごめんなさい。 お大事にね凜」
いつも以上に元気がない凜を背に、俺は家路を急いだ。
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