最初からはずれのあなたに

Asano Mezame

第1話

 朝目覚めたとき、あなたはどこにいますか?

 朝目覚めたとき、あなたは何をしようと考えますか?

 朝目覚めたとき、あなたは何を期待しますか?


 きっといつも通りの朝を迎える。それは昨日の夜から分かっている。でも、何か違うことが起きないか。どこか期待して眠る自分がいる。



 自分には何かできることがある。そう考えてどれくらい経つ?青年期の課題をクリアできないまま大きくなってしまった。

でも、みんなそうなんでしょ?変わらない毎日の前に、消えないもやが積み重なっていっている。

 もしかしたら基本的愛着も自己の確立も置いてきたかもしれない。

でも、みんなそうなんでしょ?目の前の関係に満たせるものを探している。

 こう言うと特殊な人に感じるかもしれない。でも、実は大体の人はそうなんだよ。それに気づかないだけで。



 

 物心ついた時から狭い世界で生きている。登場する人が、みんな同じ思想に彩られている。そう思いつつも、抜け出したくないこの心地よさは何だろう。



 そうして私は大きくなった。


 今日もあの子の話す愚痴に寄り添っている。

「○○がかっこいい。」「あいつはうざい。」「あの先生は話を聞いてくれない。」

 「わかる。」っていうたびに、自分が薄れていく気がする。

 私はその子好きだよ。って言えたらちょっとは楽になるのかな?擦り減らないで済むのかな?

 家に帰れば、重い期待が私を少しずつ私を押しつぶす。

  学生もたいへんなんだよ。



 しばらくして、私は爆ぜた。

 


 そして、別の世界に居座るようになった。

 同じように課題をスルーした人たち、同じように擦り減った人たちが集まっていた。途端に、今までのみんなが子どもに見えた。

「どうして、みんな同じように進んでいるの?」そのとき、私の頭は冴えてように思えた。



 そうして、私は、彼に出会った。


 私の話を何でも受け止めてくれた。新しいものをたくさん教えてくれた。置いて来たものを上書きできるような気がした。

 今までの自分の冷たい価値観を上書きしてくれた。自分がディズニーのヒロインになったみたいだった。だから、私も彼をヒーローにしてあげた。


 いろんな人が、「それは、おかしい」と言ってきた。「すぐ離れなさい。」とも言ってきた。私は「彼をよく知らないのに...。」と思ってた。

  だから、私はそんな人たちを振り切った。



 そして、二人の世界になった。

 気づいたら、知らなかったタバコを覚えた。ゲームもするようになった。

 彼は、これからの話もしてくれた。まったりと過ごす日々に、たまに訪れるファンタジーがとても気持ち良かった。



 だんだん喧嘩が増えていった。理由はわからない。私は変わってないのに。

 どうして離れていくんだろう?教えてくれる人はとうの昔にいなくなっていた。



 戻ろうと思った時、元いた場所は大きく変わっていた。 

そして、気づいた。

「私は社会からはずれていた。」



 食べるためのバイトをしながら、少しずつ周りが見えてきた。

 みんな卒業していること。みんな社会人になっていること。インスタには結婚報告だってある。

 「仕事が大変。」「一年目から残業ばっかり。」ってつぶやいてる。

知ってる?それってあたりの人生なんだよ。

 朝の地下鉄には、やんちゃな子たちが「眠い。」と言いながら学校に向かっている。

知ってる?それが、どんなにすごいことか。



 「何が正解か分からない。」っていう人がいる。確かにそうだと思う。でも、そういう人も「あたりだよ。」っては言ってくれない。それが答えなんでしょ?


 毎日って繰り返すもので、それがあたりかはずれかは自分が一番分かってる。

 「明日はいい日になっていますように。」ってみんな期待するでしょ?そんなあなたに私は言いたい。「あなたは、はずれじゃないよ。」

 

 



 




 

 


 

 

 

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