ふぉーりんだうん

泥飛行機

.

 檻を揺するのはだあれ

 なあんにも はいっていないよ

 巨人はつぶやく うそかほんとか


 何がわかる 巨人とわたしは別の人

 巨人は二つの目をふさいで

 魚に 白い魚になって 海に流れた

 わたしは檻にいた

 いつの間にか いつのまにか

 なあんでも みているよ

 巨人は二つの手をひらいて

 鳥に 白い鳥になって 空に昇った



 ◇



 朝の地平線が僕で

 カンパニュラの花が君なら

 君の祈りで降る雨を

 僕は傘をさして聴く


 君が踏まれて折れた日

 ずっと泣き止んでいる空

 優しかった水は

 どうして涸れてしまったの


 僕が地平線で

 君が花なら

 君が種を蒔いてくれ

 僕は折れた傘をさして

 空に少し祈ってみる



 ◇



 ある月曜日に目覚めた時

 指が六本になっていた

 中指と薬指の間でよく伸びるんだ

 スラムの街角

 白くて小奇麗な奴らが来て

 新聞の下敷きの俺の項にヤクを打った


 突然変異

 超増殖する細胞の言うとおり

 俺は巨人になって

 大人と子供を貫いて黒い塊を撃ち落とす

 メルティング・ナーヴ/ロスティング・ハート

 ベンチに寝転んで夢を見てるだけさ まだ……


 羽ばたいてく

 蝶のように/蛾のように

 好物もやりたかった事も忘れて

 俺は変わる

 今はこんなにも小さくって

 だけどきっと何時までも

 エンジェルを待ってる


 翼をくれ

 翼を寄越せ

 翼を……



 ◇



 何処までも続く青空は、飛行機の群れが舞う

 あなたの涙も血液も、もうすぐ雨になって降る


 軋む喪失

 鉄の肉体

 心はまだ、動いています


 折れた片翼の影はまだ、私の背中に残っていますか?

 その翼で誰かを助けることができますか?


 眩しくて遠い朝は、兵器のラッパが鳴る

 明日、撃墜される飛行機になっても

 私はあなたを抱えて飛ぼう



 ◇



 白い靴で舞い上がって

 あの娘は私より高く翔けるけど

 彼女もバレリーナにはなれない


 廻り続ける満ち欠けの

 ヴァイオリンが告げる終わり

 月が醜く溶けだすくらいに

 踊りたいと思った


 黄昏に燃え上がる少女

 天を掴みかけた手のひら

 墜ちた彼女は地上の星になるのでしょう



 ◇



 秘密の地図を持っていたのはいつだって誰かで

「選べるわけない」ってべそをかく

 あたしは引かれた手も上手に握れない子供

 逃げるの? 犠牲になるの?


 いい加減少し大人になって分かった

 本当は選択肢なんか無かったことを

 どのみちあの子もあいつもあんた達も

 怪獣に食われて終わるんだ


 戦う振りをしろ

 自分を愛して往くために

 あたしは単機

 敵共は正面だ

 死に場は空

 生き場も空

 選んで撃ってみろ



 ◇



 ふたつの地球をそうぞうして

 ヨーヨーのようにりょうてに浮かべた

 とうめいできれいな水のたま

 いっしょにとぼうよ うさぎのように

 お月さまめがけて ほら

 ぼくがそこまで送ってあげよう


 みんなこんなにちっぽけな

 宇宙のかすかなクレーター

 地球なんて

 さおさせば ほら

 お団子みたいだろう

 なやみごと ことばのおばけ

 跳ねたからだひろげて

 ふわふわしたら


 ぼくは重力をつらぬき

 宇宙をわたる

 夜にとんっとちゃくちして

 しろくろのうみ かぐやひめのぼく

 いっしょにとぼうよ うさぎのように

 地球が跳ねてって

 お月さまは おいかけてる



 ◇



 時計が止まった

 魚の群れを見ていた

 二つの目玉の黒い穴達は右から左へ

 水の中

 止まれ 止まれ

 泡の中

 鎮魂の言葉達と共に

 時計は止まった

 夢を見る夢を

 悪い夢と呼んだ

 俺達は

 泡のように死にたがり

 俺達は

 群れの中

 一匹で水面を突き破りたがる

 俺達は

 腐るほど無意味で

 お前らの思い通りには

 絶対にならない



 ◇



 人形

 壊れた腕をぶら下げては

 死体の山に立ち尽くす

 先に行ってしまった彼らに

 おやすみと言った


 私が魚のうろこになるとき

 散らばった鉄屑を組み立てて

 飛行機を作ってください


 神様が降り立ち

 世界を虹で染めたころ

 永遠の意味を教えてください

 そう尋ねた

 神様は何か言った


 あなたが飛び立つ鳥になるとき

 まだ私を見てくれるのなら

 ここにおいで

 少し一緒に眠っていませんか



 ◇



 あなたの目が世界で一番青くて

 何よりも綺麗だったから

 その手を掴みたくなったんだ

 わたしはちゃんと

 あなたの友達でいられたよね


 水彩に溶けこむ

 二人、空が大好きなこと

 小さな約束を唄った

 風を叩いた

 さびしくなって雨を降らせた

 手のひらのひとしずくも

 虹の花が咲けば笑えるからって

 雷に手を振った

 日影に燃え上がる

 見下ろしては

 そこに還った


 あなたの名前

 祈りは地平線

 その手を掴みたくて掴めなくて

 透き通るドームで包み込んだ

 やわらかで温いユートピア

 あの日わたしたちは

 飛びたかったんだ



 ◇



 雪が降っているよ ひらひらと

 誰かが教える 今は二月さ

 寒くないよ 寒くないよ

 静かに 静かにしていなくちゃ


 天井に穴があいている

 植物みたいなおひさまの色

 あなたがいたこと いなかったこと

 一人で 一人 ここにいたよ


 雪が降っているよ ひらひらと

 誰かが教える 今は二月さ


 今は二月さ

 本当で 本当の

 呼んでいたよ

 呼んでいるよ

 ひらひらと ひらひらと


















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