第9話 『  』と『  』

 大人になったリクを遠目に見て、察した。


「嘘つき……魔法使いだなんて、バカみたい」


 私は、今頃になって嘘だらけの魔法使いが――いや、あのリクが何故自分の前に現れたのかを理解した。


 あの時、彼が助けたかったのは『リク』じゃない。

 『私』だったんだ。


 きっと、あの時に見せられた事故の映像。

 あれも、本当に死ぬのはリクじゃなかった。

 だって、そうでなければ彼があんなことをする理由がわからない。


 人が一人、未来から過去へ行こうだなんて思うはずがない。


 でも。


「でも――」


 でも、と。

 成長し、あの嘘つきと全く同じ顔をしたリクを見つめる私の胸中に疑問が生まれる。


「――あなた……今、どこにいるの?」


 何かが『違う』と告げていた。


「あなたは……これで本当に救われた?」




 答えは返ってこない。

 例え、離れた場所で同級生と話すリクに訊いたとしても、答えは得られないだろう。


 なら、私は探さなきゃいけないと考えた。


 彼はもう、私が恋をしていた『リク』ではなかったとしても、

 私がもう、彼の救いたかった『マキ』ではなかったとしても、

 私達がもう、再開も許されず、互いに救われる筈がないとしても、


 それでも、彼に出会ってひとこと言わないといけない。

 今、この胸に抱く気持ちがなんなのかはわからないけれど。


 それでも、時を超えてまで私を想ってくれた彼が救われないのを許すことができないから。

 だから、私は――彼を探しに行かなきゃならない。

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